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ゲーム差0から阪神はなぜ蘇った?近本光司「OPS1.513」と勝てる打線の復活

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近本 9/20〜26
OPS1.513・25打数14安打
ゲーム差0の翌日からの6試合
阪神 7連敗(9/5〜15)
7試合5得点
複数得点イニングは1度もなし
1〜5番の合計OPS
.538→1.106
7連敗中→9/20〜26、打線全体も別物に
30 SEC REVIEW

30秒で分かる、ゲーム差0からの阪神と近本

  1. 01
    7連敗で「線」が切れていた

    9月5〜15日は7試合5得点、複数得点イニング0。1〜5番のOPSは合計.538で、近本自身も.600にとどまっていた。

  2. 02
    近本本人が変わった

    同じ30打席で比べると、安打・四球・長打がすべて増え、9月20〜26日はOPS1.513。周りが打ち始めただけではない。

  3. 03
    打線全体も変わった

    1〜5番の合計OPSは.538から1.106へ。1〜2番が作り、3〜5番が返す形が同時に戻った。

  4. 04
    10・1は近本が凡退した後に追いついた

    9回先頭で近本が二ゴロに倒れても、中野→森下→佐藤→植田→大山で同点。延長は投手陣が止めた。

この記事の数字について

分析は2026年10月3日の阪神戦終了時点(マジック1、同夜の巨人-DeNA戦の結果待ち)で固定しています。その後、10月3日夜に巨人がDeNAに2-5で敗れ、阪神の2年連続8度目・2リーグ制後初のリーグ連覇が決まりました。優勝決定を受けて分析の数字は書き換えていません。WARは2系列を使い分けます。2019〜2025年の長期比較は「ぼーのpWAR」、2026年シーズン途中は「NPB Basement」の累積スナップショットで、両者は混ぜて比べません。フォームやバットの見直しと好成績の関係は、時期が重なっていることまでを書き、因果は断定しません。

7連敗。7試合で、わずか5得点。そして9月19日終了時点、阪神と巨人のゲーム差はついに「0」になった。一時5ゲームあった差が消えた。

ところが、その翌日から阪神は別のチームのように得点を重ねる。9月20日〜26日の6試合で5勝1敗、37得点。そして打線の一番前にいた近本光司は、25打数14安打、打率.560、出塁率.633、長打率.880、OPS1.513という短期ピークに入った。

ただし、この話を「近本が覚醒して阪神を救った」だけで終わらせると、2026年阪神の面白さを半分しか説明できない。近本自身も変わった。打線も変わった。そして10月1日には、近本が凡退した後にも別の攻撃が生まれた。阪神が本当に取り戻したものは何だったのか。近本の2019年からの8年間まで時間を巻き戻して考える。

01ゲーム差5が消えた――阪神7連敗の衝撃

7試合5得点、複数得点回0

9月5日から15日まで、阪神は0勝7敗。7試合の得点は5、1試合平均0.71点。その直前の8月28日〜9月3日は5勝1敗・27得点で、平均4.50点を取れていたチームだ。

期間勝敗得点平均得点
8/28〜9/35勝1敗274.50
9/5〜15(7連敗)0勝7敗50.71
9/20〜26(反撃期)5勝1敗376.17

阪神の3つの期間。8/28〜9/3と9/20〜26は同じ5勝1敗だが、反撃期の方が得点は多い。

ただし「全く打てなかった」わけではない。7連敗中も41安打、1試合平均5.86本は出ている。問題は、安打が得点につながらなかったことだ。複数得点イニングは1度もなく、7試合すべてで相手に先制を許した。常に追う展開で、1度のチャンスを逃すとそのまま試合が終わっていった。

1〜5番OPS .538

7連敗中の1〜5番のOPSは、近本.600、中野.370、森下.723、佐藤.519、大山.474。5人合計で.538だった。よく「点だった打線が、線にならない」と言われる状態だが、より厳密に言えば点そのものも弱く、その点と点の接続も切れていた。

近本自身もOPS .600だった

ここで見落としたくないのが近本自身の数字だ。7連敗中の近本は30打数8安打、打率.267、出塁率.267、四球0、長打2本、得点1。OPSは.600だった。7試合すべてで安打は出ている。だから「毎日ヒットを打っていた近本は好調だった」と見えやすい。

しかし四球は0で、長打も2本。近本自身も出塁と長打が足りず、さらに後続も沈んでいた。「近本だけの不振ではない」と「近本自身も十分ではなかった」は、両方とも正しい。この2つを同時に置くところから、今回の分析は始まる。

02なぜ近本だったのか――2019年から続く「強い阪神」

ゲーム差0の翌日から打ち始めたのは、なぜ近本だったのか。答えを急ぐ前に、2019年まで戻る。

新人159安打・36盗塁

2019年、近本はルーキーから1番・中堅を担い、159安打を放った。当時のセ・リーグ新人最多安打記録だ。36盗塁で盗塁王、新人特別賞。2021年には178安打で最多安打、2022年には30試合連続安打。「1番センター」という役割に、入団直後から座り続けてきた。

pWARで2023年7.2

総合的な価値を「ぼーのpWAR」という同じ系列の中だけで並べると、2019年の2.0から、2020年4.6、2021年4.9、2022年6.3と上がっていき、2023年の7.2がピークになる。2024年は4.6、2025年は再び6.3。7年合計は35.9だ。

図1 | 近本光司のぼーのpWAR推移(2019〜2025年)
0 2 4 6 8 2.0 4.6 4.9 6.3 7.2 4.6 6.3 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025

※値は「ぼーのの日記」のpWAR(ぼーの系列)。2023年の内訳は打撃5.1・走塁0.6・守備1.5。NPB BasementのWARとは計算方法が違う別系列のため、混ぜて比べない。

2019年の新人期から価値は高く、2020〜2023年にかけて上がっていった。「最近突然すごくなった選手」ではない。

2023年の骨折と打撃見直し

2023年、近本は右肋骨を骨折した。復帰までは約3週間。そのリハビリ中に打撃を見直している。その年の阪神はリーグ優勝し、38年ぶりの日本一。近本は日本シリーズMVPに選ばれ、セ・リーグMVP投票では2位だった。pWAR7.2はこの年の数字だ。

2025年リーグ優勝まで

2024年は8月に打率.390、39安打、出塁率.470で月間MVP。2025年には通算1000安打と通算200盗塁に到達し、32盗塁で6度目の盗塁王。阪神はリーグ優勝し、近本は2021〜2025年にベストナインとゴールデングラブをそれぞれ5年連続で受賞した。

年主な記録・出来事
2019159安打・36盗塁・盗塁王・新人特別賞
2021178安打・最多安打
202230試合連続安打
2023右肋骨骨折→打撃見直し→日本一・日本シリーズMVP、pWAR7.2
20248月打率.390・月間MVP
2025通算1000安打・通算200盗塁・32盗塁で6度目の盗塁王・リーグ優勝
2026左手首骨折→7/11復帰→8年連続100安打→ゲーム差0の局面でOPS1.513

近本光司の8年間の主要記録。2020年は特記事項なし(pWARは図1)。

032026年、二度目の骨折――「元に戻す」のではなく作り直す

左手首骨折で約2カ月半離脱

2026年4月26日、近本は死球で左手首を骨折し、戦線を離れた。離脱は約2カ月半。1番打者、中堅手、出塁、走塁、守備。近本がいなくなると、これらを一度に失うことになる。

近本不在を複数人で支えた阪神

その穴は髙寺、福島、岡城らが分担して埋めた。「近本不在=阪神崩壊」ではなかった。近本がいない間も、阪神は優勝争いを維持している。一方で、近本と同じ仕事を一人で完全に代替した選手がいたわけでもない。「近本不在でも戦えた」と「近本の価値は大きかった」は、ここでも両立する。

復帰初戦から近本→中野→森下

7月11日の復帰初戦。9回一死、近本が復帰後初安打で出ると、中野が四球、森下が左前打。相手守備の乱れも絡み、近本がサヨナラのホームを踏んだ。「近本が出る→中野がつなぐ→森下が返す」。9月に阪神が取り戻す攻撃の形が、復帰初戦に一度だけ現れていた。ただし、ここから即座に完全復活したわけではない。

OPS .633→.790→.976

近本の月別OPSは、骨折前が.628、7月が.633。復帰直後は骨折前とほぼ横ばいで、復帰=即完成ではなかった。8月に.790へ上がり、9月は.976。離脱中にはバットやフォームの見直しもしていた。

図2 | 近本光司の月別OPS(2026年)
.400 .600 .800 1.000 .628 .633 .790 .976 骨折前 7月 8月 9月

※7月11日に復帰。月別OPSは資料の集計値。見直しの後の時期に成績が段階的に上がったことを示すもので、フォーム変更が好調の原因だと断定するものではない。

復帰した瞬間に元通りになったのではない。約2カ月かけて、段階的に打撃を作り直した。2023年は骨折→リハビリ→打撃見直し→復帰→日本一。2026年は骨折→約2カ月半の離脱→バットとフォームの見直し→7月11日復帰→OPS.633、.790、.976。元に戻ったんじゃない。また、作り直した。2つのシーズンに共通するのは、骨折を「休んで戻る」期間ではなく「考えて作り直す」期間にしたことだ。

047連敗の中にも、一度だけ「阪神の形」が出ていた

9月15日。まだ7連敗は止まっていない。この試合も阪神は敗れた。それでも、近本が安打で出塁し、中野が送りバント、森下がタイムリー。34イニングぶりの得点で、本塁打以外の適時打は61イニングぶりだった。

近本が出る、中野がつなぐ、森下が返す。後の阪神の形が、負けた試合の中で一度だけ出ていた。

9月17〜18日、まず「蘇生」

9月17日の広島戦は7-2、11安打7得点で連敗を止めた。ただ、大勝1試合だけでは「一日だけの爆発」の可能性がある。翌18日は4安打でも2-1で勝った。打線が完全に戻ったと断定する段階ではないが、チームとして勝つ形が戻り始めた。

「相手が弱かっただけ」ではない

広島の床田寛樹には9月9日に6回3安打0失点に抑えられていたが、9月17日は4回9安打7失点と攻略した。DeNAの竹田祐には9月6日に5回1/3を4安打1失点とされたが、9月20日は2回2/3で4安打3失点。7連敗中に抑えられた同じ先発を、再戦で崩している。「たまたま弱い投手に変わったから打った」だけでは説明しにくい。

059月19日、ゲーム差0――2026年最大の底

それでも、底はもう一度来た。9月19日、阪神は広島に1-5で敗れ、巨人は中日に14-1で大勝。ゲーム差は0.0になった。翌日の結果次第ではマジック消滅もあり得る状況だった。

9月3日時点で5.0あったゲーム差が、ここで0になった。感情的には、この日が2026年の阪神にとって最大の底だった。

06翌9月20日、打線はなぜ変わったのか

8-1、11安打、7四球、186球

翌9月20日、阪神はDeNAに8-1で勝った。11安打、7四球、1死球。打者44人が打席に立ち、相手投手に186球を投げさせた。近本は3安打+1四球、元山が3打点。

一度満塁を逃しても、もう一度満塁を作った

この試合で一番見てほしいのは2回と3回だ。2回、満塁を作ったが得点できなかった。7連敗中なら、ここで流れが切れて終わっていたかもしれない。ところが3回、阪神はまた満塁を作り、今度は得点した。

「何度でもチャンスを作る打線」へ

7連敗中は「一度のチャンスを逃すと、そのまま終わる」打線だった。9月20日は「一度逃しても、また次のチャンスを作る」打線だった。一度のチャンスに全部を賭ける打線から、何度でもチャンスを作る打線へ。8-1というスコア以上に、この違いが反転点としての9月20日の意味だと見る。

07数字で見る7連敗→反撃

7連敗(9月5〜15日・7試合)と反撃期(9月20〜26日・6試合)を並べる。

DETAIL DATA7連敗と反撃6試合、何が変わったか
指標7連敗(9/5〜15)反撃期(9/20〜26)
平均得点0.716.17
平均失点3.143.17
平均安打5.8610.50
複数得点イニング0回10回
先制0/76/6

勝敗は7連敗が0勝7敗、反撃期が5勝1敗(37得点)。最も大きく変わったのは得点で、平均失点はほぼ同じ。

平均得点 0.71→6.17

1試合平均の得点は0.71から6.17へ。平均安打も5.86から10.50へ増えた。

複数得点回 0→10

7試合で0回だった複数得点イニングが、6試合で10回に。1点ずつではなく、まとめて点を取れるようになった。

先制 0/7→6/6

7連敗中は7試合すべてで先制を許した。反撃期は6試合すべてで先に点を取った。追う展開から、追わせる展開へ変わった。

平均失点は3.14→3.17でほぼ不変

一番大きく変わったのは得点だった。平均失点は3.14から3.17とほぼ同じ。結果上、投手陣が急に良くなったから勝ち始めたわけではない。

08近本だけではない。1〜5番が別の打線になった

反撃期の1〜5番のOPSは、近本1.513、中野.923、森下.783、佐藤1.300、大山1.000。5人合計は.538から1.106へ跳ね上がった。

図3 | 1〜5番のOPS、7連敗中と9月20〜26日
0 .400 .800 1.200 1.600 .600 1.513 .370 .923 .723 .783 .519 1.300 .474 1.000 .538 1.106 近本 中野 森下 佐藤 大山 5人合計
7連敗中(9/5〜15) 反撃期(9/20〜26)

※5人とも反撃期の方が高い。1〜2番(近本・中野)のOPSは1.225、3〜5番(森下・佐藤・大山)は1.028。

1〜2番のOPSは1.225、3〜5番は1.028。1〜2番が作り、3〜5番が返す。「二つのエンジン」が同時に回った。

役割で整理するとこうなる。近本は出塁・長打・得点で試合を動かす。中野は打つ・送る・走るで近本と中軸をつなぐ。森下は走者を返し、自分も出塁して次へつなぐ。佐藤は長打で一気に試合を壊し、反撃期のOPSは1.300。大山はサヨナラや決勝打で勝負を決める。さらに元山、髙寺、伏見、坂本にも勝負どころの仕事があった。「ここだけ抑えれば終わり」ではない打線になった。

09それでも近本自身も変わった――同じ30打席で比較

では、近本は周りが打ち始めたおかげで数字が良くなっただけなのか。7連敗中と反撃期は、どちらも近本の打席数が30。同じ30打席で比べられる。

COMPARE同じ30打席で、近本本人の打席内容が変わった
7連敗中(9/5〜15)
8安打
0四球
.600OPS
反撃期(9/20〜26)
14安打
5四球
1.513OPS

結論長打も2本から5本へ増えた。打線がつながっただけではなく、近本自身が安打・四球・長打をすべて増やしている。

どちらも30打席。得点1→8は後続打者や走塁状況の影響も受けるため、近本単独の効果としては扱わない。

安打8→14、四球0→5、長打2→5、OPS.600→1.513。打線がつながっただけではない。近本本人も、打席の内容を大きく変えた。得点も1→8に増えたが、これは後ろを打つ打者や走塁状況の影響も受けるので、近本一人の効果としては数えない。

AFTER GAME DIFF 0

近本光司 9月20〜26日

ゲーム差0の翌日から6試合、25打数14安打・OPS1.513

.560打率
.633出塁率
.880長打率

四球5、二塁打3、三塁打1、本塁打1、得点8。9月26日時点で17試合連続安打、7試合連続マルチ安打。打つだけでなく、歩いて出塁し、長打で一気に得点圏へ進んだ。

ただし「近本史上最長の好調」とは言わない。2022年には30試合連続安打、2024年8月には打率.390で月間MVPを取っている。今回が特別なのは、ゲーム差0という局面で起きたことだ。

成績は資料の集計値(9月20〜26日の6試合)。

累積の評価にも表れた終盤の好調

NPB Basementの近本の数字を、日付ごとの累積スナップショットで並べる。

時点WAR打撃WARwRC+
9/152.51.7110
9/264.02.8132
10/13.82.8134

NPB Basementの各日時点のシーズン累積値。wRC+はリーグ平均を100とした打撃生産力の指標。ぼーのpWAR(図1)とは別系列。

wRC+は110から132、134へ。終盤の打撃の好調が、シーズン累積の打撃評価にも反映されている。

さらに深掘り:WAR「2.5→4.0→3.8」をどう読むか

スナップショットの差は「期間WAR」ではない

9月15日から26日にかけてWARは2.5から4.0になった。だからといって「この11日間でWAR1.5を稼いだ」とは読まない。同じく9月26日から10月1日の4.0→3.8を「この期間はWARマイナス0.2」とも解釈しない。

表の数字は、それぞれの日付の時点でのシーズン累積の評価だ。WARには打撃だけでなく守備などの評価も入っており、累積値の計算の変化も含まれる。期間を区切った成績の良し悪しは、9月20〜26日のOPSのような期間成績で見る。累積スナップショットは「シーズン全体の評価がどの水準にあるか」を見るものとして扱う。

WARの系列は混ぜない

この記事では、2019〜2025年の長期比較に「ぼーのpWAR」、2026年シーズン途中の評価に「NPB Basement」を使っている。WARには複数の計算方法があり、同じ選手・同じ年でも値は一致しない。2つの系列の値を合算したり、同じランキングに並べたりはしない。

10「近本が打てば勝つ」ではない――9月25日の反証

反撃期の中で、一番大事な敗戦がある。9月25日、近本は2安打1四球で3出塁。二塁打も打ち、5号ソロも放った。ところが阪神は5安打14三振、1得点。1-2で敗れた。唯一の得点は、近本の本塁打だった。

近本が好調であることと、阪神が必ず勝つことは同じではない。翌26日は違った。近本の二塁打から、中野の安打、佐藤の犠飛、大山の適時打で得点した。近本が出て、後ろがつないで返した日に、点が入った。

近本個人の好調と、阪神打線の復活は同じではない。この2つを分けて見ることが、今回の分析の芯になる。

11決め手は大山、元山、髙寺、伏見へ広がった

反撃期に試合を決めた打席を並べると、近本の名前はほとんど出てこない。

FLOW9月20〜26日、試合を決めた選手は日替わりだった
  1. 9/20
    阪神8-1

    元山が3打点。近本は3安打+1四球で点火役。

  2. 9/21
    阪神3-2

    大山が延長11回にサヨナラ本塁打。

  3. 9/22
    阪神9-7

    髙寺が延長11回に決勝2ラン。

  4. 9/23
    阪神8-4

    大山の先制打と伏見の走者一掃。

  5. 9/25
    阪神1-2

    近本が3出塁し5号ソロ。それでもチームは5安打14三振で敗戦。

  6. 9/26
    阪神8-3

    大山が4安打4打点・決勝打。近本の二塁打から得点が始まった。

読みどころ近本は毎試合を決めたのではなく、試合を動かす点火役。決め手は大山を中心に、元山・髙寺・伏見へ広がった。

スコアはいずれも阪神側の得点を先に表記。

9月20日は元山の3打点、21日は大山の延長11回サヨナラ本塁打、22日は髙寺の延長11回決勝2ラン、23日は大山の先制打と伏見の走者一掃、26日は大山の4安打4打点・決勝打。近本は点火役、大山はフィニッシャー、元山・髙寺・伏見らが日替わりの決め手。近本が毎日試合を決めたわけではない。近本が火をつけ、決める役は試合ごとに違う選手が担った。

12打線復活は才木の援護環境まで変えた

才木の2登板を比べると分かりやすい。9月13日は9回0失点でも、登板中の援護は0で勝てなかった。9月20日は7回0失点で、登板中に6点の援護があり、最終的に8-1で勝った。

期間の平均失点は7連敗中3.14、反撃期3.17でほぼ同じだ。投手陣が突然劇的に変わったというより、打線の復活によって、先発投手が置かれる援護の環境が変わったと見る方が近い。

13巨人が落ちただけではない――0差→2.5差を分解

9月19日終了時点でゲーム差は0。その後、阪神は9月20〜26日に5勝1敗・37得点。巨人は9月20〜25日に2勝3敗・9得点だった(集計期間は資料の区切りのまま)。

勝敗の差を単純に分解すると、阪神の5勝1敗が2.0ゲーム分、巨人の2勝3敗が0.5ゲーム分。合わせて0.0差から2.5差になった。巨人の失速にも助けられた。しかし、ゲーム差を再び広げた主成分は阪神自身の5勝1敗だった。

142カ月半離脱しても8年連続100安打

8月20日に通算1000試合出場。そして9月22日、今季100安打に到達し、入団から8年連続100安打。吉田義男に並ぶ球団記録だ。

約2カ月半離脱したシーズンでも、100安打に間に合わせた。終盤の猛打は、優勝争いと近本自身の8年間の両方をつないだ。

15強い阪神のほぼ全部に近本がいる

2019〜2025年の7年間、阪神は7年連続でAクラスに入った。年別の順位は3位→2位→2位→3位→1位→2位→1位、平均2.0位。その間の阪神の公式戦978試合のうち、近本は944試合に出場した。出場割合は96.5%。7年合計のぼーのpWARは35.9だ。

ここから「近本が阪神を強くした」とは言わない。言えるのは、近本のキャリアと、阪神が強豪として定着した時代がほぼ重なっているということだ。2019年から続く「強い阪神」の時代。そのほぼ全部に近本がいる。

16そして10・1――近本が凡退しても攻撃は終わらなかった

M4からM1まで

9月26日、DeNAに8-3でM4。近本は2安打。9月30日はヤクルトに5-0でM3、近本は通算1200安打を記録したが、その直後に牽制死。10月1日は巨人と延長12回、5時間5分の2-2でM2。10月2日は阪神の試合がなく、巨人がヤクルトに1-5で敗れてM1になった。9月20日〜10月1日の阪神は6勝1敗1分。

一方で、9月30日〜10月1日の近本はOPS.650、出塁率.400。9月20〜26日の爆発がそのまま続いたわけではない。長打の爆発は落ち着いた。それでも出塁は残った。ここからは近本の役割を「爆発」ではなく「試合への関わり方」で見る。

近本6打席を全部見る

10月1日の近本は6打席で1安打2四球、3出塁1盗塁。主役だからこそ、良い打席も返せなかった打席も全部見る。

回近本の結果状況・その後
1回四球中野安打・森下四球で無死満塁、ただし無得点
2回右飛二死二・三塁で得点できず
4回左飛二死二・三塁で得点できず
7回左前安打→二盗自分で得点圏へ進むが、得点にはならず
9回二ゴロ先頭で凡退。その後、中野から同点攻撃
10回敬遠二死二塁。坂本の安打から始まった好機

10月1日 阪神2-2巨人(延長12回)の近本の6打席。

3出塁・1盗塁は大きい。ただし、得点圏で2度凡退し、1回の無死満塁も得点にならなかった。10回の好機は坂本の安打から始まったもので、近本がゼロから作ったものではない。「近本が好機を作り続けた試合」ではなく、近本が出塁しても点にならない回があった試合だ。

9回、中野→森下→佐藤→植田→大山

試合は6回に大山の20号同点ソロで1-1。8回に巨人が再び勝ち越して1-2。そして9回、先頭の近本は二ゴロに倒れた。

DECISION FLOW10・1の9回、近本が凡退してから始まった同点攻撃
  1. 近本の先頭二ゴロの後、中野 右線二塁打1点を追う9回、近本が出られなかった打席の直後から攻撃が始まる。
  2. 続く打者は森下 四球無理に打ちにいかず、走者をためる。
  3. 中軸の打席で佐藤 中飛アウトでも二塁走者の中野が三塁へ進む。
  4. 代走で入った植田 二盗二盗で走者は二、三塁に。一打で勝ち越しの走者まで得点圏へ。
  5. 最後は大山 中前同点打2-2。延長は工藤・岩崎・石井が3イニング無失点で止めた。

近本が出なかった。それでも攻撃は終わらなかった。誰かが出て、誰かがつなぎ、誰かが返す。今回の分析の「答え」はこの9回にある。

10月1日は延長12回・5時間5分で阪神2-2巨人。阪神は14安打・16残塁でマジックは3から2へ。

中野の右線二塁打、森下の四球、佐藤の中飛で中野が三塁へ。代走の植田が二盗し、大山の中前打で2-2。近本が出なかった。それでも攻撃は終わらなかった。この9回が、今回の分析の「答え」だ。誰かが出て、誰かがつないで、誰かが返す。

工藤・岩崎・石井が延長を止める

投手陣も粘った。木下が6回と7回を無失点、ドリスが9回を無失点。延長は10回を工藤、11回を岩崎、12回を石井が投げ、3イニングを無失点で止めた。

勝てなかった。でも、負けなかった

打線は14安打で16残塁、2点しか取れなかった。決め切れなかった試合だ。それでも別の攻撃で追いつき、投手陣が延長を止めて、マジックは3から2へ減った。近本の分析なのに、近本が凡退した場面と、近本以外の選手の仕事が一番大事な答えになる。勝てなかった。でも、負けなかった。

1710月3日、近本が出ても佐藤が3ランを打っても勝てなかった

M1で迎えた10月3日の広島戦(デーゲーム)。3回、坂本の10号から近本の四球、中野の内野安打、佐藤の39号3ランで一時4-1とリードした。近本は4打数1安打1四球1得点で、連続安打を20試合に伸ばした。

しかし試合は0-1→4-1→4-4→4-6と逆転され、阪神は4-6で敗れた。近本が出る。佐藤が3ランを打つ。それでも、必ず勝てるわけではない。10月3日の阪神戦終了時点でマジックは1のまま、同夜の巨人-DeNA戦の結果を待つことになった。

9月20日〜10月3日まで区間を広げると、近本のOPSは1.231、阪神は6勝2敗1分。9月20〜26日のOPS1.513という爆発が10月3日まで続いたわけではない。それでも長い区間で見てもOPS1.231。短期ピークの後も、近本は打線の一番前で結果を残した。

18結論:近本の逆襲は、近本だけの物語ではない

7連敗。7試合5得点。そしてゲーム差0。あの時点で、2026年の阪神がここからもう一度前へ出ると自信を持って言えた人は多くなかったと思う。そこから近本光司は、9月20日〜26日の6試合で25打数14安打、OPS1.513。

ただ、今回の数字を追って一番面白かったのは、「近本が全部やった」という話ではなかったことだ。7連敗中、近本自身もOPS.600だった。反撃期には、同じ30打席で安打8→14、四球0→5、長打2→5。近本自身が変わった。同時に、中野がつなぎ、森下・佐藤・大山が返し、元山・髙寺・伏見らにも決め手が広がった。

10月1日の巨人戦では、近本が9回先頭で凡退した。それでも中野から別の攻撃が始まり、森下、佐藤、植田、大山へつながって同点。延長は投手陣が止めた。

近本の逆襲は、近本だけの物語ではない。

でも、2019年から強い阪神の一番前に立ち続け、二度の骨折を経験し、そのたびに「元へ戻る」のではなく打撃を考え直し、ゲーム差0の最も苦しい瞬間に再び打ち始めた。近本がいなければ、この物語は語れない。

阪神が取り戻したのは、近本の打率だけではなかった。近本自身が変わり、仲間がつなぎ、中軸が返し、投手陣が止める。「勝てる形」を、もう一度作り直した。

追記:この記事の分析は10月3日の阪神戦終了時点で固定しています。同日夜、巨人がDeNAに2-5で敗れ、阪神の2年連続8度目・2リーグ制後初のリーグ連覇が決まりました。

19評価の限界

あえて逆から見ると

「近本一人が阪神を救った」── 違う。近本自身はOPS.600→1.513と大きく改善したが、1〜5番全体もOPS.538→1.106へ上がった。9月25日は近本が3出塁しても敗れ、10月1日は近本が凡退した9回に追いついた。

「7連敗中も近本は好調だった」── 言いすぎ。毎試合安打は事実だが、30打席で四球0、長打2本、OPS.600。「絶不調」とまでは言わないが、出塁と長打は反撃期より明確に低かった。

「フォーム変更で覚醒した」── 断定しない。言えるのは、バットやフォームを見直した後の時期に、月別OPSが.633→.790→.976と段階的に上がったことまで。因果は確認できない。

「WARが9/15→9/26で1.5増えたから、その期間に1.5稼いだ」── そうは読まない。NPB Basementの数字は各日時点の累積スナップショットで、守備などの評価の変化も含む。9/26→10/1の4.0→3.8も、期間の不調を示すものとしては扱わない。

「巨人が勝手に落ちたから2.5差になった」── 違う。巨人の2勝3敗は0.5ゲーム分。ゲーム差を広げた主成分は阪神自身の5勝1敗(2.0ゲーム分)。

「近本復帰=阪神復活」── 違う。近本は7月11日に復帰したが、阪神は9月に7連敗している。復帰直後の7月のOPSは.633で、骨折前とほぼ横ばいだった。

20動画・関連記事

「近本が一人で救った」という動画ではありません。近本自身が変わり、阪神全体がどう「勝てる形」を取り戻したのか。動画では、近本の2019年からの8年間、2023年と2026年の二度の骨折、7連敗中と反撃期の「同じ30打席比較」、そして10・1巨人戦までをスライドで順番に追っています。数字だけでなく、7連敗からゲーム差0、そして10・1巨人戦までの流れを掛け合いで見たい方は、本編をどうぞ。

21SOURCES / 参照データ

※本記事の数値は2026年10月3日 阪神戦終了時点で固定しています。期間を区切ったOPS・平均得点などは、上記をもとにした集計値です。WARは、2019〜2025年の長期比較が「ぼーのpWAR」、2026年シーズン途中が「NPB Basement」の累積スナップショットで、計算方法が異なる別系列のため合算・比較はしていません。

⚠ 免責: 本記事はNPB公式、阪神タイガース公式、NPB Basement、ぼーのの日記、および公開された試合経過・報道記事などをもとに、記載した基準日時点の内容を整理・分析したものです。期間を区切った集計値には、公開データをもとに独自に集計した値を含みます。打撃フォームの見直しと成績の関係、打線の役割分担など公開情報だけでは確認できない点については、確認済み事実と分析・推測を分けて記載しています。本記事の分析は現時点のデータにもとづくものであり、将来の成績を保証するものではありません。特定の選手、球団、ファンを誹謗中傷する目的はありません。