阪神タイガース / CSファイナル / 戦力分析

【2026年CSファイナル】阪神vs DeNAを数字で徹底解剖|7.5ゲーム差なのに直接対決「99対98」

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シーズンのゲーム差
7.5
打率.246・125本塁打は同じ
直接対決の総得点
99対98
25試合で阪神13勝12敗
CSのアドバンテージ
阪神1勝
最大6試合制
30 SEC REVIEW

30秒で分かる、CSファイナル阪神vs DeNA

  1. 01
    打率も本塁打も同じ、それでも7.5ゲーム差

    打率は.246同士、本塁打は125本同士。得点はDeNAが39点多いが、失点は阪神が73点少なく、得失点差は阪神+79、DeNA+45だった。

  2. 02
    DeNAの後半は本物の復活

    6月までの27勝42敗2分から、7月以降は44勝27敗1分。1試合あたりの得失点差の改善は、得点増より失点減の方が大きかった。

  3. 03
    直接対決25試合は「99対98」

    阪神13勝12敗で、総得点の差はわずか1点。1点差決着は10試合、甲子園の10試合も5勝5敗だった。

  4. 04
    第1戦は村上頌樹vs平良拳太郎

    互いの打線に対する防御率はともに1点台。ただし平良は阪神から9回換算で約11.1個の三振を奪っていた。

  5. 05
    1勝アドバンテージは制度として大きい

    毎試合五分・引き分けなし・各試合独立という仮定の当ラボ推定では、阪神の突破率は65.6%。予測ではなく、ルール上の利を示す計算例。

この記事の数字について

2026年10月13日夜、CSファイナル第1戦(10月14日)の開始前の時点でまとめています。第1戦以降の結果は含みません。数字は出どころで性質が違うため、NPB公式の記録、NPB公式の各試合結果を当ラボでまとめ直した当ラボ集計、NPB BASEMENTの保存データをもとにした独自集計(wRAAなど)、勝率を仮に置いた当ラボ推定のシナリオを本文で区別して書きます。当ラボ推定の勝率は「毎試合五分・引き分けなし・各試合独立」という仮定での計算例で、結果の予測ではありません。

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いよいよ2026年10月14日、甲子園でクライマックスシリーズ・ファイナルステージが始まる。

リーグ王者・阪神タイガース。対するのは、巨人を2連勝で退けて勝ち上がった横浜DeNAベイスターズ。阪神にはリーグ優勝の1勝アドバンテージがあり、シーズンのゲーム差は7.5。普通に考えれば阪神が有利だ。

ところが、両チームの成績を同じ物差しに乗せると、奇妙な数字が並ぶ。チーム打率は阪神.246、DeNA.246。本塁打は阪神125本、DeNA125本。さらに総得点は阪神518点に対し、DeNA557点。得点が39点も多いのは、むしろDeNAなのだ。それなのに、勝利数は阪神79勝、DeNA71勝。

なぜ、こうなったのか。そして巨人を倒して勢いに乗るDeNAを、阪神は甲子園で止められるのか。この記事では、NPB公式の2026年最終成績、阪神とDeNAの直接対決25試合、DeNAの前後半の攻守データ、10月10〜11日のCSファーストステージを突き合わせ、数字の奥にある「戦い方の違い」に迫る。

動画では阪神ファン・DeNAファン・指標解説者の3人で議論した。こちらの記事では、動画で紹介した数字の意味と検証方法まで詳しく解説する。動画はこちら(YouTube)。

01同じ打率・同じ125本塁打。それでも7.5ゲーム差

まずは、2026年レギュラーシーズンのチーム成績を並べる。

2026年・セ・リーグ公式戦の年間比較(NPB公式)
指標阪神DeNA
試合143143
勝敗79勝62敗2分71勝69敗3分
勝率.560.507
ゲーム差―7.5
打率.246.246
本塁打125125
得点518557
失点439512
得失点差+79+45
チーム防御率2.793.27

※打率の.246はNPBの小数第3位表示。小数第4位まで見ると阪神.2459、DeNA.2462で、完全に同じ数字ではない。

普通なら「得点の多いチームの方が勝っている」と想像したくなる。だが、この2球団では反対だった。理由を探すなら、次に見るべきは失点だ。

図1 | 年間の得点・失点・得失点差、阪神とDeNA(NPB公式)
0 150 300 450 600 518 557 439 512 +79 +45 得点 DeNAが39点多い 失点 阪神が73点少ない 得失点差 阪神が34点上
阪神 DeNA

※NPB公式の2026年最終成績。単位は点。得点はDeNAが上でも、失点の差がそれより大きい。

阪神の失点439に対し、DeNAは512。差は73点。阪神はDeNAより39点少なく得点したが、失点は73点も少なかった。得失点差にすると、阪神+79、DeNA+45。差し引き34点で阪神が上回る。ここに阪神の強さを理解する大きな手掛かりがある。

ただし「34点差だから8勝差になった」と単純な換算はできない。1点差でも10点差でも、勝てば勝ち星は一つ。何点を取ったかだけでなく、どの試合で点を取ったか、いつ失点したかも結果を左右する。

発見①

打撃指標の見た目が似ていても、年間の勝ち方まで同じではない。阪神の失点の少なさは、7.5ゲーム差を理解するうえで見逃せない材料だった。

02同じ.246でも、攻撃の「作り方」が違う

打線をもう少し細かく見ると、両球団の特徴はむしろ正反対に近い。

攻撃の内訳(NPB公式)
指標阪神DeNA差・特徴
四球447389阪神+58
出塁率.317.310阪神が上
盗塁7550阪神+25
犠打10866阪神+42
二塁打190228DeNA+38
長打率.369.374DeNAが上
本塁打125125同数

阪神は四球を多く選び、走者をためて、進める攻撃が目立つ。DeNAは二塁打が38本多く、同じ本塁打数でも二塁打を含めた長打力に特徴がある。

もちろん「犠打が多い=得点効率が高い」「四球が多い=必ず勝てる」という意味ではない。しかし、打率と本塁打が同じでも、走者を出す方法も進める方法も違うことは分かる。

打撃貢献の「集まり方」も違う

さらに、打撃の得点貢献を評価するwRAAを、NPB BASEMENTの保存データから当ラボで独自に再集計した。wRAAは、平均的な打者と比べて打撃がどれだけ得点を増やす方向に働いたかを示す指標で、守備や走塁まで含む選手の総合価値ではない。

プラスの打撃貢献が確認された選手に限ると、阪神は上位3人でそのプラス貢献合計の約91%を占める。一方のDeNAは約68%。100打席以上かつ打撃貢献がプラスの選手は、阪神5人、DeNA8人だった。

これは阪神のほかの打者に価値がない、という話ではない。阪神には佐藤輝明・森下翔太・大山悠輔という強力な主軸があり、DeNAは牧秀悟・筒香嘉智らを中心に、プラス貢献が複数の選手に分散していた。打線の「形」の違いだ。近本光司の守備・走塁などは、この打撃指標に含まれない。

相手の主軸をどう止めるか。主軸を抑えられた時、後続がどう点を取るか。短期決戦では、この違いも興味深い。

036月30日の悪夢から、DeNAはどう復活したのか

2026年6月30日。DeNAは広島に4−7で敗れた。リードして迎えた9回に5失点。勝てると思った試合を失い、6月は4勝15敗で終わった。この時点のDeNAを見て、CSで阪神に挑む姿を想像できただろうか。

ところが、7月に入ると成績は一変する。

DeNAの前後半比較(当ラボ集計)
項目6月まで7月以降
試合数7172
勝敗27勝42敗2分44勝27敗1分
勝率(引分除外).391.620
得点250307
失点291221
得失点差−41+86
打撃本塁打4184
被本塁打5845

後半44勝27敗1分。この復活は、見かけの連勝だけではない。得失点差がマイナス41からプラス86へ変わっている。攻撃だけでなく、失点面でもチームの姿が変わったのだ。では、得点が増えた効果と失点が減った効果は、どちらが大きいのか。

復活を分解すると、「失点減」がより大きかった

71試合と72試合を総得点だけで比べると、試合数が違う。そこで1試合あたりにそろえる。

図2 | DeNAの1試合平均の得点と失点、6月までと7月以降(当ラボ集計)
0 1 2 3 4 5 3.52 4.10 4.26 3.07 6月まで(71試合) 27勝42敗2分 7月以降(72試合) 44勝27敗1分
1試合平均得点 1試合平均失点

※当ラボ集計(NPB公式の各試合結果から算出)。1試合平均の得失点差は−0.58から+1.19へ、約1.77点の改善。

得失点差は1試合あたり約1.77点改善した。その内訳は、得点増が約0.74点、失点減が約1.03点。算術上の割合にすると、得点増が約42%、失点減が約58%になる。

「打線が目覚めたから勝ち始めた」だけでは、説明が足りない。得失点差の改善幅では、失点を減らした側の変化が大きかった。

ここで注意したいのは、これは勝率改善の原因を42:58で特定したという意味ではないこと。得点と失点の合計を1試合あたりに換算した、算術的な分解である。それでも、何を調べるべきかは明確になった。DeNAの後半の変化は、「打線」と「投手・守備」の両側から追わなければならない。

自分たちの本塁打は倍増、相手の本塁打は減少

攻撃では、実に鮮明な変化があった。DeNAの本塁打は、6月まで71試合で41本、7月以降72試合で84本。1試合平均は0.58本から1.17本へ、約2.02倍になった。しかも、投手陣の被本塁打は58本から45本に減っていた。

自分たちは一発で点を奪いやすくなり、相手には一発を許しにくくなった。この「本塁打の非対称性」は、後半の強さを説明する重要な観測結果の一つだ。

打撃では牧と筒香の変化が目立つ。NPB BASEMENTの累積打撃指標を、6月末の試合まで反映した7月2日付と、シーズン末の10月8日付で比べると、牧のwRAA差分は+28.6、筒香は+20.7。筒香は6月末時点で累積wRAAがほぼゼロだったところから、最終時点では約+20.6まで伸びた。「名前のある強打者がそろっている」だけでなく、シーズン途中から実際に打撃貢献が大きく伸びたことが確認できる。

ただし、この値は二時点の累積指標の差だ。NPB公式の期間別WARでも、打者本人の因果的な成長幅でもない。数字の性質は区別しておきたい。

04なぜ失点が減った? 三振と四球の数字はむしろ逆だった

後半に失点が減ったのなら、三振が増え、四球が減ったのだろうか。そう考えたくなるが、実際の数字は違う。

DeNA投手陣の前後半(当ラボ集計)
項目6月まで7月以降
奪三振591581
与四球205241
被本塁打5845
K−BB%約14.41%約12.49%
失点/試合4.103.07

※K−BB%は、対戦打者を分母にした奪三振の割合から四球の割合を引いた値。

K−BB%は、投手が打者を三振で抑え、不要な四球を避けられているかを見る物差しの一つ。この値は後半に低下している。なのに失点は減っている。

つまり、DeNAの復活を「投手が前より三振を多く取るようになった」だけで説明すると、データと逆方向になってしまう。では、何が変わったのか。

被本塁打の減少と、投手起用の組み替え

まず、被本塁打の減少。加えて、投手起用の構成そのものが変わった。

平良拳太郎の9投球回あたりの失点は、前半4.80から後半2.49へ。伊勢大夢は4.08から2.40へ。浜地真澄は前半に一軍登板がなく、後半に32回2/3を投げて6失点、9回あたりの失点は1.65だった。

反対に、全員が改善したわけではない。中川虎大の失点率は後半に悪化し、前半に失点が重なった一部の投手は登板機会を減らしている。

ここから見えてくるのは、「投手全員が突然別人のように良くなった」という物語ではない。内容が改善した投手、新しく戦力になった投手、起用が減った投手。その組み合わせと、被本塁打・打球結果の変化が重なったのだ。

なお、ゴロの割合や、インプレーの打球がアウトになる割合の改善も独自データで観測されている。ただし、守備・投手の能力・相手打線・運を切り分けるには限界がある。「守備が良くなったから失点が70点減った」と因果を断定することはできない。

さらに深掘り:DeNA主要投手の前後半(9回あたりの失点)

当ラボ集計。単位は9投球回あたりの「失点」で、防御率ではない。

DeNA主要投手の前後半(当ラボ集計)
投手6月まで 投球回・失点7月以降 投球回・失点失点率 前→後
東克樹83回1/3・2778回・232.92→2.65
平良拳太郎45回・2461回1/3・174.80→2.49
石田裕太郎78回・2842回2/3・133.23→2.74
伊勢大夢17回2/3・830回・84.08→2.40
浜地真澄登板なし32回2/3・6―→1.65
片山皓心2回2/3・741回2/3・723.63→1.51
レイノルズ31回・631回1/3・61.74→1.72
中川虎大24回2/3・423回・101.46→3.91
尾形崇斗19回2/3・768回・273.20→3.57
篠木健太郎34回・1737回2/3・204.50→4.78
入江大生30回・25登板なし7.50→―
山﨑康晃20回2/3・130回・2失点5.66→算定不可

※この12人は投手全員ではない。片山の前半は2回2/3と極めて少ない。受け継いだ走者の失点の扱いもあり、「失点率が下がった分が、そのままチームの失点減になった」とは言えない。

05「弱い相手が増えただけ」という反論も検証する

後半44勝という数字には、一つの反論がある。「強い相手との対戦が少なかっただけでは?」

これを確かめるため、交流戦を除くセ・リーグ同士の対戦に絞り、相手球団のシーズン通年勝率を試合数で重みづけした(当ラボ集計)。すると、6月までの対戦相手の加重平均勝率は約.477、7月以降は約.482。後半の相手が明確に弱かったという数字にはならなかった。後半のDeNAは巨人にも10勝5敗と勝ち越している。

ただし、相手球団の通年勝率を使った簡易的な比較で、当日の先発投手や負傷者、球場の条件までそろえたものではない。これだけで「対戦相手の影響はゼロ」とは言えない。それでも、復活のすべてを「相手に恵まれたから」と片付けるのは難しい。

ここまでは、DeNAが復活した理由を見てきた。では、その強いDeNAが阪神と戦うとどうだったのか。

06覚醒したDeNA、それでも阪神には7勝8敗。25試合は「99対98」

7月以降のDeNAは、阪神以外との対戦で37勝19敗1分。引き分けを除いた勝率は.661。ところが阪神相手には7勝8敗、勝率.467だった。

これは「阪神がDeNAを完璧に封じ込めた」ということではない。負け越しはわずか1試合。むしろ、驚異的な復活を遂げたDeNAと阪神が、最後まで互角に近い勝負をしていた証拠でもある。

実際に、レギュラーシーズンの直接対決25試合を全部足すと、さらに意外な数字になる。

  • 阪神13勝12敗
  • 阪神の総得点99、DeNAの総得点98
  • 1点差決着は25試合中10試合

25試合戦って、得点差はたったの1点。年間7.5ゲーム差という順位表の数字だけでは、このカードの接戦ぶりを十分に説明できない。

発見②

レギュラーシーズン全体では阪神が上。ただし、直接対決を積み上げると、99対98というほぼ互角のスコアが現れた。

さらに深掘り:直接対決25試合の全スコア

NPB公式の各試合結果をもとにした当ラボ集計。スコアは阪神から見た表記、○は阪神の勝ち、●は阪神の負け。

2026年 阪神vs DeNA 直接対決25試合
No.日付球場スコア(阪神−DeNA)勝敗本塁打 阪神/DeNA1点差公式記録
013/31京セラD大阪4−1○0/1NPB
024/1京セラD大阪1−4●1/1NPB
034/2京セラD大阪4−3○0/0◆NPB
044/21横浜9−16●0/1NPB
054/22横浜6−7●2/1◆NPB
065/8甲子園1−10●1/1NPB
075/9甲子園1−3●0/0NPB
085/10甲子園3−0○1/0NPB
096/19横浜11−3○4/1NPB
106/21横浜2−1○0/0◆NPB
117/20甲子園0−7●0/2NPB
127/21甲子園2−1○0/1◆NPB
137/22甲子園5−4○0/1◆NPB
148/4横浜0−1●0/0◆NPB
158/5横浜7−11●2/2NPB
168/6横浜10−5○1/2NPB
178/21横浜4−1○3/1NPB
188/23横浜5−3○1/1NPB
199/5甲子園2−3●1/1◆NPB
209/6甲子園1−4●1/0NPB
219/20甲子園8−1○1/1NPB
229/21甲子園3−2○1/0◆NPB
239/25横浜1−2●1/1◆NPB
249/26横浜8−3○2/0NPB
2510/4横浜1−2●0/0◆NPB

※◆は1点差決着。合計は阪神13勝12敗、阪神99点−DeNA98点、1点差試合10。本塁打の合計は阪神23本、DeNA19本で、本塁打の数だけで勝敗は決まっていない。

07甲子園だから阪神が圧倒できる? 過去の10試合は5勝5敗

CSファイナルは甲子園。ホームの環境や大観衆は、阪神にとって心強い。しかし、2026年の甲子園での両軍の直接対決だけを見ると、阪神は5勝5敗だった。

DETAIL DATA球場別の直接対決(2026年レギュラーシーズン)
球場試合阪神勝−DeNA勝得点 阪神−DeNA本塁打 阪神−DeNA
甲子園105−526−356−7
横浜126−664−5516−10
京セラD大阪32−19−81−2
合計2513−1299−9823−19

NPB公式の各試合結果を当ラボで集計。京セラドーム大阪の3試合は阪神主催だが、甲子園の10試合には含めていない。

一般論として、甲子園は本塁打が出にくい球場だ。ところが2026年の両軍の直接対決では、DeNAは甲子園の10試合で7本塁打。阪神の6本より多い。とりわけ牧秀悟は今季の阪神戦で6本塁打、そのうち3本が甲子園だった。

だから「甲子園だからDeNAの一発は消える」という楽観論は危険である。一方、甲子園の10試合だけで球場の長期的な効果を否定するのも誤りだ。球場全体の傾向と、特定のカードの少ない試合数は、別の問いだからだ。

08DeNAの阪神戦、本塁打は約1.44倍、得点への依存度はほぼ2倍

DeNAの後半の本塁打ペースは、チーム全体で約2.02倍だった。では、阪神戦でも2倍に増えたのか。6月までは10試合で6本、1試合0.60本。7月以降は15試合で13本、1試合0.87本。約1.44倍の増加で、チーム全体と同じ2倍ではなかった。

しかし、より重要なのは、本塁打によって奪った得点の割合だ。

DeNAの対阪神・前後半(当ラボ集計)
項目6月まで7月以降
試合数1015
総得点4850
本塁打6本13本
本塁打による得点9点18点
総得点に占める割合18.8%36.0%

後半の阪神戦では、総得点そのものが大きく増えたわけではない。しかし、本塁打で取った得点の割合は18.8%から36.0%に上がった。一発がすべてではない。それでも、一振りで試合が動く危険性が増したことは確かだ。

大敗の翌日から、接戦を2つ拾った

実例が7月の甲子園3連戦だ。

FLOW7月の甲子園3連戦、一発で大敗しても接戦を拾った
  1. 7/20
    阪神0-7DeNA

    宮下朝陽のソロとエンカーナシオンの3ランを含む2本塁打で、DeNAが大勝。

  2. 7/21
    阪神2-1DeNA

    牧秀悟に本塁打を許しながら、1点差で勝ち切った。

  3. 7/22
    阪神5-4DeNA

    6回終了時4−2から7回に追いつかれ、8回に勝ち越し。この試合も牧に本塁打を許していた。

読みどころ本塁打を1本も許さないことだけが阪神の勝ち筋ではない。失点の幅を抑え、次の1点を奪い返す力も問われる。

スコアは阪神から見た表記。NPB公式の試合結果より。

7月20日、DeNAは宮下朝陽のソロとエンカーナシオンの3ランを含め、阪神に7−0で勝った。それでも阪神は翌21日に2−1、22日にも5−4で勝利。しかも21日、22日とも牧に本塁打を許しながら勝っている。

つまり、「本塁打を1本も許さないこと」だけが阪神の勝ち筋ではない。失点の幅を抑え、次の1点を奪い返す力も問われる。

さらに深掘り:DeNAの対阪神19本塁打、打者別の内訳
DeNAの対阪神本塁打・打者別(当ラボ集計)
打者6月まで7月以降計うち甲子園本塁打による得点
牧秀悟15637
宮﨑敏郎31417
筒香嘉智12314
宮下朝陽03314
エンカーナシオン02214
佐野恵太10101
度会隆輝00000
合計61319727

※「本塁打による得点」には、本塁打で生還した走者の得点も含む。

もう一つ、逆向きの数字もある。DeNAが阪神戦で本塁打を打った16試合の成績は8勝8敗、本塁打が出なかった9試合は4勝5敗。「一発が出れば必ず勝つ」という法則は成り立たない。本塁打がどの場面で出たか、走者は何人いたか、投手が何点に抑えたかを、別々に考える必要がある。

09巨人を倒したDeNAの強さは、一発だけではない

10月10日と11日のCSファーストステージ。DeNAは巨人に2連勝した。

  • 第1戦(10月10日)DeNA2−1巨人:1−1の9回、度会隆輝が勝ち越しソロ。
  • 第2戦(10月11日)DeNA4−1巨人:度会が先頭打者本塁打、牧秀悟も2戦連続本塁打。

2試合のDeNAは計6得点。そのうち4得点を、4本のソロ本塁打で奪っている。しかし、打線全体が連日つながっていたわけではない。2試合のチーム打率は.210、四球は0。本塁打以外の得点もあり、得点を効率よく積み重ねた。

見逃せないのが投手陣だ。DeNA投手陣の2試合合計は18回2失点。救援陣は計6回を無失点でつないだ。打撃の一発と、投手の失点抑制。この両輪で巨人を退けたのである。

CSファーストステージで2試合続けて本塁打を放った度会は、実は今季の阪神戦25試合では本塁打0本だった。過去の打者別の相性が、そのまま翌日の結果を決めるわけではない、という好例だ。度会の2026年については、度会隆輝を分析した記事で詳しく扱っている。

ただし、2試合だけで「DeNAの全打者が絶好調」「東京ドームと同じ本塁打ペースが甲子園でも続く」と断定することもできない。

10終盤の投手と、直接対決の7回以降

DeNAのレイノルズは、2026年レギュラーシーズンに62回1/3を投げて防御率1.59、82奪三振。CSファーストステージでも終盤を任された。

しかし、阪神にも工藤泰成がいる。工藤は60回で80奪三振、防御率1.05、被本塁打0本。阪神の終盤を支えた大きな戦力だ。二人の成績を眺めるだけでは「どちらが次に失点するか」は分からない。それでも、終盤の戦力を比べるうえで十分に強い実績がある。

なお、2026年の直接対決25試合で7回以降の得点を集計すると、阪神28点、DeNA41点だった(当ラボ集計)。一見すると、阪神は終盤に押されているように見える。

だが時期を分けると、6月までは阪神10対DeNA24。7月以降は阪神18対DeNA17。後半の7回以降は、ほぼ互角だった。悪い試合を都合よく取り除くのではない。どの時期に失点が集中したのかを調べると、単純な「阪神は終盤に弱い」という言い方は正確ではなくなる。

11第1戦は村上頌樹vs平良拳太郎

10月13日にNPBが発表した予告先発は、阪神・村上頌樹、DeNA・平良拳太郎。両者の今季の相手別防御率は、驚くほど似ている。

COMPARE第1戦の予告先発、相手打線に対する今季の成績
村上頌樹(対DeNA・5先発34回)
1.85対戦防御率
33奪三振
8.79回換算奪三振
平良拳太郎(対阪神・5先発28回1/3)
1.91対戦防御率
35奪三振
11.19回換算奪三振

結論防御率はほぼ同じでも、投球内容は同じではない。平良は阪神打線から三振を非常に多く奪っていた。勝敗は村上1勝3敗、平良2勝1敗と対照的。

2026年レギュラーシーズンの対象カードでの先発成績。投球回が違うため、奪三振は9回換算もあわせて見る。予告先発は10月13日のNPB発表。

村上はDeNAに5試合先発し、34回を投げて自責7、防御率1.85、与四球4。それでも1勝3敗。投手の内容が良くても、打線の援護や交代後の展開によって勝ち星は変わる。

平良は阪神に5試合先発し、28回1/3で自責6、防御率1.91、与四球6、2勝1敗。28回1/3で35奪三振という高い数字を阪神相手に記録している。「防御率が同じなら投球内容も同じ」ではない。平良は阪神打線から三振を非常に多く奪っていた。

佐藤13打数0安打、森下12打数5安打。同じ投手なのに真逆

そして、その平良に対する打者別の数字が、また極端だ。

MATCHUP

平良拳太郎 vs 佐藤輝明・森下翔太

同じ投手に対して、ここまで結果が分かれた

0安打佐藤(13打数・7三振)
5安打森下(12打数)
2本森下の本塁打

2026年レギュラーシーズンの平良に対する成績は、佐藤輝明が13打数0安打・7三振、森下翔太が12打数5安打・2本塁打・打率.417。保存済みの4試合の投球順ログでは、2ストライクになる前の空振りが佐藤10回、森下0回だった。

球順ログは4試合分で、5先発すべての全投球ではない。打数も少なく、次の打席の結果を予言する数字ではない。

対戦成績はNPB公式の試合記録をもとにした当ラボ集計。球順ログの集計範囲(4試合)は対戦成績(5先発)と母集団が異なる。

平良に対する2026年レギュラーシーズンの成績は、佐藤輝明が13打数0安打・7三振。一方の森下翔太は12打数5安打、2本塁打、打率.417。同じ投手に対して、ここまで打撃結果が違う。

さらに、保存してある4試合の投球順のログを調べると、2ストライクになる前の空振りは佐藤が10回、森下は0回。早いカウントでの攻防にも違いが見られた。

もちろん、これは5先発すべての全投球を網羅した記録ではなく、打数も少ない。「佐藤は次も絶対に打てない」「森下は明日も4割打つ」という予言には使えない。ただ、見どころは十分にある。佐藤にとっては、平良の複数の球種に対して、早いカウントからどう打球を作るか。DeNAにとっては、平良が佐藤を抑えながら、森下にも同じように対処できるか。村上と平良の初戦は、投手同士の数字を並べる以上に、打席ごとの攻防が面白い。

121勝アドバンテージは、どれほど大きいのか

最後に、シリーズの制度を確認する。2026年からCSファイナルには、条件により2勝のアドバンテージと最大7試合制が適用される場合がある。だが今回は、阪神とDeNAのゲーム差が7.5、DeNAの年間勝率が.507のため、その特例には当たらない。阪神は1勝のアドバンテージを持ち、最大6試合で戦う。

では、この1勝はどれほど価値があるのか。「両軍の実力は同じ」「各試合で阪神が勝つ確率は50%」「引き分けなし」「各試合は独立」という単純な仮定を置くと、阪神がシリーズを突破する確率は、当ラボ推定で65.6%になる。1試合の勝率を仮に45%とした場合は55.8%、55%とした場合は74.5%だ。

図3 | 【当ラボ推定・仮定】阪神の1試合勝率を置いたときのシリーズ突破率
0% 25% 50% 75% 100% 55.8% 65.6% 74.5% 1試合勝率45% 1試合勝率50% 1試合勝率55% (仮定) (仮定・五分) (仮定)

※当ラボ推定。毎試合同じ勝率・引き分けなし・各試合独立という仮定で、最大6試合のうち阪神が3勝以上する確率を計算した説明用モデル。予測ではない。

さらに、毎試合50%の仮定では、第1戦に勝った後の阪神の突破率は81.3%、負けた後は50.0%になる(当ラボ推定)。

これは「今の阪神が実際に65.6%で突破する」という予言ではない。先発投手・球場・連投・打順を組み込んで校正した予測ではなく、1勝アドバンテージが制度としてどれだけ大きいかを示す計算例である。

また、引き分けがあれば勝者が決まる組み合わせは変わる。引き分けなしの典型例では、阪神は実際の試合で3勝、DeNAは4勝を目指すことになるが、引き分けを含めると「DeNAは必ず4勝が必要」とは言えない。引き分け時の扱いはNPB公式の勝者決定表で確認できる。

13結論|阪神が優位。ただし「楽勝」とは呼べない

年間の失点は阪神が73点少なく、得失点差でも34点上回った。そしてリーグ王者として1勝のアドバンテージを持つ。総合的な材料からは、阪神を有利と評価したい。

だが、その結論に至るまでに、いくつもの反証が見つかった。DeNAは後半44勝27敗1分という力強い復活を遂げた。打線の本塁打ペースは約2倍になり、失点は減った。復活は、単に対戦相手に恵まれただけとは言いにくい。

それでも阪神は後半のDeNAに7勝8敗とほぼ互角。年間の直接対決25試合は13勝12敗、総得点は99対98。甲子園の10試合も5勝5敗だった。一方的な力量差だけで、明日の勝敗を決めることはできない。

DECISION FLOW仮説と反証を重ねると、答えはこうなる
  1. 年間で見ると、失点の少なさで阪神が上打率・本塁打は同じでも、失点は阪神が73点少なかった。
  2. DeNAの後半は、失点減を伴う本物の復活対戦相手に恵まれただけ、とは言いにくい。
  3. 直接対決では、13勝12敗・総得点99対98甲子園でも5勝5敗。ほぼ互角だった。
  4. 第1戦は、防御率1点台どうしの先発ただし三振の取り方と打者別の結果は大きく違う。
  5. シリーズ全体では、1勝アドバンテージの分だけ阪神が優位楽勝と呼べる材料はない。次の1点で景色は変わる。

阪神が優位。ただし、このカードを『楽勝』とは呼べない。

年間成績・前後半比較・直接対決・第1戦の対戦成績は、それぞれ別の物差し。互いの数字を足し合わせて結論を出しているわけではない。

第1戦の村上と平良は、互いの打線に対する防御率が1点台。佐藤と森下の、平良への打撃結果も対照的だ。

これまでの25試合は、阪神99点、DeNA98点。次の1点は、誰が、どんな球で、どんな打球を放って生まれるのか。2026年10月14日、甲子園。数字を知ったうえで見る最初の一球は、きっと少し違って見える。

14評価の限界

あえて逆から見ると

「阪神とDeNAは全く同じ打力」── 違う。打率の表示と本塁打数は同じでも、四球や二塁打など中身は違う。

「失点が73点少ないことが、7.5ゲーム差のすべての原因」── 言いすぎ。得点・失点が試合ごとにどう分布したか、対戦相手の構成までは分解していない。

「DeNA後半の勝因は失点減58%で確定」── 違う。42:58は1試合あたりの得失点差を算術的に分けたもので、因果の寄与ではない。

「後半は投手全員が覚醒し、三振が増えて四球が減った」── 違う。改善しなかった投手もいて、K−BB%はむしろ下がった。

「DeNAは弱い球団からだけ勝った」── 違う。後半の巨人戦は10勝5敗で、対戦相手の通年勝率も大きくは下がっていない。

「阪神はDeNAを完全に攻略した」── 違う。直接対決は13勝12敗、総得点99対98の接戦だった。

「甲子園ならDeNAの本塁打は出ない」── 違う。今季の甲子園10試合で、DeNAは7本塁打を放った。

「度会は阪神戦で本塁打0本だからCSでも打てない」「森下は平良から4割以上打つはず」── どちらも言えない。少ない打数の過去の成績を、次の結果へそのままつなげない。

「阪神の突破率は65.6%で確定」── 違う。毎試合五分・引き分けなし・各試合独立という仮定を置いた当ラボ推定の計算例。

「本塁打が増えた=打撃のすべてが良くなった」── 違う。CSファーストステージの2試合は、チーム打率.210・四球0でもあった。

15よくある疑問

阪神とDeNAのチーム打率は、本当に同じ?

NPBの表示ではどちらも.246。小数第4位まで見ると、阪神.2459、DeNA.2462でわずかに違う。

どちらの打線が優秀?

一つの数字では決められない。阪神は四球・出塁、DeNAは二塁打・長打が目立つ。年間の得点はDeNAが多く、どちらにも別の強みがある。

DeNAの復活は、打線の覚醒だけ?

1試合平均の得点は約0.74点増えたが、失点は約1.03点減った。得失点差の改善では、失点減の寄与がより大きく見える。ただし原因を一つに断定はできない。

甲子園では阪神が有利?

今季のレギュラーシーズンでの甲子園の対戦10試合は5勝5敗。球場の一般的な特徴と、特定のカードの10試合は分けて考える必要がある。

DeNAは必ず4試合勝たないと突破できない?

引き分けなしの典型例では4勝が必要だが、引き分けがあると、実際の試合3勝で突破できる組み合わせもある。NPB公式の勝者決定規則を確認してほしい。

第2戦以降の先発は決まっている?

この記事の基準時点(2026年10月13日)で公式に確認できるのは、第1戦の村上頌樹対平良拳太郎まで。以降はNPBの予告先発の発表を確認してほしい。

16動画・LIVE・関連記事

動画では、阪神ファン・DeNAファン・指標解説者の3人が、同じ数字から異なる仮説を立て、「99対98」がどう生まれたのかを一つずつ検証している。

17SOURCES / 参照データ

※データは2026年10月13日夜、CSファイナル第1戦(10月14日)開始前の時点です。1試合あたりの値・割合・倍率は、上記の値から計算したものです。当ラボ推定の突破率は「毎試合同じ勝率・引き分けなし・各試合独立」という仮定での計算例です。

⚠ 免責: 本記事は、NPB公式の年度記録・試合結果・CS規則・予告先発、NPB公式の各試合結果を当ラボでまとめ直した集計、NPB BASEMENTの保存データをもとにした独自集計、日刊スポーツ・Baseball Chronicleなどの公開情報をもとに、2026年10月13日夜(CSファイナル第1戦の開始前)の時点で整理・分析したものです。wRAAなどの独自集計はNPB公式の指標ではなく、算出元や取得時点によって値が変わります。シリーズ突破率などの当ラボ推定は「毎試合五分・引き分けなし・各試合独立」などの仮定を置いた説明用の計算例で、試合結果の予測ではありません。第1戦以降の結果は含みません。特定の選手、球団、ファンを誹謗中傷する目的はありません。