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連覇した阪神は本当に強かったのか?2026年全8ポジション・投手WAR・故障をデータで総決算【前編】

総合WAR
39.0
12球団2位・セ1位(NPB BASEMENT系列)
右翼 vs 遊撃
+60.6 / −41.3
同じ位置のセ6球団平均との差(当ラボ推定・得点相当)
防御率 / 投手WAR
セ1位 / セ3位
防御率2.79・投手WAR13.7
30 SEC REVIEW

30秒で分かる、2026阪神の戦力総決算

  1. 01
    連覇しても、勝ち方は前年と違った

    得点は496から518へ22増えた一方、失点は352から439へ87増え、得失点差は+144から+79に縮んだ。

  2. 02
    それでも総合では強い王者

    NPB BASEMENT系列の総合WARは12球団2位・セ1位。打撃の大きなプラスが、守備のマイナスを補っていた。

  3. 03
    全8ポジションに大きな凸凹

    右翼・三塁・中堅はセ1位、遊撃と左翼はセ6位。右翼と遊撃の差は101.9点相当(当ラボ推定)。

  4. 04
    近本不在でも平均得点は落ちなかった

    ただし中堅だけを切り出すと、9イニング当たりで近本と代役4人に約0.45点相当の差(当ラボ推定)があった。

  5. 05
    投手は「3本柱セ1位、その他セ5位」

    髙橋・才木・村上の投手WARはセ1位。3人以外の全投手はセ5位で、石井・湯浅の故障も救援の余力を削った。

この記事の数字について

この記事の数字は4種類に分かれます。勝敗・得点・本塁打・防御率などはNPB公式記録。WAR・wRC+・TZRなどはNPB BASEMENT系列の分析指標(2026年10月8日更新。NPB公式の指標ではありません)。近本光司の不在53試合の勝敗・得失点は、NPB公式の試合結果を当ラボが集計した数字です。そして「右翼+60.6」「遊撃−41.3」のような守備位置別の値と、中堅の9イニング当たりの値は当ラボ推定で、選手個人のWARでも、チームの実際の得失点差でもありません。故障の情報は、球団発表と日付入りの報道で確認できた範囲に限っています。

ストーブリーグの季節が来た。「来年は誰を獲る?」「DHは誰が打つ?」「佐藤輝明のメジャー挑戦で打線はどう変わる?」──阪神ファンなら、頭の中でスタメンを何度も組み直しているかもしれない。補強と打順を考えるのは、自分がGMになったような、野球のシミュレーションゲームに近い楽しさがある。

ただし、現実の球団にリセットボタンはない。来季の作戦を考えるなら、まず2026年の戦力を正しく知っておきたい。どこが強かったのか。何が意外な弱点だったのか。そして、なぜこのチームは連覇できたのか。

2026年の日本一はソフトバンク。日本シリーズでDeNAに4連勝した。阪神はセ・リーグ連覇を達成した一方、クライマックスシリーズ・ファイナルステージではDeNAに4連敗し、日本シリーズ進出を逃した。最後の4試合は悔しかった。それでも、143試合で積み上げた優勝の価値まで消えるわけではない。

今回は前編。打撃・守備・走塁・投球、全8守備位置、主力の稼働、CSを数字で振り返る。次回の後編では、この診断結果を使って2027年のストーブリーグ戦略を考える。

01連覇しても「前年と同じ勝ち方」ではなかった

まず公式成績を比べよう。2025年は85勝54敗4分、496得点、352失点で、得失点差は+144。2026年は79勝62敗2分、518得点、439失点で、得失点差は+79。

阪神の2025年と2026年(NPB公式・レギュラーシーズン)
項目2025年2026年差
勝敗85勝54敗4分79勝62敗2分6勝減
勝率.612.560−.052
得点496518+22
失点352439+87
得失点差+144+79−65
チーム本塁打93125+32
チーム盗塁10075−25
防御率2.212.79+0.58(数字が大きいほど悪化)
奪三振10171182+165
被本塁打53107+54

※両年とも143試合。失点と自責点は別で、2026年の439は失点、防御率2.79は自責点を基準に計算した値。

得点は22増えた。打線は確かに強くなった。その一方で、失点は87増え、得失点差は65縮小した。ここを「力が落ちた」とだけ読むのは早い。2026年も79勝でリーグ優勝している。変わったのは、強さの中身だ。

セ・リーグ6球団の平均と比べると

阪神自身を含むセ・リーグ6球団の平均と比べると、変化がはっきりする。得点で平均を上回った幅は、2025年+36.7点、2026年+31.5点。失点を平均より少なく抑えた幅は、2025年+113.5点から2026年+57.2点へ縮んだ。

得点力のリーグに対する優位は維持した。一方、失点を防ぐ面での圧倒的な差は縮まった。2025年は投手力と失点抑止が際立つ王者。2026年は強力打線の存在感がさらに増した王者。連覇の文字は同じでも、チームの顔つきは違っていた。

さらに深掘り:「セ6球団平均との差」はどう計算しているか

阪神を含む6球団の平均と比べる

比較の相手は「阪神を除いた他5球団の平均」ではなく、阪神を含むセ・リーグ6球団全体の1球団あたり平均だ。2026年の公式記録は次のとおり。

2026年セ・リーグ6球団の得点・失点(NPB公式)
球団勝敗得点失点得失点差
阪神79勝62敗2分518439+79
巨人76勝64敗3分486444+42
DeNA71勝69敗3分557512+45
広島61勝78敗4分431520−89
ヤクルト61勝80敗2分449568−119
中日60勝81敗2分478494−16

6球団の平均は得点486.5、失点496.2。阪神の得点518は平均より31.5多く、失点439は平均より57.2少ない。2025年の6球団平均は得点459.3、失点465.5で、阪神は得点で+36.7、失点で+113.5の優位だった。リーグ順位と得失点差の順位は一致しない(DeNAは得失点差で巨人を上回るが、順位は巨人が上)。

02総合WARは12球団2位。弱い王者ではない

総合WARは、選手が平均的な代替選手よりどれほど勝利に貢献したかを推定する指標だ。2026年の阪神の総合WARは39.0。分析に用いたNPB BASEMENT系列では12球団2位、セ・リーグ1位だった。

内訳は打撃WAR27.1、守備WAR−1.7、走塁WAR0.0、投手WAR13.7。小数表示の丸めにより、内訳の単純和と総合値は0.1ほど一致しない。

2026年の12球団総合WAR(NPB BASEMENT系列・参考順位)
順位球団総合WAR
1ソフトバンク51.9
2阪神39.0
3日本ハム38.3
4DeNA35.3
5西武34.0
6巨人33.1
7中日27.9
8広島20.4
9ロッテ19.8
10ヤクルト19.7
11楽天17.7
12オリックス13.9

※記事内で用いたWAR系列の順位で、NPB公式の順位ではない。セ・パ間にはDHや環境の差があり、細かな差の優劣は断定しない。値の算出方法は記事末の注記を参照。

この数字が物語るのは「弱点を抱えていたから弱い」という話ではない。大きなプラスを生む分野があり、他の分野の不足を補ってなお優勝できるだけの戦力を持っていた、ということだ。

そこで気になる。これほど総合力が高いのに、どのポジションに最大の強みがあり、どこに最大の穴があったのだろうか。

03佐藤39本、森下35本。74本塁打の二枚看板

2026年の阪神打線で、まず目を奪われるのが佐藤輝明と森下翔太だ。佐藤は39本塁打、森下は35本塁打。2人で合計74本。阪神のチーム125本塁打の59.2%を占めた。

数字の凄さは本塁打数だけではない。球場環境などを考慮した打撃指標wRC+は、佐藤205、森下196。リーグ平均を100とする指標だから、佐藤は平均の2倍以上、森下もほぼ2倍の打撃生産力を示した。

さらに佐藤は2026年、打率.306、39本塁打、106打点でセ・リーグの打撃三冠を獲得した(NPB公式個人成績)。リーグを代表する打者が2人並ぶ。その破壊力が、2026年阪神の大きな武器だった。

04主力5人の打撃WARが、チーム全体を上回る

ここからが一つ目の意外な発見だ。佐藤、森下、大山悠輔、近本光司、中野拓夢。この5人の2026年の打撃WARは合計28.7。一方、野手全体の打撃WAR合計は27.1だった。

「5人だけで全体を超えている」とはどういうことか。計算ミスではない。残る野手たちの打撃WARを合計すると−1.6になる。主力の大きなプラスが、その他の野手のマイナスを埋めていたのだ。

これは2026年に突然生まれた現象ではない。同じ5人と、それ以外の野手を過去3年で比べると、次の変化がある。

図1 | 主力5人とそれ以外の野手、打撃WARの推移(2024〜2026年)
30 25 20 15 10 5 0 -5 +16.3 +2.7 +24.9 +0.7 +28.7 −1.6 2024年 2025年 2026年 全野手 +19.0 全野手 +25.6 全野手 +27.1
主力5人 5人以外の野手

※単位はWAR(勝利相当)。主力5人は佐藤・森下・大山・近本・中野で、3年とも同じ5人。NPB BASEMENT系列(2026年は10月8日更新)。0の線より下はマイナス。

主力の貢献が年々高まる一方、それ以外の打撃貢献は低下してきた。この構図は「主力が悪い」という話ではない。むしろ主力がとてつもなく優秀だからこそ、控えや新戦力の底上げが重要になる。

05全8ポジションを比べると、大きな落差

打線全体の話だけでは、弱点のありかは分からない。そこで捕手、一塁、二塁、三塁、遊撃、左翼、中堅、右翼の8守備位置を、同じポジションのセ・リーグ6球団平均と比べた。

ここで使う「+60.6」「−41.3」は、各守備位置の打撃貢献と守備貢献を合わせ、阪神を含むセ6球団全体の同じ位置の平均からどれだけ上・下にいたかを示す当ラボ推定の得点相当値だ。選手個人のWARでも、チームの実際の得失点差でもない。

DETAIL DATA全8守備位置、同じ位置のセ6球団平均との差
守備位置攻守合計(得点相当)セ順位読みどころ
右翼+60.61位中心は森下。打撃に加え、右翼全体の守備TZRも+8.7
三塁+32.61位中心は佐藤。守備のマイナスを打撃が逆転
中堅+17.01位中心は近本。代役期間との差は後述
一塁+13.42位中心は大山。守備TZR−3.0を打撃が上回る
捕手−3.84位守備TZR+4.9はセ1位、打撃配分推定は−20.5
二塁−8.95位守備TZRが前年+6.0から−10.2へ
左翼−20.46位主な不足は打撃
遊撃−41.36位打撃・守備の両方がマイナス

当ラボ推定。各守備位置の打撃貢献(選手の年間打撃貢献を守備イニングで配分)と守備TZRを合わせ、阪神を含むセ6球団の同じ位置の平均との差を得点相当で示した値。選手個人のWARでも、チームの実際の得失点差でもない。

図2 | 全8守備位置、セ6球団平均との差(当ラボ推定)
60 40 20 0 -20 -40 +60.6 +32.6 +17.0 +13.4 −3.8 −8.9 −20.4 −41.3 右翼 三塁 中堅 一塁 捕手 二塁 左翼 遊撃 セ1位 セ1位 セ1位 セ2位 セ4位 セ5位 セ6位 セ6位
セ平均より上 セ平均より下

※当ラボ推定。単位は得点相当(WARではない)。阪神を含むセ6球団の同じ守備位置の平均との差で、打撃は選手の年間打撃貢献を守備イニングで配分した値、守備はTZR(NPB BASEMENT系列)。一塁は配分の方法によっては1位になる感度ケースもある。

最大の武器である右翼と、最大の弱点である遊撃。その差は101.9点相当にもなる。同じ優勝チームの中に、ここまで大きな落差が共存していた。この「凸凹」こそ、2026年阪神を理解する鍵だ。

06右翼は森下、三塁は佐藤。打撃力だけではない攻守の評価

右翼の+60.6という大きなプラスは、森下の打撃力が中心だ。ただしこの+60.6は森下ひとりのWARではなく、右翼というポジション全体の推定値で、守備も貢献していた。

右翼全体の守備TZRは+8.7、森下個人の右翼TZRは+5.1。TZRは、同じ守備位置の平均的な選手と比べて守備で何点分の価値を生んだかを評価した指標で、プラスほど良い。森下の35本塁打だけを見ていては、右翼の価値を見落とす。

一方、三塁の攻守合計は+32.6でセ1位。こちらは佐藤の打撃力が特に大きい。三塁全体の守備TZRは−4.9、佐藤個人は−6.2だったが、それを上回る打撃で大きなプラスを作った。

同じ「強いポジション」でも、右翼は攻守がそろって強く、三塁は圧倒的な打撃が守備のマイナスを逆転する。強みの作られ方も違う。

07近本が骨折で離れた53試合。打線の得点は落ちていなかった

近本は4月26日に死球で左手首を骨折し、7月11日に一軍復帰した。出場試合は2025年の140試合から、2026年は90試合に減った。

負傷で不在となった4月28日〜7月10日の53試合を、NPB公式の試合結果から集計した。チーム成績は26勝27敗、勝率.491。一方、近本が出場した90試合は53勝35敗2分、勝率.602だった。

近本光司の出場・不在とチーム成績(NPB公式の試合結果を当ラボ集計)
区分試合勝敗勝率得点失点平均得点平均失点
不在(4/28〜7/10)5326勝27敗.4911971693.723.19
 うちセ・リーグ球団3520勝15敗.5711461104.173.14
 うち交流戦186勝12敗.33351592.833.28
出場9053勝35敗2分.6023212703.573.00
合計14379勝62敗2分.5605184393.623.07

※勝率は引き分けを除いて計算。平均得点・平均失点は1試合あたり。内訳行の勝率と平均値は、表の試合数・勝敗・得失点から当ラボが計算した値。

では近本が抜けて、打線の得点も大きく減ったのか。実は逆だった。不在53試合は197得点で1試合平均3.72、出場90試合は321得点で1試合平均3.57。平均得点だけなら、近本がいなかった時期の方がわずかに多かった。

ただし、不在期間の53試合には苦戦した交流戦18試合(6勝12敗)が含まれる。交流戦以外の35試合は20勝15敗で勝ち越した。勝率差をそのまま「近本の不在で負けた試合数」と考えることはできない。

ではセンターの穴は埋まっていたのか。そこが次の論点だ。

08センターだけを切り出すと、近本と代役の差は大きい

近本が中堅を守った年間807回1/3の打撃・守備貢献は、合計+17.6点相当。一方、髙寺望夢、福島圭音、岡城快生、小野寺暖の4人が中堅を守った年間473回の合計は−13.1点相当だった。

CENTER FIELD

近本光司

4月26日に左手首を骨折、7月11日に一軍復帰。不在は53試合

3.72不在53試合の平均得点
3.57出場90試合の平均得点
約0.45中堅9回当たりの差(推定)

不在53試合は26勝27敗、出場90試合は53勝35敗2分。ただし平均得点は不在期間の方がわずかに多かった。一方、中堅の攻守を9イニング当たりにそろえると、近本は+0.20点相当、代役4人(髙寺・福島・岡城・小野寺)は−0.25点相当だった。

打線全体は周囲が踏ん張った。それでも中堅というポジションに限れば、代役は近本の攻守を埋めきれなかった。

勝敗・得点はNPB公式の試合結果を当ラボが集計。不在期間(4/28〜7/10)には交流戦18試合(6勝12敗)を含む。9回当たりの値は年間の中堅データからの当ラボ推定で、欠場試合で実際に失った点数ではない。

出場量をそろえた9イニング当たりでは、近本が+0.20点相当、代役4人は−0.25点相当。その差は約0.45点相当になる。

この数字は、選手の年間打撃貢献を中堅守備イニングへ配分し、守備TZRを加えた当ラボ推定だ。欠場した53試合で実際に失った点数を測った数字ではない。しかし、同じ仕事を同じ時間だけ任せたときの貢献の差を考えると、近本の存在がどれほど大きかったかが分かる。近本自身もwRC+137、総合WAR4.3を残している。

打線全体は周囲の選手が踏ん張った。それでも中堅というポジションに限れば、代役は近本の攻守を埋めきれなかった。故障の影響を考えるなら、この2つを分けて見る必要がある。

さらに深掘り:中堅の攻守配分の内訳(当ラボ推定)

守備イニングに応じて打撃を配分する

中堅を守った選手それぞれについて、年間の打撃貢献を中堅の守備イニングの割合で配分し、中堅での守備TZRを足した。単位はすべて得点相当。

2026年阪神の中堅、選手別の攻守配分(当ラボ推定)
選手中堅守備回打撃配分守備TZR合計9回当たり
近本光司807回1/3+13.50+4.10+17.60+0.20
髙寺望夢379回2/3−4.46−4.90−9.36—
福島圭音51回−0.54−0.70−1.24—
岡城快生32回−1.32−0.80−2.12—
小野寺暖10回1/3−0.56+0.20−0.36—
代役4人計473回−6.88−6.20−13.08−0.25

9回当たりの値は、近本と代役4人の合計についてだけ出している(守備回の少ない選手は1人ずつ割ると値がぶれやすいため)。これは年間の位置別配分の推定で、欠場53試合の各打席を1つずつ集計したものではない。

09遊撃−41.3の正体は「打撃も守備も弱い」こと

そして、もっとも大きな課題だったのが遊撃だ。セ6球団の同じ位置の平均と比べて、打撃−21.6点相当、守備−19.7点相当。合わせて−41.3点相当でセ6位だった。

2026年の遊撃TZRは−21.4。守備の評価だけでも大きなマイナスが残った。主に遊撃を守った元山飛優、熊谷敬宥、小幡竜平、木浪聖也の4人は、守備の数値がいずれもマイナスだった。

2026年だけの一過性の現象でもない。遊撃は3年連続で同位置のセ平均を下回っている。

重要なのは「誰か一人を入れ替えれば解決」という単純な話ではないことだ。複数の選手を起用しても、打撃も守備も十分なプラスを作れなかった。ここにはポジション全体の底上げが必要になる。

10遊撃と左翼は両方6位。しかし必要な改善策は違う

左翼もセ6位で、攻守合計−20.4点相当だった。ところが内訳を見ると、遊撃とは正反対に近い。

COMPARE同じセ6位でも、弱さの中身が違う
遊撃(セ6位)
−21.6打撃(点)
−19.7守備(点)
−41.3攻守計(点)
左翼(セ6位)
−17.9打撃(点)
−2.5守備(点)
−20.4攻守計(点)

結論遊撃は攻守の両面で平均を下回った。左翼は守備もわずかに平均以下だが、不足の大部分は打撃。同じ6位でも、必要な手当ては位置ごとに違う。

当ラボ推定。阪神を含むセ6球団の同じ守備位置の平均との差(得点相当)。

遊撃は攻守両面の課題。左翼は、守備もわずかに平均を下回ったが、最大の不足は打撃だ。

同じ「6位」という表面上の順位だけで、同じタイプの選手を補強しても最適にはならない。来年の編成で欲しい戦力は、位置ごとに違う。ここから先の具体的な補強・配置案は、後編でじっくり考える。

11二塁の守備はどう変わった? 捕手と一塁にも別の強さ

内野の守備TZRは、前年から大きく動いた。

  • 二塁:+6.0(2025年)→ −10.2(2026年)
  • 遊撃:−3.3(2025年)→ −21.4(2026年)
  • 三塁:+6.2(2025年)→ −4.9(2026年)

中野の二塁守備では、守備範囲の評価(RngR)が−10.6、失策を抑える評価は+1.9。エラーの多さよりも、打球に届く範囲で苦戦したという見方ができる。中野にはシーズン中に足を痛める場面もあったため(8月18日に守備中の着地で左足を痛めて途中交代したと報道)、コンディションが影響した可能性は考えられる。ただし、それだけが数値変化の原因だったと決めつける必要はない。

捕手の攻守総合はリーグ平均との差−3.8点相当で、セ4位。打撃の位置配分推定値は−20.5点相当だが、守備TZRは+4.9でセ1位だった。フレーミングも+12.9と評価されているが、これは別の指標なので、TZRと足すことはできない。打率だけでは見えない捕手の強みと、打撃の底上げという課題が同時にある。

一塁では大山が20本塁打、wRC+150。守備TZR−3.0を打撃力が上回り、一塁全体の攻守評価は+13.4でセ2位。ここもまた、プラスの作り方が違うポジションだった。

1275盗塁でも走塁WARは0.0。その理由は?

2026年の阪神は75盗塁を記録した。ただし、2025年の100盗塁からは25減っている。

盗塁・盗塁死による得点貢献を表すwSBはチーム+2.1点。盗塁以外の進塁、たとえば安打での進塁やタッチアップを評価するUBRは+4.2点だった。「どちらもプラスなのに、どうして走塁WARは0.0なのか?」

DECISION FLOW75盗塁でも、走塁WARが0.0になるまで
  1. 盗塁と盗塁死の損得(wSB)は、+2.1点相当75盗塁。前年の100盗塁からは25減。
  2. 盗塁以外の進塁(UBR)は、+4.2点相当安打での進塁やタッチアップなど。
  3. 選手別の走塁WARを分けると、プラス計+1.8・マイナス計−1.8中野+0.8、髙寺+0.3 / 森下−0.7、大山−0.6など。
  4. チーム全体の走塁WARは、0.0(勝利相当)表示値の上で、プラスとマイナスが相殺した。

75盗塁が無価値だったのではない。盗塁と進塁のプラスは確かにあり、チーム全体では選手ごとのプラスとマイナスが相殺した。

wSB・UBRは得点相当、WARは勝利相当で単位が違う。併殺回避の評価(DPAR)の単独値は取り出していないため、wSB+UBRから走塁WARを逆算することはできない。選手別の値は小数第1位の表示値。

まず単位が違う。wSBとUBRは得点相当、WARは勝利相当の評価だ。走塁の総合評価では、併殺回避などの項目も考慮される。

選手別の走塁WAR(表示値)を集計すると、プラス側の選手が合計+1.8、マイナス側が−1.8で、チーム合計は0.0だった。中野+0.8、髙寺+0.3、佐藤+0.2、福島+0.2などのプラスがある一方、森下−0.7、大山−0.6、坂本誠志郎−0.2、梅野隆太郎−0.2などのマイナスもある。

つまり、75盗塁が無価値だったのではない。盗塁・進塁でのプラスは確かにありながら、チーム全体ではプラスとマイナスが相殺する総合評価になったということだ。なお、この元データでは併殺回避の得点成分(DPAR)の単独値を取り出していない。wSB+UBRから0.0 WARを直接逆算することはできない。

13防御率セ1位なのに、投手WARはセ3位

投手陣も、見た目以上に興味深い構造だった。2026年の阪神の防御率は2.79で、セ・リーグ1位。一方、投手WARは13.7でセ3位だった。

防御率は、自責点をどれほど抑えたかという実際の結果。投手WARは、投球内容などから推定した勝利貢献。異なる物差しなので、順位が一致しないこと自体は不思議ではない。

チームの奪三振は前年の1017から1182へ165増えた。一方、被本塁打は53から107へ54増えた。奪三振率から与四球率を引いたK−BB%は16.28%(動画での表示値)。三振を奪う能力は高まった。だが長打で失点する危険も増えていた。投手陣を「全員が一様に強い」と見るだけでは、この違いは分からない。

143本柱はセ1位、その他の投手はセ5位という衝撃

髙橋遥人、才木浩人、村上頌樹。2026年はこの3人がチームの先発登板数の上位3人を占めた。主観で「エース」を選んだのではなく、先発登板数で選んだ3人だ。

先発上位3人とその他の投手(投手WARはNPB BASEMENT系列)
区分先発数投手WAR
髙橋遥人234.3
才木浩人253.2
村上頌樹272.0
3人合計759.5(セ1位)
3人以外の全投手68(救援を含む)4.2(セ5位)
チーム全体14313.7(セ3位)

※セ6球団それぞれの「先発登板数上位3人」の投手WAR合計で比べた順位。「3人以外」は先発68試合分を含む全投手(救援を含む)。先発数はNPB公式。

3人の計75先発、投手WAR合計は9.5。セ6球団の「先発登板数上位3人」を同じ方法で集計すると、阪神が1位だった。だが、3人以外の全投手を合計すると投手WARは4.2。こちらはセ5位だった。投手WAR全体13.7でセ3位という評価には、「圧倒的な3本柱」と「その他の戦力との落差」が同居している。

図3 | 先発3本柱とそれ以外の投手、投手WARの変化(2025→2026年)
12 9 6 3 0 7.1 11.0 9.5 4.2 2025年 2026年 投手全体 18.1 投手全体 13.7(セ3位)
先発3本柱 3人以外の全投手

※単位はWAR(勝利相当)。3本柱は2026年の先発登板数上位3人(髙橋・才木・村上)で、2025年も同じ3人の合計。NPB BASEMENT系列(2026年は10月8日更新)。2026年の順位はセ6球団の同じ集計での順位。

2025年と比べると、髙橋・才木・村上の3人は7.1から9.5へ貢献を伸ばした一方、その他の投手は11.0から4.2になった。ただし、その他の投手の低下をすべて故障で失った分とみなすことはできない。

残り68先発の現実

143先発の内訳は、3本柱が75先発、大竹耕太郎・伊藤将司・西勇輝の3人が39先発、その他の投手が29先発。大竹ら3人の年間投手WARは合計1.3だった。

エースが3人いても、143試合を3人だけでは戦えない。残り68先発と救援陣がどれほど働けるか。そこが翌年も勝つための大きなテーマになる。

15石井・湯浅の故障が、救援陣の余力を削った

2026年の阪神を語るうえで、故障の問題は避けて通れない。

石井大智は2月に左アキレス腱を断裂し、手術を受けた(球団発表)。一軍に合流したのは9月5日(報道)。登板数は2025年の53から、2026年は12に減った。湯浅京己も6月11日に登板中に右足首を痛め、8月8日に一軍復帰(報道)。登板数は40から25になった。

救援専任(その年に先発登板がない投手)のWARを合計すると2.0で、セ4位。工藤泰成の2.1、ドリスの1.1という大きなプラスがあった一方、救援専任の他の投手を合わせると−1.2だった。

救援の2人が優秀だったからといって、ブルペン全体に余裕があったとは限らない。石井や湯浅を計算しづらい期間が長く、使える選択肢は限られた。

143試合出場は「143試合万全」ではない

2025年は近本が140試合、石井が53登板、湯浅が40登板していた。2026年は3人の稼働が大きく減った。一方、中野・森下・佐藤は公式戦全143試合に出場したが、報道で確認できるだけでも次のような場面があった。

  • 中野拓夢:4月28日に自打球で途中交代、8月18日に守備中の着地で左足を痛めて途中交代。
  • 森下翔太:4月28日に自打球で途中交代、6月5日と8月29日に死球で途中交代、7月28日の球宴でコンディション不良により途中交代。
  • 伏見寅威:6月22日に腰部のコンディション不良で登録抹消、7月14日に復帰。

143試合出場は、143試合すべてが万全だったという意味ではない。ただし、公表されていない診断名や、故障で能力がどれだけ下がったかは推定しない。

169月の失速、CSの4連敗。年間分析とどうつながるか

9月の7連敗(9月5日〜15日)は合計5得点・22失点。その後の7試合(9月17日〜23日)は6勝1敗・38得点・22失点となった。失点が同じでも、打線がつながるかどうかで試合の景色が変わる。

そしてCSファイナル。阪神はDeNAに0−2、0−1、0−4、5−8で4連敗した。

FLOWCSファイナル4試合と、佐藤・森下
  1. 10/14 第1戦
    阪神得点0(0−2)

    佐藤・森下とも先発。主砲2人がいた初戦から無得点。佐藤は9回の守備から交代した。

  2. 10/15 第2戦
    阪神得点0(0−1)

    佐藤は出場なし(報道ではベンチ外)。森下は先発したが、走塁中に右太もも裏を押さえて途中交代。

  3. 10/16 第3戦
    阪神得点0(0−4)

    佐藤は出場なし、森下は代打のみ。2人とも先発から外れた。前川右京が死球で左手小指を骨折。

  4. 10/17 第4戦
    阪神得点5(5−8)

    2人が先発に戻り、森下は2本塁打。5点を奪ったが、逆転されて敗れた。

読みどころ4試合で阪神5得点、DeNA15得点。最初の3試合は27イニング連続無得点だった。

スコアは阪神から見た表記。第1戦は2人とも先発して0点だったため、4連敗の理由を主砲の欠場だけに限定しない。故障の診断名が公表されていないものは推定しない。

最初の3試合は27イニング連続無得点。ただし「佐藤と森下が欠場したから、初戦から打てなかった」という説明は違う。第1戦は2人とも先発しており、その時点で0点に抑え込まれていた。

第2戦では佐藤が出場せず、森下も途中で交代。藤川球児監督は、森下にシーズン中から全力疾走しづらい時期があったと話している(報道)。第3戦は2人とも先発出場できなかった。年間74本塁打の中心打者が同時にいない状態は、長打で流れを変える選択肢を大きく減らした。第4戦に2人が先発復帰し、森下は2本塁打。阪神は5得点を挙げたが、最後に逆転されて5−8で敗れた。

この4試合だけで年間の戦力評価を塗り替える必要はない。DeNAの投手陣に抑え込まれたこと、主力野手の負傷、救援の運用負荷という複数の条件が重なったと考えるのが自然だ。

CSは「年間の強みが偽物だった」証拠ではなく、その強みを十分に使えないとき、何が残るのかを見せた短期決戦だった。

17結論|2026年の阪神は「強みが際立つ王者」だった

2026年の阪神は79勝でリーグ連覇。総合WARはセ1位、12球団でも2位だった。

右翼+60.6、三塁+32.6、中堅+17.0(いずれも当ラボ推定)。野手では打撃の圧倒的な核があり、投手では髙橋・才木・村上の3本柱がリーグ最上位だった。同時に、遊撃−41.3、左翼−20.4という明確な課題、3本柱以外の投手との落差、主力への貢献の集中、故障で薄くなる選手層も見えた。

だから結論は「弱点があるから連覇は偶然だった」ではない。むしろ逆だ。これほど大きな課題を抱えながら、勝ち切れるだけの武器があった。それが2026年阪神の強さだった。

さて、ここまでが今年の答え合わせ。ここから先は、ファンにとって待ち遠しいストーブリーグの作戦会議だ。佐藤のメジャー挑戦(10月21日に球団がポスティングでの挑戦を容認すると発表)、2027年から始まるセ・リーグのDH制、遊撃と左翼の改善、先発・救援の厚み。どの戦力を守り、どこに新しい一手を打つのか。それは後編「2027年阪神ストーブリーグ戦略会議」で考える。

頭の中で組んだスタメンを、もう一度書き換える準備はできている。

18評価の限界

あえて逆から見ると

「失点が増えたのだから、2026年の阪神は力不足だった」── 違う。総合WARは12球団2位・セ1位で、79勝でリーグを連覇している。総合では強く、守備位置の間で大きな差があった、というのが正確な見方。

「右翼+60.6は森下のWAR」── 違う。右翼というポジション全体の当ラボ推定(得点相当)で、中心が森下。比べている相手も、阪神を含むセ6球団全体の同じ位置の平均。

「遊撃の弱さがCSの4連敗を招いた」── 根拠はない。遊撃は年間の大きな課題だが、CSは打線の停滞、負傷、救援運用も含めて考える必要がある。

「近本の欠場で、打線の得点力は下がった」── 不在期間の平均得点は、出場試合をわずかに上回った。差があったのは中堅の攻守(9回当たり約0.45点相当、当ラボ推定)で、欠場試合で実際に失った点数ではない。

「wSBとUBRを足せば、走塁WARの残りが分かる」── 分からない。得点相当と勝利相当で単位が違い、併殺回避(DPAR)の単独値も取り出していない。

「その他の投手のWAR低下は、石井の離脱によるもの」── 一因になり得るが、前年差のすべてを故障によるものとはみなさない。

「CS初戦は主砲2人がいなかったから0点だった」── 違う。第1戦は佐藤・森下とも先発していた。欠場・途中交代が重なったのは第2戦・第3戦。

19よくある疑問

2026年の阪神は何勝した?

レギュラーシーズン79勝62敗2分でセ・リーグ優勝。2025年の85勝からは6勝減ったが、連覇を達成した。

阪神は2026年も強かった?

総合WAR39.0で、NPB BASEMENT系列では12球団2位・セ1位。攻守で凸凹はあったものの、強い優勝チームだった。

2026年の阪神の最大の強みは?

右翼の攻守貢献、三塁の打撃、先発3本柱の貢献が大きかった。守備位置別の推定(当ラボ)では右翼+60.6、三塁+32.6。

最大の弱点は?

守備位置別の推定(当ラボ)では遊撃−41.3点相当。打撃−21.6、守備−19.7と両面で平均を下回り、セ6位だった。

遊撃と左翼、どちらを補強すべき?

前編のデータからは、遊撃は攻守の両方、左翼は主に打撃が課題。どちらを優先するかは、2027年の編成と獲得可能な選手まで含めて後編で考える。

なぜ主力5人の打撃WARが野手全体を超える?

5人の合計+28.7に対し、その他の野手の合計が−1.6なので、全体は+27.1になる。

近本の不在中に阪神の得点は減った?

不在53試合の平均得点は3.72、出場90試合は3.57で、不在期間の方がわずかに高かった。周囲の選手や対戦条件も影響しており、近本の価値が低いことを意味しない。

75盗塁なのに走塁WARが0.0なのはなぜ?

wSB+2.1点、UBR+4.2点は盗塁・進塁部分の得点評価。選手別の走塁WARでは、プラス+1.8とマイナス−1.8が表示値の上で相殺した。

防御率1位と投手WAR3位は矛盾する?

矛盾しない。防御率は自責点を抑えた実績、投手WARは投球内容から見積もった貢献で、尺度が異なる。

なぜCSで3試合連続無得点だった?

初戦は主砲2人が先発していたにもかかわらず0点。DeNA投手陣に抑え込まれたところへ、佐藤の欠場と森下の途中交代が重なり、長打力の選択肢が減った。

20動画・関連記事

動画では阪神ファンとデータ解説者の掛け合いで、「右翼+60.6と遊撃−41.3」「防御率1位なのに投手WAR3位」など、数字の意外な意味を順番に追っています。後編(2027年ストーブリーグ戦略会議)は公開後にこのページへ追記します。

21SOURCES / 参照データ

※本記事のWARはNPB BASEMENT(2026年10月8日更新)の選手ごとの表示値(小数第1位)を合計した値です。当サイトの2026シーズンページ・阪神ページは同じ更新の小数第2位までを合計しているため、阪神の総合WARを39.3と表示していますが、12球団の順位は変わりません。

※公式成績は2026年レギュラーシーズン143試合の確定値です。記事中の情報は2026年10月30日時点で確認できたものです。守備位置別の得点貢献は打撃WARとは別の当ラボ推定モデルで、守備位置ごとの実打席から直接測定した打撃得点ではありません。

⚠ 免責: 本記事はNPB公式記録、NPB BASEMENTのWAR・wRC+・TZRなどの指標、阪神タイガース公式サイトの発表、日刊スポーツ・デイリースポーツ・共同通信系・ニッポン放送の報道などの公開情報をもとに、2026年10月30日時点の内容を整理・分析したものです。WARなどの指標はNPB公式のものではなく、算出元や取得時点によって値が変わります。守備位置別の値、中堅の9イニング当たりの値は当ラボの推定で、実際の得失点を表すものではありません。故障の診断名は公表されたものに限り、故障による能力の低下量は推定していません。特定の選手、球団、ファンを誹謗中傷する目的はありません。