【阪神3-1巨人】巨人3タテでM21!勝負ローテ19回1失点、中野攻守MVP、工藤4連投を徹底分析
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30秒で分かる3連戦
- 01阪神が巨人との首位攻防3連戦を3タテ、マジック21
8/28・4-1、8/29・4-1、8/30・3-1。カード前1.5差だったゲーム差を4.5まで広げた。
- 02村上・大竹・才木の3先発で19回1失点
巨人先発3人は11回2/3で9失点。差は投手陣の内容そのものに表れた。
- 033試合とも得点する場所が違った
第1戦は上位打線、第2戦は打線全体、第3戦は森下不在でも下位から。同じ勝ち方を一度もしていない。
- 04最後は工藤泰成が4日連続登板
藤川監督は「ジャイアンツとの対決は特別」という趣旨で起用意図を説明。球速は維持したが制球には課題も残った。
01先に結論――3タテは偶然の3勝ではない
阪神が、巨人との首位攻防3連戦を全部取った。8月28日4-1、29日4-1、30日3-1。カード前に1.5ゲーム差まで迫られていた2位巨人との差を4.5へ広げ、優勝マジックは「21」まで減った。
ここで終わらせず、まず数字を並べる。村上頌樹、大竹耕太郎、才木浩人の3先発は19回1失点。対する巨人先発3人は11回2/3で9失点。打線も、中日3連戦の30安打6得点から、巨人3連戦では24安打11得点へ増えた。しかも第1戦、第2戦、第3戦で得点する選手・順番・方法がすべて違った。そして最終戦の9回、藤川球児監督は工藤泰成を4日連続でマウンドへ送った。この3タテは、結果として3試合勝ったのではない。阪神が明確に取りにいき、そのために用意した勝負ローテ、打線の組み替え、終盤の投手運用がほぼすべて機能した3日間だった。
023連戦の流れ
- 8/28 第1戦4-1
村上頌樹7回1失点。上位1〜5番だけで4得点。直前35安打22得点の巨人打線を4安打1得点に抑える。
- 8/29 第2戦4-1
大竹耕太郎6回無失点。先発9人中8人が安打、打線全体で4得点。
- 8/30 3回裏3-0
森下不在でも髙寺→元山→才木→近本→中野とつないで3点。この試合の得点はここだけ。
- 8/30 9回表3-1
才木浩人6回無失点のあと工藤泰成が4日連続登板で締め、3タテ・マジック21。
読みどころ3試合合計は阪神11得点・巨人3得点。阪神は3試合とも先制し、一度もリードを許さなかった。
巨人が得点した時点のスコアは第1戦4-0、第2戦4-0、第3戦3-0。一度も接戦を自分たちの得点で動かせなかった。
3連戦合計は阪神11得点、巨人3得点。阪神は3試合すべて先制し、一度もリードを許さなかった。巨人が得点した時点のスコアは第1戦阪神4-0、第2戦阪神4-0、第3戦阪神3-0。つまり巨人は3日間、一度も「接戦を自分たちの得点で動かす」ことができなかった。
03カード前は巨人の方が勢いに乗っていた
阪神はこのカードに入る直前、中日3連戦で1勝2敗。30安打を放ちながら、得点はわずか6だった。打てないわけではない。近本光司、森下翔太、佐藤輝明らは塁に出ていた。問題は、その走者をホームへ返せないことだった。
一方の巨人はヤクルト3連戦を3タテ。3試合で35安打22得点、1試合平均では約11.7安打・約7.3得点。ゲーム差は1.5。しかも阪神は、巨人との直接対決全体では優位でも、今季の甲子園ではカード前3勝5敗だった。勢いだけを見れば、甲子園へ乗り込んできたのは巨人の方だった。
04カード前の3つの問いを答え合わせ
8月27日の中日戦終了時点で、見るべきポイントは明確だった。①村上頌樹が巨人打線の勢いを止められるか②阪神は「出した走者を返せない」問題を修正できるか③巨人戦へ合わせた先発ローテが本当に機能するか。3試合が終わった今、その答えはかなり鮮明に出た。
村上は7回1失点、その後大竹6回0、才木6回0と続いた。打線は中日戦30安打6得点から、巨人戦では24安打11得点へ。ローテ再編の結果は3先発19回1失点。予想が全部「的中した」という自慢話にする必要はない。重要なのは、カード前に何を見ればよいかという問いが明確だったからこそ、3試合後に何が変わったかを具体的に評価できることだ。
05勝負ローテは19回1失点
中日3連戦は8/25西勇輝2-4敗戦、8/26伊藤将司0-4敗戦、8/27下村海翔4-3勝利で1勝2敗。この結果だけなら「巨人戦へローテを寄せた影響はなかったのか」という疑問は当然生まれる。ただし「中日戦を捨てた」という書き方は避けたい。西勇輝は初戦で試合を作っており、26日は打線が7安打0得点で、村上なら絶対勝てたとは言えない。正確には、ローテ再編の結果、中日3連戦では1勝2敗となる短期的な痛みも出た。その後の直接対決では村上、大竹、才木が並び、最大級のリターンになった、とする方が実態に近い。
結論村上は走者を増やさず、大竹は打たせて守備でアウトを積み、才木は走者を出してもホームへ返さない。抑え方が三者三様だった。
巨人先発3人は1イニングあたり18球以上を要し、3人とも早期降板。阪神打線が投球コストを上げた結果という面もある。
村上は余計な走者を増やさない投球、大竹は打たせて守備でアウトを積む投球、才木は走者を出してもホームへ返さない投球。同じ「巨人に点を取らせない」でも方法が違う。球速帯、球種、打者へのアプローチが毎試合変わり、巨人打者からすれば対応方法を作り直す必要があった。この「三者三様」が、単純な防御率以上に今回のローテの面白さだ。
06村上が巨人の勢いを止めたのか
カード前の巨人はヤクルト3連戦35安打22得点3連勝、1試合平均では約11.7安打・約7.3得点。そこへ村上頌樹が8月28日、7回109球4安打5奪三振無四球1失点。巨人1〜3番は合計12打数0安打で、4番ダルベックの4打席はすべて走者なしだった。
ヤクルト3戦の35安打22点は、村上戦で4安打1点に落ち、その後の阪神3連戦合計でも16安打3点にとどまった。もちろん「村上が原因で巨人打線がその後も不調になった」という因果関係までは証明できない。球場も投手も違う。ただし、「巨人打線の得点出力は村上登板を境に急落し、大竹・才木がその後も再点火させなかった」という状況説明は数字で十分できる。「村上が巨人打線を壊した」ではなく「村上が初戦で巨人打線の勢いを持ち込ませず、大竹・才木もその流れを切らせなかった」くらいが正確だ。
07才木浩人、本調子でなくても6回無失点
才木は6回103球5安打2四球5奪三振0失点。本人はヒーローインタビューで「あまり良くなかった」という趣旨で振り返った。藤川監督は「尻上がりに良くなった」「坂本誠志郎がよく引っ張った」「100球を一つの目安にしていた」という趣旨を説明している。
直球平均速度は1回151.2km/h、2回150.0km/h、3回149.2km/h、4回148.2km/h、5回148.8km/h、6回147.7km/hと、1回から6回で平均3.5km/h低下した。ただし6回にも最速150.5km/hを記録している。「完全に球威がなくなった」のではなく、平均球速は低下したが、必要な場面では150km/h超を出せていた、と見る方が正確だ。
才木は巨人戦で自身11連勝。これは1962〜63年の中日・権藤博に並ぶ巨人戦最多11連勝で、権藤は先発8勝+救援3勝、才木は11勝すべて先発勝利。さらに阪神にとって巨人戦7連勝は、1937年秋以来89年ぶり2度目の球団タイ記録。「才木が巨人に強い」だけでなく、チーム全体の直接対決の強さまで歴史的水準になっている。
08小笠原は「3回だけ止められなかった」
小笠原慎之介は4回73球4安打1四球2奪三振3失点。イニング別球数は1回13球、2回13球、3回35球、4回12球で、3回だけ突出している。3回は打者8人で3失点だったが、他の3イニングは三者で終えるなど崩れ続けたわけではなく、4回は12球で立て直している。その後、0-3で追う5回表に小笠原の打順が回り、巨人は代打を選択した。だから「小笠原を完全KO」ではなく「3回の1イニングを止められず、追う展開で打順が回ったため4回で交代」の方が実態に近い。
試合前の2026年左右別被打率は対右打者.180、対左打者.315と、左腕ながら左打者にかなり打たれていた。阪神は近本、中野、佐藤、前川、髙寺、元山と左打者を大量に並べ、3回の3点にも髙寺・元山・近本・中野という左打者が絡んだ。ただし「藤川監督がこの左右別被打率を見て左を並べた」という本人コメントまでは確認できていない。左腕だから右打者を並べるという単純な打線ではなかったが、結果として今季左打者に苦しんでいた小笠原に対し、左打者を残した布陣が得点につながった、という整理が公平だ。
09森下不在でも「別ルート」で3点
この試合の得点は3回裏だけ。森下翔太が不在でも、下位から作った得点ルートは一つの物語になっている。
- 7番髙寺望夢が左前安打で出塁無死一塁。↓
- 8番元山飛優が四球で出塁無死一・二塁。↓
- 9番才木浩人が内野安打で無死満塁に送りバントが一塁もセーフになった形。↓
- 1番近本光司の打球で才木が二塁封殺(中ゴロ)、三塁走者が生還し1-0直後に近本が二盗し一死二・三塁を作り直す。↓
- 2番中野拓夢が2点適時打で3-0この試合の得点はこの3回だけだった。
才木の走塁でアウトを一つ失ったあと、近本がすぐ盗塁して二・三塁を作り直した。ミスを次のミスへ連鎖させなかった。
森下翔太が不在でも、代役を1人に頼らず複数人で得点ルートを作った。
前日8/29も中野が送りバントを2度ファウルにしたあと、進塁打で走者を進めている。今の阪神の強さは「ミスがない」より「ミスのあとに次のプレーを成立させる」という見方もできる。
10中野拓夢が今日のMVP
中野は4打数2安打2打点。3回、一死二・三塁から2点適時打を放ち、これだけでも大きい。しかし今日のMVPとしたい理由は7回にある。
中野拓夢
2点適時打と、一発同点を防いだ7回の好守
7回1死一塁、松本剛のセンターへ抜けそうな強いゴロを横っ飛びでバックハンド捕球し、二塁の元山へトスして一塁走者をフォースアウト。打球が抜けていれば1死一・二塁で次打者本塁打なら3-3の場面だった。
3連戦での役割は第1戦「四球で出る」→第2戦「走者を進める」→第3戦「自分が返す」と変化。前日8/29は自身の悪送球が失点の起点になったが、翌日に2点適時打と好守で取り返した。
本人はヒーローインタビューで今後も「つなぎ役」を務めたいという趣旨を語った。
その後、及川が浦田を三振に取り7回を無失点で終えた。前日は中野自身の悪送球から巨人の1点が始まっている。翌日に2点適時打+好守。「出る・進める・返す」を全部やった2番打者として扱える3連戦だった。
11森下の代役は1人ではなかった
森下は29日の死球で「左前腕部の打撲」と診断され、骨に異常なし。30日は登録抹消されずベンチスタート。藤川監督は森下の通常の役割である3番・右翼を、3番佐藤輝明、4番大山悠輔、5番前川右京、右翼髙寺望夢へ組み替えた。つまり「森下の代役を1人置いた」のではなく、森下の打順と守備位置を分解し、複数人で穴を埋めた。森下本人もベンチから声を出していたことに藤川監督が言及し、9回には右翼守備へ出場。本人は試合前「痛いが折れていなければ野球はできる」という趣旨で話していた。守備に出られたことは長期離脱への不安を小さくする材料だが、「守備に出られた=打撃も完全に通常通り」ではない。次戦でスイング、打球速度、患部の状態を確認したい。
30日の新3〜5番は、佐藤3打数0安打+死球、大山4打数1安打、前川4打数0安打で合計11打数1安打・打点0。結果だけ見れば新クリーンアップは機能していない。ただし打球データを見ると印象が変わる。佐藤は死球後の二ゴロが打球速度160.8km/h、大山は159.2km/h・155.1km/h・159.6km/hと強い打球を複数作り、前川も第1打席の中直が174.9km/h、3打席目の中飛も154.7km/h。「新3〜5番は結果として得点を作れなかった」と「打撃内容が完全に悪かった」は別だ。
30日、佐藤も死球を受けた。前日は森下が死球を受けており、連日の主軸への死球だけに心配は大きいが、故意と見る材料はなくプレーは続行。死球後の打席で160.8km/hの二ゴロを打っており、「死球後に力が入らなくなった」ではなく「少なくとも死球後にも160km/h超の打球を作れている」がデータ上の整理だ。その後は空振り三振もあるが、相手投手のフォークと150km/h前後の高め直球の組み立ても良かった。現時点で「佐藤に明確な異変がある」とは言えないが、次戦の患部状態は必ず確認したい。
12同じ勝ち方を一度もしていない
| 試合 | 安打・得点 | 得点した打順 |
|---|---|---|
| 第1戦(8/28) | 7安打4得点 | 1〜5番だけで完結、6番以下無安打 |
| 第2戦(8/29) | 10安打4得点 | 先発9人中8人が安打、唯一の髙寺も敬遠で出塁 |
| 第3戦(8/30) | 7安打3得点 | 森下不在、7番髙寺から1・2番へつないで3点 |
第2戦は先発9人中8人が安打を記録し、唯一ノーヒットの髙寺も申告敬遠で出塁した。髙寺を敬遠すれば坂本が先制適時打、佐藤を敬遠すれば大山が適時打。つまり第1戦=上位、第2戦=打線全体、第3戦=森下不在で下位から、と得点する場所が毎日変わった。「同じ勝ち方を一度もしていない」というのが今回の3タテの特徴だ。
3連戦11得点の打点は大山悠輔4、近本光司2、中野拓夢2、佐藤輝明1、坂本誠志郎1、元山飛優1の6人に分散した。シリーズ最初の得点は第1戦1回の近本先頭打者ホームランで、そこから残り10得点はすべてホームラン以外。タイムリー、犠牲フライ、内野安打、野選、ゴロ、盗塁などを組み合わせている。森下+佐藤の打点は3連戦合計わずか1。それでも11得点。スター2人が打点を挙げなくても、得点経路が消えなかったことが重要だ。
13巨人打線は毎日違う場所で切れた
巨人を単に「貧打だった」で終わらせない。第1戦は1〜3番が12打数0安打でダルベックの4打席はすべて走者なし。第2戦は3〜6番が16打数1安打で中軸が機能しなかった。最初の2試合合計では18イニング8安打2得点、長打0。第3戦は8安打を放ち、丸がこの3連戦で巨人初の長打となる二塁打を記録したが、才木が6回までホームへ返さず、最終的に8安打1得点にとどまった。
第1戦=上位が出ない、第2戦=中軸が返せない、第3戦=走者は出ても得点圏から返せない、と毎日違う形で機能しなかった。阪神は「誰が返すか」が変わり、巨人は「どこで切れるか」が変わった。この対比が今回の3タテの構造をよく表している。
1489年ぶり、巨人戦7連勝
| 日付 | スコア |
|---|---|
| 7/26 | 阪神1-0巨人 |
| 8/11 | 阪神9-1巨人 |
| 8/12 | 阪神5-1巨人 |
| 8/13 | 阪神3-2巨人 |
| 8/28 | 阪神4-1巨人 |
| 8/29 | 阪神4-1巨人 |
| 8/30 | 阪神3-1巨人 |
| 合計 | 阪神29-7巨人 |
巨人の1試合平均得点は1.00。7試合すべて巨人を2得点以下に抑えている。阪神の巨人戦7連勝は1937年秋以来89年ぶり、球団2度目のタイ記録で、2リーグ制後では初となる。「今回の3試合だけ巨人打線が悪かった」だけでは説明しにくい。少なくとも直近の直接対決では、阪神が継続的に巨人打線を低得点へ抑えている。
15巨人も勝負手を切っていた
1イニングあたりの投球数は、阪神先発が村上約15.6球、大竹約11.8球、才木約17.2球だったのに対し、巨人先発はハワード約21.3球、田中将大約19.3球、小笠原約18.3球と、3人とも1イニング18球以上を要した。「巨人ベンチが先発を我慢できなかった」だけで説明せず、阪神打線が走者を出し打席数を増やし投球コストを上げた結果、ベンチに早い判断を迫った面がある、と見た方が公平だ。
巨人側も普通の8月の戦い方ではなかった。第1戦は先発可能な西舘勇陽を早い回から投入。第2戦は直前まで先発していた則本昂大を救援投入した。則本は2024年に32セーブを挙げており救援経験も豊富。第3戦は小笠原を4回で切り、0-3で追う5回に代打を送った。つまり「巨人は何もしなかった」のではなく、巨人も短期決戦のように早めに勝負手を切った。それでも阪神投手陣から点が取れず、追いつけなかった。この3タテは巨人の無策だけで説明するより、「巨人も動いたが、阪神がその都度別の答えを出した」とする方が公平だ。
16工藤泰成、4日連続登板
最後は工藤泰成。8月27日16球、28日9球、29日13球、30日25球で4日間合計63球。30日は1回25球2安打2四球1奪三振1失点で8セーブ目。藤川監督は4日連続登板の意図について、「ジャイアンツとの対決は特別」という趣旨を明言し、この大きな試合に出られること、そのための練習量を積んでいることにも言及した。これで「阪神は今回の巨人3連戦を特別なカードとして扱っていた」ことは、単なる外部の推測だけではなく、監督自身の発言でも補強された。今回の3タテは「3勝できた」だけでなく「3勝を取りにいった」という見方が成立する。
| 日付 | 球数 | 内容 |
|---|---|---|
| 8/27 | 16球 | ― |
| 8/28 | 9球 | ― |
| 8/29 | 13球 | ― |
| 8/30 | 25球 | 2安打2四球1失点、8セーブ目 |
| 4日間合計 | 63球 | 直球平均160.4km/h・最速161.6km/h |
球速という出力は高水準を維持した一方、8/30は坂本勇人へ0-2から追い込みながら四球を与えるなど制球に課題も残った。4連投との因果は断定せず、次回登板でボール率・四球・決め球を確認する。
公開記録で確認できる直近の阪神4日連続登板例としては、2019年5月21〜24日のラファエル・ドリスがある。当時の日刊スポーツも21日から4連投だったことを報じており、「公開記録で確認できる範囲では、阪神では2019年以来7年ぶりの4日連続登板」という整理が可能だ。
30日のフォーシーム9球は平均160.4km/h、最速161.6km/h。「4連投だから球速が落ちた」という事実は確認できず、むしろ球速という出力そのものは高水準を維持した。本人は「少し疲れがあった」という趣旨をヒーローインタビューで話している。疲労感は本人にあるが球速は落ちていない。疲労=必ず球速低下とは限らないことを示す一例としては興味深い。
気になるのは制球だった。工藤の9回は25球2安打2四球1失点。特に象徴的なのが坂本勇人への四球で、0ボール2ストライクまで追い込みながら160km/h台の直球を投げつつ、最後は四球に終わった。球速は出ているが、ゾーンへ集め切れなかった。ただし「4連投の疲労が原因で制球が乱れた」とは今日1試合だけで断定できない。投手は通常登板でも四球を出す。次回登板でフォーシーム平均球速・最速・ボール率・四球数・2ストライク後の決め球・フォークとカットの制球・リリースポイントの安定感を見ていく。
さらに深掘り:4連投の危険性、研究からどこまで言えるか
「酷使だ」と感情だけで断定しない
ここは「酷使だ」と感情だけで断定せず、同時に「球数が少ないから何の問題もない」とも言わない。直接言えないことは3つある。①4連投すれば故障する②工藤の2四球は疲労が原因③高校野球の数字をNPB投手へそのまま当てはめる。これらは言えない。
2026年に発表された米国高校野球の大規模傷害研究(Kriz et al., Orthopaedic Journal of Sports Medicine, 2026)は、約155万athlete-exposures、肩・肘障害295件を対象に、連日の投球を制限する休養ルールがある環境では肩・肘障害の発生率比IRRが0.32(競技時は0.30)と報告している。ただし対象は高校生であり、工藤へそのまま当てはめない。MLBのUCL損傷を調べた別の研究(Chalmers et al.)では、負傷前2週間に普段より投球回や対戦打者数が増えていたこととUCL損傷の関連が報告されているが、これも「4連投の危険性を直接証明した研究」ではない。
最も安全な結論は、「4連投=故障と断定できない。一方で短期間の投球負荷を無視してよいとも言えない。本人も疲労を感じていたため、次回登板を継続して見る」となる。
17マジック21以上に大きい「直接対決の消費」
カード前1.5ゲーム差が、カード後4.5ゲーム差になり、優勝マジックは21。もちろん大きい。ただし優勝争いでさらに重要なのは、巨人が阪神を直接叩いて差を縮められる試合を、この3連戦で3つ消費したことだ。29日の第2戦終了時点で巨人の自力優勝は消滅しており、30日も阪神が勝利したことで直接対決の残りはさらに減った。追う側の巨人にとって、直接阪神を叩ける機会が少なくなったことは、単純なゲーム差以上に重い。
才木は日曜日の巨人戦に相性が良く今回も勝利、阪神は日曜日の連勝をさらに伸ばした。藤川監督は8月を貯金7で終えたことについて「いい8月だった」という趣旨で評価し、「近本が帰ってきてからよくなった」「中野の細やかなプレー」などにも触れている。
189月へ向けて見るべきこと
森下翔太は打撃復帰と左前腕部への影響、佐藤輝明は死球後の患部と打球速度、工藤泰成は4連投後の次回登板で球速ではなく制球を確認したい。中野拓夢が「つなぎ役」として好調を維持できるか、髙寺望夢は森下不在時の右翼だけでなく下位打線の起点として機能するか。才木浩人は巨人戦11連勝後の次登板で本人が課題とした投球内容を修正できるか。高橋遥人は9月最初の先発予定で、藤川監督は中8日での登板に言及している。阪神打線は中日戦で苦しんだ得点効率改善が巨人戦だけでなく続くか、近本光司は藤川監督が「戻ってきてから良くなった」と評価しており、復帰後のチーム成績は別途検証できるテーマだ。
19評価の限界
「3タテしたから全部采配成功なのでは?」── 違う。結果は最高だが、工藤4連投は今後への負荷が残る。短期的な成功と長期的な運用評価は分けたい。
「ローテを巨人戦へ寄せたから中日戦で負けたのでは?」── 断定できない。西は試合を作っており、26日は打線が7安打0点。村上を投げさせていれば勝ったとは言えない。「中日戦1勝2敗という短期的な痛みはあったが、直接対決で19回1失点というリターンが出た」程度にとどめたい。
「村上が巨人打線の勢いを止めた」── 因果関係までは証明できない。ヤクルト戦と阪神戦では球場も対戦投手も違う。ただ、35安打22点→村上戦4安打1点→3連戦16安打3点という変化は事実。
「小笠原を完全攻略した」── 言いすぎ。3回35球3失点が大きく、それ以外は比較的抑えられていた。
「新クリーンアップは失敗」── 11打数1安打0打点という結果だけなら不発。ただし佐藤160.8km/h、大山複数155km/h超、前川174.9km/hと、内容まで悪いわけではない。
「工藤は160km/h出ているから4連投でも大丈夫」── これも危険。本人は疲労感を認めており、球速以外の制球や再現性も見る必要がある。
20動画・関連記事
阪神3-1巨人。首位攻防3連戦を3タテし、優勝マジックは21になった。数字だけでも十分大きな3日間だったが、中身を見るとさらに面白い。村上・大竹・才木の3先発は19回1失点、巨人先発3人は11回2/3で9失点。打線は毎日違う場所から得点を作り、森下不在でも下位から3点をひねり出した。中野拓夢は2点適時打と一発同点を防いだ7回の好守でMVP級の活躍。そして最後は工藤泰成の4日連続登板。藤川監督は「ジャイアンツとの対決は特別」という趣旨で起用意図を説明した。3タテで終わりではない。次に見るべきは、その勝負の反動が残っていないか。そしてマジック21から始まる9月の戦いだ。
21SOURCES / 参照データ
- NPB公式:npb.jp(ボックススコアおよび公式記録、当方集計の元データ)。
- 阪神タイガース公式:hanshintigers.jp。
- 試合後コメント・報道:日刊スポーツ(工藤泰成4連投の意図、森下翔太の診断、才木浩人巨人戦11連勝・89年ぶり7連勝、マジック21、選手ヒーローインタビュー、2019年ドリス4連投、佐藤輝明死球)、デイリースポーツ(藤川監督試合後会見)。
- 投球負荷に関する研究:Kriz et al., Orthopaedic Journal of Sports Medicine, 2026, DOI: 10.1177/23259671251412404/Chalmers et al.(MLBのUCL損傷とワークロードに関する研究)。
- 動画版:阪神3-1巨人 首位攻防3連戦3タテを徹底分析(本記事の分析軸の出典)。
※本記事の数値は2026年8月30日試合終了時点のスナップショットです。1イニングあたり投球数・OPS等一部の集計値は公式記録をもとにした当方集計です。