阪神はなぜ2026年に優勝できた?得点2位・防御率2位でも勝てた理由を数字で徹底解剖
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30秒で分かる、2026阪神の勝ち方
- 01全部が1位だったわけではない
得点509はリーグ2位、防御率2.80も2位。それでも失点425はリーグ最少で、得失点差+84はリーグ最大だった。
- 02巨人との差は「打撃」で作った
打撃WARは阪神25.9、巨人13.5で+12.4。投手・守備・走塁のWARでは巨人が上だった。
- 03打撃差の中心は佐藤輝明と森下翔太
2人の打撃WAR合計17.8は、チーム打撃WAR25.9の68.7%。得点や勝利の比率ではなく、打撃WARの中での比率。
- 04投手陣は3本柱・四球・分散救援
規定投球回以上の防御率1〜3位を独占し、無四球試合は22。救援では3投手が2桁セーブを挙げた。
- 052.5ゲーム差の内訳は「直接対決+8.0」
交流戦で−5.0、セ他4球団で−0.5。それを対巨人16勝8敗1分の+8.0で取り返し、最終的に+2.5ゲーム。
公式成績は2026年10月2日終了時点、WARはNPB BASEMENTの10月2日07時02分取得の保存値を使います。阪神の優勝決定は翌10月3日で、77勝59敗2分(138試合)は優勝決定前日の時点の成績で、シーズン最終成績ではありません。WARはNPB公式の指標ではなく、算出元によって値が変わるため、同じ系列の中でだけ比べます。後半で扱う「2.5ゲーム差の分解」は、実際の勝敗を対戦区分ごとに分けた帳尻で、「この試合がなければこうなっていた」という因果の推定ではありません。
阪神タイガースが2026年のセ・リーグを制した。
ただ、数字を眺めると少し不思議だ。得点はリーグ2位。防御率もリーグ2位。巨人と比べると、投手・守備・走塁のWARでも阪神が上ではない。それでも阪神は優勝した。では、いったい何が一番強かったのか。
答えを先に言えば、2026年の阪神は「全部が一番」だったチームではない。得点と失点のバランスでリーグ最大の得失点差を作り、巨人との差は打撃で作り、最後は直接対決で最大のライバルを叩いた。
この記事では、2026阪神の優勝を「チーム全体」「巨人との部門差」「実際の順位差」の3層に分けて、数字で順番に解剖していく。
01まず全体像|得点2位・防御率2位なのに得失点差は+84
10月2日終了時点で、阪神の得点は509でリーグ2位。防御率は2.80でリーグ2位。どちらも1位ではない。ところが失点は425でリーグ最少で、得点から失点を引いた得失点差は+84。巨人の+45、DeNAの+41を大きく上回る、リーグ最大の数字だった。
| 指標 | 阪神 | 巨人 | DeNA |
|---|---|---|---|
| 得点 | 509 | 484 | 550 |
| 失点 | 425 | 439 | 509 |
| 防御率 | 2.80 | 2.79 | 3.30 |
| 得失点差 | +84 | +45 | +41 |
※得点はDeNAが最多、防御率は巨人が最も低い。それでも得点と失点の差は阪神が最大。
防御率2位なのに、失点は最少
ここで少し引っかかるのが、「防御率は巨人の方がわずかに良いのに、失点は阪神の方が少ない」という点だ。理由は単純で、防御率は自責点ベース、失点は非自責点も含むから。2つは別の物差しなので一致しない。1試合あたりの失点で見ると、阪神は425÷138=3.080、巨人は439÷142=3.092で、阪神の方がわずかに少ない。
だから「防御率2位だから、阪神は一番抑えたチームではない」とは言えない。実際に許した点数では、阪神がリーグで一番少なかった。
02得点2位でも打撃の中身はリーグトップ級
得点は2位。では打線の中身も2位だったのか。チーム打撃の数字を並べると、印象は少し変わる。
- 打率 .248:リーグ1位
- 出塁率 .319:リーグ1位
- 長打率 .374:リーグ2位
- OPS 約.693:リーグ1位(OPS=出塁率+長打率)
- 1試合あたり得点 3.69:リーグ2位
本塁打は総数123でリーグ2位だが、試合数が違うので1試合あたりで見る必要がある。阪神は123÷138=0.891、総数最多のDeNAは125÷141=0.887。1試合あたりでは阪神がわずかに上だ。総数だけを見て「長打力は2位」と単純にまとめるのは正確ではない。
得点総数は2位でも、打席全体の質まで2位だったわけではない。出塁と長打を合わせた打席の質は、リーグのトップ級にあった。
03巨人との差を作った最大要素は「打撃」
次は、優勝を争った巨人との比較だ。ここではNPB BASEMENTのWAR(10月2日07時02分の保存値)を部門ごとに並べる。WARはNPB公式の指標ではないため、同じ系列の中だけで比べる。
※棒は阪神から巨人を引いた差。下段は「阪神 / 巨人」のWAR。NPB BASEMENTの2026年10月2日07:02保存値で、NPB公式指標ではない。
投手WARは巨人がわずかに上、守備WARと走塁WARも巨人が上。阪神は「投手・守備・走塁まで全部巨人より強かった」わけではない。そのうえで、打撃WARだけは阪神25.9、巨人13.5で+12.4と、他の部門の差とは桁の違う開きがあった。巨人との差で突出していたのは、打撃だった。
なお、元資料の総WARは阪神37.1、巨人31.2だが、表示されている4部門の和は阪神37.2、巨人31.1と丸めの差が出る。丸める前の数字を完全には集計し直せていないため、この記事では総WARを主張の中心にしない。見るべきは部門ごとの差の形だ。
盗塁は巨人が多く、成功率は阪神が高い
走塁の中身も少し見ておく。盗塁は阪神69、巨人99で巨人が多い。一方、盗塁刺は阪神25、巨人43で、成功率は阪神73.4%、巨人69.7%と阪神が上。それでも走塁全体のWARは巨人が上だ。「巨人は盗塁が多い」「阪神は成功率が高い」「走塁WARは巨人が上」は、互いに矛盾しない。守備・走塁で巨人が上でも、打撃の大きな差で阪神が上回った。ここが2026年の面白いところだ。
04打撃差の中心は佐藤輝明と森下翔太
では、その打撃WAR25.9は誰が作ったのか。中心は、はっきりしている。佐藤輝明が9.3、森下翔太が8.5。2人で17.8になる。
佐藤輝明+森下翔太
巨人との打撃WAR差+12.4の中心にいた2人
2人の打撃WAR合計は17.8で、チーム打撃WAR25.9の68.7%。wRC+(100がリーグ平均)は佐藤212、森下198と、どちらも平均を大きく上回る水準だった。10月2日時点で佐藤は38本塁打102打点、森下は35本塁打84打点。
68.7%は「阪神の得点の7割」でも「勝利の7割」でもない。NPB BASEMENTの打撃WAR成分の中で、2人が占めた比率だ。
WARはNPB BASEMENTの2026年10月2日07:02取得保存値。WARはNPB公式指標ではなく、算出元によって値が変わる。
17.8÷25.9=68.7%。ここで一つ注意しておきたい。この68.7%は「阪神の得点の7割」でも「勝利の7割」でもない。NPB BASEMENTの打撃WARという成分の中で、2人が占めた比率だ。wRC+(100がリーグ平均)は佐藤212、森下198で、2人とも平均を大きく上回る打撃水準だった。
2人だけではない打線の厚み
ただし、打線が2人だけだったわけではない。規定打席に到達した打者の打率は、1位が佐藤輝明の.314、2位が森下翔太の.296、3位が中野拓夢の.291と、上位3人を阪神が占めた。大山悠輔も打率.283、20本塁打、84打点。規定打席には届いていないが、近本光司は打率.306、出塁率.369を残している。WAR差の中心は佐藤・森下。そのまわりを、中野、大山、近本が固めていた。
05終盤は1・2番も好調
年間の打撃差を作った中心は佐藤・森下だった。一方、優勝争いが大詰めを迎えた9月は、1・2番も好調だった。9月の月間成績は、近本が打率.381、中野も打率.329。
| 選手 | 試合 | 打数 | 安打 | 打率 | 出塁率 | OPS | 得点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 近本光司 | 20 | 84 | 32 | .381 | .429 | .976 | 14 |
| 中野拓夢 | 20 | 79 | 26 | .329 | .365 | .706 | 11 |
※9月全体の確定した月間成績。長打率は近本.548、中野.342。
近本は9月の84打数で32安打、出塁率.429、OPS.976。中野は出塁率.365で、長打は少なくても塁に出続けた。中軸の前に走者を置く1・2番が、優勝争いの月にそろって機能していた。近本の9月については、近本光司の逆襲を分析した記事で詳しく扱っている。
06防御率1〜3位を独占した3本柱
投手陣に目を移す。規定投球回以上の防御率は、1位が村上頌樹の1.85、2位が髙橋遥人の1.87、3位が才木浩人の2.32。上位3人を阪神が独占した。
| 選手 | 防御率 | 投球回 | 勝利 | 強み |
|---|---|---|---|---|
| 村上頌樹 | 1.85(1位) | 180回1/3 | 10勝 | 投球回リーグ最多 |
| 髙橋遥人 | 1.87(2位) | 159回 | 16勝 | 勝利数リーグ最多 |
| 才木浩人 | 2.32(3位) | 151回 | 10勝 | 172奪三振でリーグ最多 |
※村上は155奪三振、髙橋は四球17。
3人の持ち味は、きれいに分かれている。村上は投球回、髙橋は勝利、才木は奪三振。村上は180回1/3でリーグ最多のイニングを投げ、髙橋はリーグ最多の16勝を挙げながら与えた四球は17。才木は172奪三振でリーグ最多だった。
073本柱が凄くてもチーム防御率は2位だった理由
防御率1〜3位を独占しているのに、なぜチーム防御率は2位なのか。答えは投球回の比率にある。
3人の合計は490回1/3、自責点109で、合算防御率は2.00。一方、チーム全体は1233回、自責点383で防御率2.80。3本柱が投げたのは490回1/3÷1233回=全投球回の39.8%だった。
残りの約6割、742回2/3を投げたその他の全投手の合算防御率は3.32。ここで言う「その他」は、3本柱以外の先発と救援をすべて合わせた数字で、「3本柱以外の先発の防御率」ではない。
3本柱は確かに圧倒的だった。ただ、シーズン全体の約6割は3本柱以外が投げている。3本柱だけで阪神投手陣が最強だった、という話ではない。だからこそ、次に見る「四球」と「救援」が効いてくる。
08地味だけど大きい「四球」の差
巨人との差がはっきり出たもう一つの数字が、四球だ。打席数に対する四球の割合(BB率)を、打者と投手の両方で比べる。
- 打者のBB率:阪神8.1%(424/5220)、巨人7.3%(381/5201)。阪神打線の方が四球を選んでいる。
- 投手のBB率:阪神6.1%(309/5051)、巨人8.0%(421/5273)。阪神投手陣の方が四球を出していない。
選ぶ側でも、与えない側でも、阪神が上だった。そして投手陣の特徴が最もはっきり出るのが、無四球試合の数だ。
※無四球試合はチーム全体の投手記録で、3本柱だけの記録ではない。また、無四球は無失点という意味ではない。
阪神22、巨人7、DeNA7、中日8、広島9、ヤクルト8。阪神だけが突出している。四球で走者を出さないことが、阪神投手陣全体の特徴として数字にはっきり表れている。
09守護神1人ではなかった救援陣
試合の終盤を任された救援陣も、1人の守護神に頼る形ではなかった。
| 投手 | 登板 | セーブ | ホールド | 防御率 |
|---|---|---|---|---|
| ドリス | 52 | 19 | 19 | 1.85 |
| 岩崎優 | 46 | 11 | 16 | 2.72 |
| 工藤泰成 | 55 | 11 | 13 | 0.92 |
| 木下里都 | 43 | — | 14 | 1.68 |
※木下里都のセーブ数は参照資料に記載がないため「—」とした。木下は「2桁セーブ」の3人には含まれない。
ドリス19セーブ、岩崎優11セーブ、工藤泰成11セーブ。同一球団の3投手がシーズン2桁セーブを記録したのは、プロ野球史上初だ。工藤は55登板で防御率0.92、木下里都も43登板で14ホールド、防御率1.68と終盤を支えた。
ただ、年間のセーブの分布だけを見て「最初から計画的な負荷分散だった」「疲労軽減に成功した」とまでは言えない。言えるのは、石井大智の離脱期間も含めて、複数の投手が終盤を支えたということだ。
10最大の発見|巨人との差2.5ゲームを分解すると「直接対決+8」
ここまでで、チーム全体の強さ(得失点差+84)と、巨人との部門差(打撃WAR+12.4)を見てきた。では、実際の順位の差は、どこで生まれたのか。
10月2日終了時点で、阪神は77勝59敗2分で貯金18。巨人は76勝63敗3分で貯金13。ゲーム差は(18−13)÷2=2.5だ。この2.5ゲームを、対戦相手の区分ごとに分けてみる。
| 区分 | 阪神 | 巨人 | 阪神側のゲーム差 |
|---|---|---|---|
| 直接対決 | 16勝8敗1分 | 8勝16敗1分 | +8.0 |
| セ他4球団 | 55勝39敗1分(.585) | 58勝41敗(.586) | −0.5 |
| 交流戦 | 6勝12敗 | 10勝6敗2分 | −5.0 |
| 合計 | 77勝59敗2分 | 76勝63敗3分 | +2.5 |
2026年10月2日終了時点。実際の勝敗を対戦区分ごとに分けた帳尻で、「直接対決がなければ8勝減る」という因果推定ではない。WARの差(+12.4)とも足し算しない。
※単位はゲーム。各区分の棒は、直前までの累計からどれだけ増減したかを示す。下段は阪神の成績。+8.0−0.5−5.0=+2.5で、実際のゲーム差と一致する。
結果は、こうなる。
- 交流戦:阪神6勝12敗、巨人10勝6敗2分。阪神側−5.0ゲーム。
- セ・リーグの他4球団:阪神55勝39敗1分(勝率.585)、巨人58勝41敗(勝率.586)。勝率はほぼ同じで、阪神側−0.5ゲーム。
- 直接対決:阪神16勝8敗1分。阪神側+8.0ゲーム。
阪神は交流戦で巨人に5ゲーム分負けていた。セ・リーグの他4球団との戦いでも0.5ゲーム分負けていた。それでも直接対決で8ゲーム分を取り返し、最終的に2.5ゲーム上回った。+8.0−0.5−5.0=+2.5。実際のゲーム差と、ぴったり一致する。
ここは読み方に注意したい。これは実際の勝敗を対戦区分ごとに分けた帳尻だ。「直接対決がなければ8勝減っていた」という因果の推定ではないし、「交流戦で普通に戦えていれば独走だった」といった仮定の話をしているわけでもない。また、WARの+12.4と足し算する数字でもない。見ているのは、実際についた2.5ゲームの差が、どの区分の勝敗から来ているかだけだ。
さらに深掘り:区分ごとのゲーム差はどう計算しているか
ゲーム差は「貯金の差÷2」
2チームのゲーム差は、貯金(勝ち越し数)の差を2で割ったものだ。10月2日終了時点の阪神は貯金18、巨人は貯金13なので、(18−13)÷2=2.5ゲームになる。
同じ計算を、対戦区分ごとの勝敗に当てはめる。たとえば直接対決は、阪神16勝8敗1分で阪神は8つの勝ち越し、裏返せば巨人は8勝16敗1分で8つの負け越し。差は16で、2で割ると+8.0ゲームだ。直接対決は、自分に1勝が付くと同時に相手に1敗が付くので、1つの勝敗で順位差が2倍の速さで動く。交流戦とセ他4球団も同じ計算で、それぞれ−5.0、−0.5になる。
3つの区分を足すと、阪神は77勝59敗2分、巨人は76勝63敗3分で、全体の成績と一致する。区分の切り方で数字を作っているのではなく、実際の勝敗を漏れなく3つに分けただけという点が、この分解の大事なところだ。
118月の巨人戦6戦6勝が大きかった
8月の巨人戦は6戦6勝。対巨人16勝8敗1分のうち、6勝がこの8月に集まっている。
- 8/11阪神9-1巨人
8月の巨人戦、最初の1勝。巨人の得点を1点に抑えた。
- 8/12阪神5-1巨人
連勝。この試合も巨人の得点は1点。
- 8/13阪神3-2巨人
1点差で3連勝。8月の6試合で、巨人が2点を取ったのはこの試合だけ。
- 8/28阪神4-1巨人
月末の再戦も、巨人を1点に抑えて勝利。
- 8/29阪神4-1巨人
同じ4-1で連勝。
- 8/30阪神3-1巨人
6戦6勝。才木浩人の巨人戦連勝は、2024年7月30日から続く複数年の記録で11に。
読みどころ6試合で28得点7失点。直接対決の+8.0ゲーム分のうち、8月の6試合だけで+6.0ゲーム分になる。
スコアは阪神から見た表記。才木の11連勝は2024年からの複数年記録で、2026年だけで11勝したわけではない。
6試合の合計は28得点7失点。巨人が2点を取れたのは3-2の8月13日だけで、残りの5試合はすべて1点に抑えた。直接対決の区分だけで見ると、8月の6試合で+6.0ゲーム分になる。直接対決は、自分の勝ちがそのまま相手の負けになる。順位差を動かす効率が、他のカードとはまるで違う。
才木浩人の巨人戦連勝は、この8月30日の時点で11に達した。ただしこれは2024年7月30日から2026年8月30日までの複数年にまたがる記録で、2026年だけで巨人に11勝したわけではない。
12最後の巨人戦も負けなかった
10月1日、今季最後の巨人との直接対決は、阪神2-2巨人の引き分けだった。延長12回、試合時間は5時間5分。
6回に大山悠輔の20号ソロで1-1に追いつき、1-2とリードされて迎えた9回2死から、再び大山が同点打を放って2-2。8月の6連勝で差を作っただけではない。最後の直接対決でも9回2死から追いつき、巨人に勝ちを渡さなかった。
これで対巨人の最終成績は16勝8敗1分。2.5ゲーム差の内訳で最大の+8.0は、この16勝8敗1分から生まれている。10月1日までの経緯は、連覇までの全軌跡を時系列で振り返った記事で詳しく書いている。
132025年とは勝ち方が違う
阪神は2025年も優勝している。では2026年は、前年と同じ形で勝ったのか。1試合あたりに直して比べると、同じ優勝でも中身はかなり違う。
結論1試合あたりの得点は+0.22増えたが、失点は+0.62増えた。得失点差/試合は+1.01から+0.61へ縮小している。「打てるようになった分で失点増を全部取り返した」わけではない。
2025年は496得点・352失点・93本塁打。2026年は10月2日終了時点で509得点・425失点・123本塁打。
1試合あたりの得点は3.47から3.69へ+0.22。本塁打も1試合あたり0.65から0.89へ増えた。一方、1試合あたりの失点は2.46から3.08へ+0.62と、得点の増え方より大きい。防御率も2.21から2.80へ悪化している。結果として、1試合あたりの得失点差は+1.01から+0.61へ縮小した。
つまり、前年より得点は増えたが、失点増の方が大きかった。「攻撃力で失点増を全部取り返した」わけではないし、「2026年の方が2025年より総合的に強かった」とも単純には言えない。2025年は失点の少なさが際立つ勝ち方だった。2026年は得点も失点も増え、そのぶん1試合あたりの得失点差は小さくなった。同じ優勝でも、勝ち方が違う。
14「今年は打てるチームになった」はどこまで本当?
得点が増えたのは事実だ。ただ、ここでもう一歩踏み込みたい。リーグ全体の得点も増えていたからだ。
セ・リーグ6球団の1試合平均得点は、2025年が2756÷858=3.212、2026年(10月2日終了時点)が2874÷842=3.413。阪神の1試合平均得点は、2025年3.469、2026年3.688。リーグ平均を100とした単純な得点指数にすると、
- 2025年:(3.4685÷3.2121)×100=108.0
- 2026年:(3.6884÷3.4133)×100=108.1
リーグ平均との比で見ると、2025年と2026年はほぼ同じだ。阪神の得点は増えた。しかしリーグ全体の得点環境も上がった。「得点が増えた」と「リーグ平均との差が広がった」は別の話になる。だから「得点が増えた=打撃能力が前年より大幅に向上した」とは言い切れない。
なお、この得点指数はwRC+ではない。球場や対戦相手の違いは補正していない、あくまで単純な比率だ。
15投手陣は三振を増やしたが、一発も増えた
失点が増えた投手陣の側も、中身を分けて見る。
| 指標 | 2025年 | 2026年(10/2終了) |
|---|---|---|
| 投球回 | 1305 | 1233 |
| 奪三振 | 1017 | 1131 |
| 四球 | 303 | 309 |
| 被本塁打 | 53 | 106 |
| K/9 | 7.01 | 8.26 |
| BB/9 | 2.09 | 2.26 |
| K/BB | 3.36 | 3.66 |
| HR/9 | 0.37 | 0.77 |
※K/9は9イニングあたりの奪三振、BB/9は与四球、HR/9は被本塁打。
9イニングあたりの奪三振(K/9)は7.01から8.26へ大きく上がった。四球はわずかに増えたが、三振と四球の比(K/BB)は3.36から3.66へ改善している。三振を取る力は、明らかに上がった。
一方で、被本塁打は53から106へ増え、9イニングあたりでも0.37から0.77になった。「奪三振型への変化」と「前年より失点が増えた」は矛盾しない。ただし、被本塁打の増加だけで失点増のすべてを説明することはできない。あくまで、変化の大きかった項目の一つとして見ておきたい。
16補強は新しく取るだけではない
2026年の阪神の戦力を押し上げたのは、外から来た選手だけではない。同じ選手が、前年より多く、より大きく働いた。
- 髙橋遥人:2025年は43回1/3・3勝。2026年は159回・16勝・防御率1.87。投球回は+115回2/3。
- 森下翔太:2025年は23本塁打。2026年は10月2日時点で35本塁打、打撃WAR8.5。
- 工藤泰成:2025年は18登板・防御率3.31。2026年は55登板・防御率0.92・11セーブ・13ホールド。
外部からは、伏見寅威ら新戦力が加わり、2025年途中に復帰したドリスが通年で稼働した。それでも数字の上で特に大きいのは、髙橋の投球回の増え方だ。補強とは、FAや新外国人だけではない。同じ選手がより多く、より大きく働けるようになることも、チームの戦力を大きく変える。
17結論|打線が差を作り、投手陣が支え、巨人を直接倒した
2026年の阪神は、「何か一つだけが圧倒的なチーム」ではなかった。得点は2位、防御率も2位。巨人とのWAR比較では、投手・守備・走塁で阪神が下回る部分もあった。
それでもチーム全体では509得点と425失点で、得失点差+84はリーグ最大。巨人との部門比較で最も大きかったのは打撃で、その中心に佐藤輝明と森下翔太がいた。投手陣は3本柱が防御率1〜3位を独占し、チーム全体で無四球試合22、救援では3投手が2桁セーブ。そして実際の勝敗内訳では、交流戦の−5.0、セ他4球団の−0.5を、直接対決の+8.0で取り返した。
- チーム全体では、得失点差+84でリーグ最大得点2位・防御率2位でも、得点と失点の差は最大。↓
- 巨人との部門比較では、打撃WARで+12.4投手・守備・走塁のWARは巨人が上。↓
- 打撃差の中心は、佐藤輝明と森下翔太打線全体では1・2番も9月に好調だった。↓
- 投手陣は、3本柱+四球抑制+分散救援ただし3本柱の投球回は全体の約4割。↓
- 実際の勝敗内訳では、直接対決で+8.0ゲーム交流戦−5.0、セ他4球団−0.5を取り返し、最終+2.5ゲーム。
全部が一番だったから勝ったのではない。打線が差を作り、投手陣が支え、最大のライバルを直接倒した。
3つの比較軸(チーム全体・巨人との部門差・実際の勝敗内訳)は、同じシーズンを別の角度から見たもの。互いの数字を足し算はしない。
3つの物差しは、同じシーズンを別の角度から見たものだ。チーム全体の強さは得失点差+84。巨人との差を作った最大の部門は打撃。実際の順位差では、直接対決が決定的だった。
全部が一番だったから勝ったのではない。打線が差を作り、投手陣が支え、最大のライバルを直接倒した。それが数字から見える、2026年阪神タイガースの勝ち方だった。
18評価の限界
「阪神は投打守走すべてリーグ最強だった」── 違う。得点も防御率も2位で、巨人とのWAR比較では投手・守備・走塁で巨人が上だった。
「佐藤と森下が阪神の得点の7割を作った」── 違う。68.7%はNPB BASEMENTの打撃WAR成分に占める比率で、得点や勝利の比率ではない。
「3本柱以外の先発の防御率は3.32」── 違う。3.32は3本柱以外の先発と救援をすべて合わせた数字。
「直接対決で8勝分上積みしたから優勝した」── 言いすぎ。+8.0は実際の勝敗を区分した帳尻で、因果の推定ではない。チーム全体で得失点差+84を作った強さが土台にある。
「交流戦が普通なら独走だった」── 反実仮想なので断定しない。実際の勝敗内訳で、交流戦の部分が阪神側−5.0だった、とまでが言えること。
「2026年は2025年より総合的に強くなった」── 単純には言えない。得点は増えたが失点も大きく増え、得失点差/試合は+1.01から+0.61へ縮小した。
「被本塁打の増加が失点増の原因」── 全原因とは断定できない。変化の大きかった項目の一つ。
19よくある疑問
結局、一番の強みは打撃?
巨人との差という意味では、打撃が最大だった。ただしチーム全体の強さは、得点と失点を合わせた得失点差+84で見る方が適切。「打撃だけで優勝した」とは言わない。
投手は巨人より弱かった?
WARの保存値では、巨人がわずかに上。一方、阪神は規定投球回以上の防御率1〜3位を独占し、実際の失点はリーグ最少。どの指標・比較軸で見るかで見え方が変わる。
防御率2位なのに最少失点なのはなぜ?
防御率は自責点ベースで、失点には非自責点も含むため一致しない。
優勝は巨人戦だけで決まった?
違う。チーム全体で得失点差+84を作る強さが土台。ただし最終2.5ゲーム差を対戦区分ごとに分けると、直接対決の+8.0が非常に大きかった。
3本柱が防御率1〜3位なのに、チーム防御率が2位なのは?
3人が投げたのは全投球回の約39.8%。残りの約6割も含めてチーム防御率になるため。
2026年は2025年より強かった?
単純には言えない。得点は増えたが失点も大きく増え、得失点差/試合は+1.01から+0.61へ縮小した。同じ優勝でも勝ち方が違う。
20動画・関連記事
文章では数字を整理しましたが、動画では阪神ファンと指標解説者の掛け合いで、「得点1位でも防御率1位でもないのに、なぜ優勝できたのか」を、データスライドで順番に追っています。
21SOURCES / 参照データ
- NPB公式:2026年度 セ・リーグ チーム打撃成績、2026年度 セ・リーグ チーム投手成績、2026年度 セ・リーグ 順位・対戦成績、2026年度 阪神 個人打撃成績、2026年度 阪神 個人投手成績、2025年度 セ・リーグ チーム打撃成績、2025年度 セ・リーグ チーム投手成績、2026年10月1日の試合結果。
- NPB BASEMENT(WAR・wRC+):トップ、打撃、算出ロジック(2026年10月2日07:02取得の保存値。NPB公式指標ではない)。
- 阪神タイガース公式:2026年セ・リーグ優勝特設サイト、2026年8月の試合日程・結果。
- 9月の月間成績(近本光司・中野拓夢):スポーツナビ(近本・中野)、Baseball Chronicle(近本・中野)。複数のソースで一致する9月の確定値を使用。
- 日刊スポーツ(報道):8/30 才木浩人の巨人戦連勝、同一球団3投手の2桁セーブ。
- 動画版:【阪神優勝】なぜ2026年は勝てた?得点2位・防御率2位なのに優勝した理由を数字で徹底解剖(本記事は、この動画のために作成した資料一式(作成日2026年10月4日)をもとに構成しています)。
※公式成績は2026年10月2日終了時点、WARは同日07:02取得の保存値です。阪神77勝59敗2分・巨人76勝63敗3分は優勝決定前日(10月2日終了時点)の成績で、シーズン最終成績ではありません。比率・1試合あたりの値・得点指数・ゲーム差の区分は、資料の数値から計算したものです。