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度会隆輝は何を取り戻したのか? 指名漏れからCS史上初の2打席連続決勝弾へ――2026年をデータで解剖

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2026年 公式戦
129安打・9本塁打
134試合・516打席(CSの成績は含まない)
OPSとwRC+
OPS.714→wRC+119
NPB Basement・300打席以上87人でOPS42位、wRC+26位
CSファーストステージ
2打席連続の決勝弾
プレーオフ・CS史上初(日刊スポーツの記録記事)
30 SEC REVIEW

30秒で分かる、度会隆輝の2026年

  1. 01
    9本塁打でも「長打覚醒」ではない

    本塁打は6本から9本に増えたが、打席当たりでは1.99%から1.74%へ少し低下。長打/打席も約6%でほぼ横ばいだった。

  2. 02
    64本増えた安打は2つに分かれる

    65安打から129安打へ。約46本は打席が増えた分、約18本は打席当たりの安打率が上がった分に対応する(算術上の分解)。

  3. 03
    OPSでは見えない打撃価値

    OPSは同じDeNAの佐野恵太・宮﨑敏郎より低い。ところが得点価値を重み付けたwRC+では2人を上回った(NPB Basement)。

  4. 04
    7月の一球が、10月の伏線になる

    7月11日、2死満塁で竹丸和幸の151キロに見逃し三振。この打席を覚えておくと、CSの2日間が違って見える。

この記事の数字について

成績は2026年レギュラーシーズンの最終成績とCSファーストステージ終了時点で固定しています。レギュラーシーズンの9本塁打と、CSで放った2本塁打は別枠で、合算していません。数字は3つの系列に分けています。①公式記録:NPB公式・横浜DeNA公式・ENEOS公式。②NPB Basement(提供データ・同一系列):2026年10月8日取得、300打席以上の野手87人。wRC+・wOBA・WARなどはこの系列の値で、NPB公式の公認値ではありません。③報道値:球速、CSの打球速度・角度・飛距離、「史上初」の記録などは新聞・専門メディアの報道によります。打撃フォームや技術の変化と成績の関係など、データだけで確かめられないことは断定しません。

2026年10月10日。東京ドーム、9回表。スコアは1対1。

マウンドに立つのは、巨人の守護神ライデル・マルティネス。レギュラーシーズンで42セーブを積み重ねた投手だ。打席には、横浜DeNAベイスターズの度会隆輝。ここで何が起きたかは、多くの野球ファンが知っているかもしれない。

けれど、この一打を本当に面白くするには、もう一球覚えておきたい。3か月前の7月11日。2死満塁。度会は巨人・竹丸和幸の151キロの直球を前にバットを出せず、見逃し三振に倒れていた。なぜ、あの夏の一球を覚えておく必要があるのか。その理由は、10月の二つの試合で明らかになる。

これはCSで2本のホームランを打った選手の、ただの活躍紹介ではない。一度ドラフトで名前を呼ばれず、プロでは開幕の大歓声とその後の苦境を味わい、3年目に年間129安打へたどり着いた外野手の物語だ。しかも、データで見ると「2026年に全部が良くなった」という単純な話ですらなかった。

度会の3年間を、DeNAファンと指標解説者の掛け合いで追った動画はこちら(YouTube)。

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01指名漏れから3球団競合、衝撃のデビューまで

2020年、呼ばれなかった名前――そしてENEOSからの逆襲

度会隆輝にとって、プロ野球は幼い頃から身近な存在だった。父の博文さんは、ヤクルトでプレーした元プロ野球選手。自身は横浜高校で腕を磨き、プロへの扉を目指した。

しかし、2020年のドラフト会議でその名前は呼ばれなかった。同じ横浜高校の松本隆之介はDeNAから指名される。隣にいた仲間はプロへ進み、自分は社会人野球へ進むことになった。ここで野球人生が終わらなかったことが、度会という選手の物語を大きく変えた。

進路に選んだのはENEOS。2022年の都市対抗野球大会でチームは優勝し、度会は最優秀選手にあたる橋戸賞、打撃賞、若獅子賞の三つを受賞した。ENEOS公式によれば、同一大会でこの3賞を受賞したのは1975年以来の快挙だった。「指名されなかった高校生」は、社会人野球の大舞台で主役になった。

そして2023年、運命のドラフト。度会を1位で指名したのはDeNA、中日、ロッテの3球団。抽選の末、交渉権を獲得したのがベイスターズだった。3年前は指名なし。今度は3球団競合。野球人生の第一幕だけでも、十分に映画のような展開だ。ただし、プロ入りがゴールだったわけではない。

2024年、すべてが始まったように見えた開幕2本塁打

2024年3月29日。プロデビュー戦の第2打席で、度会はプロ初安打となる同点3ランを放つ。翌30日には、開幕から2試合連続の本塁打。セ・リーグの新人として初の記録だった。しかもその日は、頭部付近への死球を受けながらプレーを続け、4打数4安打と初盗塁まで記録した。

ファンが「スター誕生」を確信したのも無理はない。そして4月26日には巨人戦で満塁本塁打。3号のグランドスラムは、球団新人として初の満塁弾でもあった。

だが、ここから数字が急変する。4月26日の3号が、2024年シーズン最後の本塁打になったのだ。最終成績は75試合、打率.255、3本塁打。途中には二軍降格も経験した。

その年のDeNAは、CSを勝ち抜いて日本一に輝いた。しかし度会自身には、CSにも日本シリーズにも試合出場の機会がなかった。チームが日本一になった事実と、ひとりの若手選手が短期決戦でプレーできなかった事実。この二つは同時に存在する。あの日の「怪物ルーキー」が、そのまま毎日勝利を左右する選手になったわけではなかった。

FLOW指名漏れから、開幕2連発、そして空白へ
  1. 2020年
    ドラフト指名 なし

    横浜高校の同級生・松本隆之介はDeNAから指名。度会は社会人のENEOSへ。

  2. 2022年
    都市対抗 3賞受賞

    ENEOSが優勝。橋戸賞・打撃賞・若獅子賞の同時受賞は1975年以来(ENEOS公式)。

  3. 2023年
    ドラフト1位 3球団競合

    DeNA・中日・ロッテが1位指名。抽選でDeNAが交渉権を獲得。

  4. 2024/3/29〜30
    開幕2試合 2本塁打

    プロ初安打が同点3ラン。翌日は4打数4安打・初盗塁で、セ・リーグ新人初の開幕から2試合連続本塁打。

  5. 2024/4/26
    3号 満塁本塁打

    巨人戦で球団新人初の満塁弾。これが2024年最後の本塁打になった。

  6. 2024年秋
    CS・日本S 出場0試合

    チームはCSを勝ち抜いて日本一。度会に短期決戦の出場機会はなかった。

読みどころ3年前は指名なし、今度は3球団競合。開幕2連発の後、4月26日の3号を最後に本塁打は止まった。物語はここから「積み重ね」の段階に入る。

年表の出来事はENEOS公式・NPB公式・各種報道による。2024年のレギュラーシーズン最終成績は75試合、打率.255、3本塁打。

022025年は本当に停滞だったのか

先に、3年間の公式成績を並べておく。ここからの話は、すべてこの表の数字が土台になる。

DETAIL DATA度会隆輝 NPB公式レギュラーシーズン成績(2024〜2026)
指標202420252026
試合7586134
打席272301516
安打6465129
本塁打369
四球122434
三振433673
打率.255.241.274
出塁率.306.303.334
長打率.327.359.380
OPS.633.662.714

NPB公式(A1)。2026年はレギュラーシーズン134試合の最終成績で、CSファーストステージの2本塁打は含まない。

2025年は、本当に何も成長しなかった年なのか?

2年目の2025年は86試合、打率.241、6本塁打。打率だけなら新人時代の.255より低い。ここで「停滞した」と片づけてしまうと、見落とす数字がある。

NPB STATS系とは別に保存されている「ぼーのの日記」同一系列のスイングデータでは、2024年から2025年にかけて、Chase帯の球を振る割合が30.1%から17.8%へ下がっていた。打者にとって追いかけたくなる、ストライクゾーンの外側の球に、むやみに手を出す頻度を抑えた方向だ。

※Chase帯は「すべてのボール球」と同じ意味ではありません。また、2026年とは同じデータ系列で比較していません。

公式成績の側にも変化があった。三振率は打席当たり15.8%から12.0%へ低下し、四球率は4.4%から8.0%へ上昇した。打率は落ちたのに、三振と四球の関係は改善していた。

ホームラン率にも変化がある。2024年の3本は272打席で1.10%。2025年の6本は301打席で1.99%。単に打席が増えただけでは説明できない、前年との違いがここにはある。

もちろん、これだけで「選球眼という能力が確実に完成した」とは言えない。打率は下がったが、同じ系列で見た打席での選択には前向きな変化が見られた。2025年は、何も前進しなかった一年ではなかった。では、その翌年に何が起きたのか。

032026年129安打の正体

3年目の2026年は134試合に出場し、129安打。まずは安打数の変化を見てほしい。

図1 | 度会隆輝の年度別安打数(NPB公式・レギュラーシーズン)
0 50 100 150 64 65 129 2024(75試合) 2025(86試合) 2026(134試合)

※出典:NPB公式(A1)。2026年はレギュラーシーズン134試合で、CSの成績は含まない。本塁打は3本→6本→9本だが、この図の主役は安打数。安打が一気に増えた2026年は、出場機会の増加も大きい。

9本塁打に増えた――でも「長打覚醒」とは違う

2024年3本、2025年6本、2026年9本。本塁打数だけなら、毎年3本ずつ増えている。「来年は12本、その次は15本」と言いたくなる数字だが、実際はそれほど単純ではない。

2025年は6本/301打席=1.99%。2026年は9本/516打席=1.74%。打席当たりの本塁打率は少し下がっていた。二塁打・三塁打まで含めた長打の本数も、2025年の18本から2026年の31本へ増えた。しかし100打席当たりでは5.98本から6.01本。ほぼ横ばいだ。

年本塁打本塁打/打席長打(二塁打+三塁打+本塁打)長打/打席
202431.10%114.04%
202561.99%185.98%
202691.74%316.01%

NPB公式の打席・本塁打・二塁打・三塁打から算出(A1派生)。本数は6→9本に増えたが、打席当たりの頻度は前年を下回る。

つまり、2026年の度会を「ホームランの頻度が劇的に伸びた打者」と評価するのは、数字の読み方として正しくない。では、成長がなかったのか。それもまったく違う。本当に注目すべきは、本塁打の本数よりずっと大きな数字だった。

65安打から129安打へ。64本増えたヒットを分解する

2025年の65安打が、2026年には129安打へ。実に64本増えた。一方で打席数も301から516へ、215打席増えている。この二つを切り分けたい。

2025年と同じ「打席当たりの安打率」のまま516打席に増えたとしたら、2026年の安打は約111本になる。2025年の65本から約46本増える計算だ。しかし実際は129本だった。残る約18本は、打席当たりの安打率が上がったことに対応する。

図2 | 64本の安打増を「打席増」と「安打率の改善」に分ける
0 50 100 150 65 約111.4 129 +46.4(打席増) +17.6(安打率) 2025年 実績 打席だけ増えた仮定 2026年 実績

※NPB公式(A1)の打席・安打から算出した算術分解。2025年の安打/打席(65÷301)を基準に「先に打席を増やし、次に安打率を変える」順序で分けたもので、順序を変えると配分は少し変わる。起用された理由や打撃フォームの進歩を証明するものではない。

64本増加 ≒ 出場機会の増加による約46本 + 打席当たりの安打率の改善による約18本。これは算術上の分解で、技術の因果を示したものではない。それでも重要なことを教えてくれる。「出続けたから安打が増えた」も正しいし、「出続けただけではない」も正しい。

2026年に起きた本当の変化は、球場に立ち続けることと、その機会で結果を残すことの両立だった。

打球はなぜヒットになった? BABIPの「戻り」を追う

本塁打を除いたインプレーの打球が、どれくらい安打になったかを見るBABIPという指標がある。度会の数値は、2024年.296、2025年.257、2026年.308。2025年に低くなり、2026年に上がっていた。

ここで気になるのは「内野安打で稼いだから打率が戻ったのか?」という仮説だ。公開されている全打席の結果を年末まで整理すると、内野安打は2024年7本、2025年8本、2026年11本だった。見かけの本数は増えている。しかし、BABIPの対象となる打球100本当たりに直すと、2025年は3.48本、2026年は2.82本。むしろ割合は少し低下している。

打球100本当たり202420252026
BABIP.296.257.308
対象の打球数206230390
内野安打3.40%(7本)3.48%(8本)2.82%(11本)
内野安打以外の単打22.33%16.96%22.31%
二塁打・三塁打3.88%5.22%5.64%

BABIP=(安打−本塁打)÷(打数−三振−本塁打+犠飛)。NPB公式の生カウントから算出(A1派生)。内野安打は外部の全打席表(S27〜S29)の結果表記から再集計したもので、NPBが公表した件数ではありません(B)。

上がったのは、内野安打以外の単打の割合だ。同じ100打球当たりで16.96%から22.31%へ。2024年の22.33%に近い水準へ戻った。

これは面白い。ただし「ライナーが増えた」「強いゴロが増えた」と言い切るには、まだ足りない。左右中間へのヒットという打席結果だけでは、それがゴロなのかライナーなのかを判定できないからだ。ここまでで言えるのは「何が数字として戻ったか」であって、「なぜ戻ったか」の全部ではない。度会の成長には、まだ解き切れていない謎がある。

出塁率は上昇、なのに四球率は低下。成長の中身は一様ではない

2025年の出塁率.303が、2026年には.334へ上昇した。普通なら選球眼の成長で説明したくなる。しかし四球率は2025年の8.0%から2026年の6.6%へ下がった。三振率も12.0%から14.1%へ上がっている。

それでも出塁率が上がったのはなぜか。答えの中心は、安打になる打席の割合が増えたことだ。安打/打席は21.59%から25.00%へ。四球だけを頼りにするのではなく、実際に打って出塁する場面が増えた。なお死球も1個から9個に増えており、出塁率にはこの影響もある。死球を選球眼の成長と同一視することはできない。

大事なのは、2025年と2026年の成長が同じ方向ではなかったという点だ。2025年はスイングの選択や三振・四球の数字が改善した。2026年は、それらの一部が後退する一方、実際の安打と年間の打撃価値が伸びた。「全部が毎年よくなる」より、むしろこちらの方が現実のプロ野球選手らしい変化なのかもしれない。

2026年の三振率は2025年より上昇した。ただし、後で見るNPB Basementの300打席以上87人のなかでは、低い方から18番目と比較的低三振の部類に入る。

04OPS.714なのにwRC+119、度会の打撃価値

OPS.714なのにwRC+119――データが教える意外な打撃価値

2026年の度会のOPSは.714。OPSとは出塁率と長打率を足した指標で、打撃成績を大づかみに比べるときに便利だ。ただし、それだけで得点を生み出す能力の全てを比べられるわけではない。ここで、同じDeNAの佐野恵太、宮﨑敏郎と比べてみる。

COMPAREOPSでは最下位、wRC+では最上位。DeNAの3人で順位が入れ替わる
OPS(出塁率+長打率)
.714度会 OPS
.719佐野 OPS
.724宮﨑 OPS
wRC+(100が平均の目安)
119度会 wRC+
113佐野 wRC+
116宮﨑 wRC+

結論OPSの差はわずかだが、得点を生む価値の重み付けと環境調整を入れたwRC+では、度会が2人の先輩を上回った。

NPB Basement(提供データ・同一系列、2026年10月8日取得)。OPSは出塁と長打を単純に足すため、wRC+と順序が一致しないことがある。どの安打が何ポイント押し上げたかの因果分解はしていない。

OPSだけを見れば、度会は二人の先輩より低い。ところがwRC+では、度会が二人を上回る。wRC+は、さまざまな打撃結果が得点を生む価値を考慮し、その年の得点環境などを調整した指標。100が平均の目安で、度会の119は平均を上回る打撃を示す。

どうして順位が逆転したのか。OPSは出塁と長打を単純に足す一方、wOBAやwRC+は打撃結果ごとの得点価値の重み付けが違う。さらに環境調整も入る。ただし今回の研究だけで「どのヒット何本が何ポイント押し上げた」と細かく因果分解したわけではない。

「OPS.714だから、打者として普通くらい」と片づけるのはもったいない。同じ年、同じ基準で見ると、度会の打撃にはもう一段高い評価があった。2026年のNPB Basementで300打席以上の87人を比較すると、度会はOPS42位だがwRC+は26位。打撃WARは22位だった。

項目度会87人の中央値87人中の順位(高い順)
OPS.714.71042位
wRC+11910926位
打撃WAR+2.9+1.922位
三振率14.1%17.9%70位(低い順では18位)
ISO.106.11952位
ゴロ率52.4%45.8%13位
HR/FB5.6%5.9%48位

NPB Basement(提供データ・同一系列、2026年10月8日取得、300打席以上の野手87人)。順位はこの87人の中でのもの。wRC+は率に近い打撃評価、打撃WARは打席を積み上げた貢献評価で、同じ意味ではありません。

長打の大砲ではなくとも、得点を作れる打者。2026年の価値は、ここにある。

ゴロ率52.4%なのに、打撃WAR+2.9という逆説

さらに面白い数字がある。2026年の度会のゴロ率は52.4%、長打力の強さを示すISOは.106。リーグのなかで、飛び抜けた長打特化型というわけではない。それなのに、打撃WARはプラス2.9だった。

NPB BASEMENT 2026

度会隆輝 2026年の打撃価値

300打席以上の野手87人で、OPSは42位。それでも打撃WARは22位

+2.9打撃WAR(NPB Basement)
+2.2総合WAR(NPB Basement)
26位wRC+順位(87人中)

ゴロ率52.4%、ISO.106と、長打に特化した打者ではない。それでもwOBA.334、wRAA+11.6。ゴロ率50%以上・ISO.120未満・300打席以上という条件の20人では、wRC+が近本光司に次ぐ2番目だった。

打撃WARは打撃の貢献、総合WARは守備・走塁・守備位置補正まで含む別の評価。2つの差を引き算して「守備が−0.7」とは読まない。総合WAR+2.2は同じ集計条件でDeNA野手の2位(1位は牧秀悟)。

NPB Basement(提供データ・同一系列、2026年10月8日取得、300打席以上の野手87人)。NPB公式の公認値ではない。20人の比較は説明用に後から設けた探索条件で、正式な打者タイプ分類ではない。

同じ年の「ゴロ率50%以上・ISO.120未満・300打席以上」という探索条件に当てはまる20人を比べると、度会のwRC+は近本光司(137)に次ぐ2番目だった。3位以下は村松開人114、牧原大成113、周東佑京111と続く。この20人は説明のために後から作った比較集団で、正式な打者タイプ分類や受賞順位ではない。それでも、ホームランが多くなくても、得点価値の高い打撃を積み上げる選手像が見えてくる。

ここで数字を一つ整理しておきたい。「打撃WAR+2.9」と「総合WAR+2.2」は、同じ意味ではない。前者は打撃の貢献評価、後者は守備や走塁、守備位置なども含めた総合評価だ。総合WAR+2.2は、同じNPB Basementの集計条件ではDeNA野手で牧秀悟に次ぐ2位。本塁打王でなくても、チームを支えた一年として評価できる。

失策ゼロでも守備の課題。足が使えても盗塁は6成功6失敗

もちろん、ここで「もう何もかも完成した」と結論づけるわけにはいかない。2026年、公式記録で度会の失策はゼロだった。それでもNPB Basementの守備WARはマイナス0.6。失策が少ないことと、広い範囲の打球に追いつけることは別だからだ。守備WAR−0.6には、TZR−2.2や守備位置補正−7.2などが含まれている。

守備位置守備イニングTZRRngR(範囲)ARM(送球)
左翼605.7+2.0−1.1+2.7
右翼320.3−3.5−4.2+0.5
三塁62.3−0.2−0.7—
中堅5.0−0.6−0.4−0.1

NPB Basement(提供データ・同一系列)の2026年守備位置別の累積値。位置ごとに出場イニングやプレー数が違うため、位置どうしを単純に並べて適性を決めるものではありません。三塁のARMは値なし。

左翼の送球評価ARMは+2.7で、左翼400イニング以上の12人では上から2番目。一方、右翼での守備範囲RngRは−4.2で、右翼300イニング以上の15人では下から5番目だった。失策はゼロ。送球評価の強みと右翼範囲の課題が同居していた。単純な適性診断ではないが、課題を探る手がかりになる。

走塁にも、似た逆転がある。盗塁は6成功、6失敗。成功率50%で、盗塁評価wSBは−1.4。一方、盗塁以外の走塁評価UBRは+0.9だった。足が使えるかどうかと、盗塁で得点期待を増やせたかどうかは同じ問いではない。打撃でチームに貢献した一方、守備と走塁には伸びしろがある。だからこそ、2027年以降の進化を見る楽しみが残っている。

さらに深掘り:wRC+は秋に突然上がったのか? シーズン途中の推移

早い時点から平均以上だった

NPB Basementで、打席数が整合した時点の集計値だけを並べると次のようになる。

時点打席wRC+打撃WAR総合WAR
5月1日84123+0.5+0.4
7月27日282120+1.5+1.0
9月20日472128+2.9+2.4
10月8日516119+2.9+2.2

NPB Basement(提供データ・同一系列)。各時点のシーズン累積値。

2026年の打撃評価は、秋に「ゼロから突然覚醒した」のではなく、比較的早い時点から平均以上だった。そこへ打席を重ねた積み上げの価値も大きい。

差を「期間の成績」として読まない

wRC+やWARは、基準となるリーグ環境の再評価や、データ元の更新でも動く。表の値を単純に引き算して「9月20日から10月8日の間にWARが−0.2だった」とは読まない。途中の記録には打席数が逆行するような更新も見つかっているため、この記事では最新版(10月8日取得)の値を優先している。

OPSが近い打者の中では最高のwRC+

度会とOPSの差が±.020以内の打者を同じ87人から拾うと、度会を含む24人になる。この24人のwRC+の中央値は111.5で、度会の119はこの群の最高値だった。ただし、これは後から選んだ比較区間で、球団・役割・守備位置やサンプルをそろえた比較ではない。

057月の苦境と151キロの伏線

7月、突然短くなった出場機会。それでも打てない選手ではなかった

2026年は134試合に出場した。しかし、全てが順調だったわけではない。月別の打席数を見ると、5月105打席、6月71打席、7月はわずか26打席まで減っていた。

図3 | 度会隆輝の2026年 月別打席数(5〜8月)
0 40 80 120 105 71 26 111 5月 6月 7月 8月

※研究資料の試合別ログ集計による月別打席数(5〜8月のみ)。134試合出場の裏には、7月にわずか26打席という時間があった。

こういう数字を見ると「打てなくなったから出られなかったのか」と考えたくなる。だが、7月27日時点までの代打成績は19打数7安打、打率.368、2本塁打だった(7月単月ではなく、その時点までの代打の累計。報道による)。出場機会の減少を、代打で全く打てなかったからだと説明することはできない。

当時の相川監督が求めていたのは、単発の結果だけでなく、試合に出続けるための準備と集中でもあったとされる。選手起用にはさまざまな理由がある。数字だけで監督の胸の内を決めつけないことも大切だ。そしてこの時期に、後のCSへつながる一打席があった。

7月11日、満塁。151キロに動かなかったバット

7月11日のDeNA―巨人戦。6回裏、DeNAが4対3と勝ち越し、なお2死満塁。打席に呼ばれたのは代打・度会。相手は先発の竹丸和幸だった。

竹丸は100球を超えてもマウンドに立ち、度会との勝負はフルカウントまでもつれた。107球目。151キロのストレート。度会のバットは動かなかった。結果は見逃し三振。

度会にとっては悔しい場面だが、竹丸にとっては渾身のアウトだ。同じ一球が、打者と投手の双方にそれぞれの意味を持っている。その後、DeNAは4対5で敗れた。この一打席だけで、度会が直球を打てない選手だとは言えない。しかし、あの場面で一本を打てなかった事実は残る。

8月になると、度会の出場機会は111打席へ戻った。打率は.293。さらに2026年、1番で先発した試合は46に増えた。2025年にはわずか2試合だった役割だ。ヒーローになるために必要だったのは一夜の覚醒だけではなく、日々の出場機会をつかみ直すことだった。

06仲間との別れ、そしてCSの二日間

24歳の誕生日。松本隆之介たち3人の「登場曲」

10月4日。度会の24歳の誕生日であり、横浜スタジアムでのレギュラーシーズン最終戦でもあった。この日、度会はいつもと違う曲で打席に入った。第1打席は松本隆之介、第2打席は井上絢登、第3打席は西巻賢二。それぞれ、今季限りでチームを去ることになった仲間たちの登場曲だった。

そのなかの松本は、2020年にDeNAから指名された横浜高校の同級生だ。当時、度会は指名されなかった。その後は同じベイスターズのユニホームを着てプレーし、今度は別れの日が来た。2020年のドラフトと2026年の登場曲が、ここで一本につながる。

ホームランやWARでは測れない、選手が球場へ持ち込む物語もある。仲間の思いまで背負う24歳。そして、CSファーストステージが始まった。

10月10日、42セーブの守護神から放った決勝弾

相手は巨人。東京ドームで行われたCS第1戦。度会は最初の3打席が見逃し三振、二塁ゴロ、遊撃ゴロ。まだ安打はなかった。試合は1対1のまま9回表へ。マウンドに立ったのは、レギュラーシーズン42セーブの守護神ライデル・マルティネスだった。

1死走者なし。カウントは3ボール1ストライク。ベンチでは戸柱恭孝から、考えすぎず本能で打つことを促す言葉があったと伝えられている。マルティネスが投じたのは152キロのストレート。

その一球を、度会は右中間席へ運んだ。スコアは2対1。これが決勝本塁打となった。

そして9回裏、最後の左飛をつかんだのも度会だった。3打席無安打だった選手が、最後の一打で勝負を変え、最後のアウトまでつかむ。それだけでも十分なドラマだ。しかし、翌日の先発投手の名前を見たとき、この物語はもう一度動き始める。

10月11日、再び竹丸。151キロの記憶は149キロへ

CS第2戦。巨人の先発は竹丸和幸。7月11日の満塁で、度会を151キロの見逃し三振に仕留めた、あの投手だ。しかも竹丸は、2026年のレギュラーシーズンで左打者に本塁打を許していなかった。

迎えた初回、先頭打者・度会。カウントは1ボール1ストライク。竹丸の3球目、149キロのストレート。

今度は、バットが振り抜かれた。打球は右中間席へ。先頭打者ホームラン。前日の9回から数えて、2打席続けての本塁打だった。

7月は151キロを見逃して三振。10月は同じ竹丸から149キロを振り抜いて本塁打。これを「3か月で直球を必ず打てるようになった証拠」と呼ぶことはできない。打席の条件も投球の位置も異なり、わずか二つの場面で技術の因果は確定できないからだ。それでも、スポーツの物語としてこの対比が持つ力は大きい。あの夏、振れなかった場面と、秋に振り抜いた場面が、同じ投手を通じてつながったのだから。

「2試合連続」よりすごい――史上初の2打席連続決勝本塁打

この2本の本当のすごさは、2試合続けて打ったことだけではない。10月10日は同点の9回に勝ち越しソロ。10月11日は初回先頭打者本塁打で先制し、それが最終的に決勝点になった。どちらも決勝本塁打で、しかも2打席続けて放たれた。

日刊スポーツの記録記事によると、プレーオフ・CSで「2打席連続の決勝本塁打」は史上初。2試合連続の決勝本塁打そのものは、2017年の中村晃以来2人目で、セ・リーグでは初とされる。

「2打席連続の決勝打」まで言葉を広げると別の先例がある。「CSで2試合連続の本塁打」だけなら別の選手もいる。だからこそ、記録の言葉は正確に使いたい。史上初だったのは、プレーオフ・CSにおける「2打席続けて決勝本塁打を放ったこと」だ。なお、10日の最終打席から11日の最初の打席へと続いた2打席で、同じ日に2打席連続で打ったわけではない。

球団にとっても、10月11日の初回先頭打者弾は大きな記録だった。ポストシーズンにおけるDeNA(大洋時代を含む)の先頭打者本塁打として初と報じられている。

DECISION FLOW151キロの見逃しから、2打席連続の決勝弾へ
  1. 7月11日 6回裏2死満塁、代打で151km/h 見逃し三振巨人・竹丸和幸の107球目、フルカウントからのストレート。DeNAは4対5で敗れた。
  2. 10月10日 CS第1戦 9回表1死・1対1で152km/h 勝ち越しソロライデル・マルティネスの3ボール1ストライクからのストレートを右中間へ。9回裏の最後の左飛も度会がつかんだ。
  3. 10月11日 第2戦 初回の先頭打者で149km/h 先頭打者弾相手は再び竹丸。1ボール1ストライクからの3球目を右中間へ。この1点が最終的に決勝点になった。
  4. 2打席続けて決勝本塁打 史上初プレーオフ・CSで2打席連続の決勝本塁打は史上初(日刊スポーツの記録記事)。

夏は151キロにバットが動かなかった。秋は同じ竹丸の149キロを振り抜いた。同じ投手を通じて、2つの場面がつながった。

球速・記録は報道による(B)。2試合連続の決勝本塁打は2017年の中村晃に先例があり、史上初は「2打席連続」の範囲に限る。2つの場面だけでは、直球への対応が技術的に変わったとは確定できない。

07二つの打球と、チーム全体の勝利

同じ2本でも、打球はまったく違った

2本のアーチは、報道された打球データにも特徴がある。

項目10月10日 第1戦10月11日 第2戦
試合巨人1−2DeNA巨人1−4DeNA
投手マルティネス竹丸和幸
場面・カウント9回表1死・同点、3−1初回先頭、1−1
投球ストレート152km/hストレート149km/h
打球速度(報道値)158.5km/h169.9km/h
打球角度(報道値)33度22度
飛距離(報道値)115.8m121.9m

試合結果は公式記録。球速・打球速度・角度・飛距離はスポーツ紙などの報道値(B、S24)で、公的な全打球データの原票とは突き合わせていません。

2本目は打球速度が11.4km/h速く、角度は11度低く、飛距離は6.1m長い。前日は高く上がった打球。翌日はより鋭いライナー性の打球。数字でも、打球の個性は違っていた。

ただし、この2球だけから2026年を通じた打球の質の変化を結論づけることはできない。年度全体の打球速度・バレル率などの確定値は、今回の研究では取得できていないからだ。それでも、あの2打席が異なる打ち方の一発だったという発見は、ハイライトをもう一度見直す理由になる。

勝ったのは度会ひとりではない――2026年CSを支えたチーム

10月11日の第2戦はDeNAが4対1で巨人を下し、2連勝でファーストステージ突破を決めた。初回には度会の先頭打者弾に続き、佐野恵太の適時打。7回には戸柱の追加点、8回には牧秀悟の2試合連続本塁打が生まれた。先発の石田裕太郎は5回1失点。投手陣もつないだ。

度会の一発が勝負を大きく動かしたのは間違いない。同時に、一人のヒーローだけで4対1という結果ができたわけでもない。このチームの勝利のなかに、度会が確かにいた。2024年の日本一の舞台で出番がなかった選手が、2026年のCSで主役になる。その変化は、本人の成長だけでなく、チームにとっても意味が大きい。

082027年、その先の度会へ

2024年の二連発と、2026年の二連発は何が違ったのか

2024年は開幕2試合連続ホームラン。2026年はCSの2試合で、しかも2打席連続の決勝本塁打。外から見れば、どちらも華やかな「2本」だ。けれど、その間には同じ人間が生きた2年半がある。

2024年の2本は、「こんな才能が現れた」という驚きだった。2026年の2本は、「この選手に、大事な場面を任せたい」という信頼へ変わりつつあることを感じさせた。

数字の面でも、2026年の度会は134試合・129安打という土台を持っていた。本塁打が9本だったこと以上に、毎日の試合で打撃の価値を積み上げ、チームの一員として長く戦ったことに意味がある。

だから、2026年CSの2本を「突然の覚醒」で終わらせたくない。2025年に見えた変化、2026年に増えた出番と安打、夏に味わった苦い打席、誕生日に託した仲間の思い。それらを通過した先に、あの2本があった。

2027年、その先へ。度会隆輝は、まだここからだ

もちろん、未来はまだ決まっていない。2027年に20本塁打を打つか、首位打者を取るか、不動の1番になるか。今ここで断言できることではない。

ただ、数字を見れば、次に見たい課題ははっきりしている。より高い打撃価値を、毎年続けられるか。ゴロの多い打球傾向をどう生かし、長打をどこまで増やせるか。送球の強みを生かしながら、外野での守備範囲をどう改善するか。盗塁を、成功率だけでなく得点価値につなげられるか。

2024年の2本は、才能の「登場」だった。2026年の2本は、積み重ねの「証明」になりつつある。そして、2027年以降の度会が、この二つをどうつなげていくのか。

いつか何年も後に、2026年のCSを振り返って「あの二つの一打が、始まりだった」と語れるだろうか。その答えは、これから度会自身が打席でつくっていく。

度会隆輝、まだ、ここからだ。

最後に、読者のみなさんに聞いてみたい。2027年の度会隆輝に、あなたが最も期待するのは何ですか。① 不動の1番打者 ② 首位打者を狙えるコンタクト ③ 20本塁打以上の中軸 ④ 攻守走そろった主力。ぜひ教えてください。

※選択肢は読者に答えてもらうための目標案で、2027年の成績予測ではありません。

09評価の限界

この記事が言い切らないこと

本塁打── 本数は6→9本。ただし打席当たりの頻度は1.99%→1.74%と前年を下回る。長打/打席もほぼ横ばいで、「長打力が伸びた年」とは読まない。

出塁率── 四球率は8.0%→6.6%に低下。出塁率.303→.334の改善には、安打率の上昇が大きく寄与し、死球の増加も効いている。

BABIP── .257→.308に上昇し、内野安打以外の単打の割合が回復した。打球の強さやフォームとの関係は別の検証が必要。

守備── 失策はゼロ。送球評価の強み(左翼ARM+2.7)と、右翼の範囲の課題(RngR−4.2)が同居していた。

WAR── wRC+は率に近い打撃評価、打撃WARは積み上げ型の貢献評価。打撃WAR+2.9と総合WAR+2.2の差を、そのまま守備の値として扱わない。NPB Basementの2026年値を、別の提供元の2024・2025年のWARと足し引きもしない。

「史上初」の範囲── プレーオフ・CSで史上初の2打席連続決勝本塁打。2試合連続の決勝本塁打には2017年の中村晃という先例がある。日本シリーズを含むポストシーズン全体へは広げない。

151キロと149キロ── 7月の151キロ見逃し三振と、10月の同じ相手からの149キロ本塁打が鮮やかな対照をなした。本人が「リベンジ」と考えたかどうかや、技術の変化の証拠としては扱わない。

打球の質── CSの2本の打球速度・角度・飛距離は報道値。2026年通年のバレル率や平均打球速度は今回取得できていない。

データからあえて言わなかった結論── 2025年の低打率を運だけで説明すること、2026年をフォーム改造だけの覚醒とすること、7月の三振があったから10月の本塁打が生まれたとすること。いずれも、データの差分からは証明できない。

10動画・関連記事

動画では、度会の3年間を試合の緊張感、DeNAファンと指標解説者の掛け合い、打球の演出とともに追っています。ブログでは、安打増の分解、BABIPの内訳、OPSとwRC+の比較、守備・走塁の評価と出典を、後から見返せる形でまとめました。

11SOURCES / 参照データ

出典ランク:A1=公式記録・公開一次資料、A2=提供されたNPB Basementデータ(同一系列、公式統計ではない)、B=新聞・専門メディア・外部サイトの集計・報道。

公的・公式・球団資料(A1)

新聞・専門メディアの報道(B)

外部データ・記録の参考(B)

提供データ・動画

※本記事の成績は2026年レギュラーシーズン最終成績とCSファーストステージ終了時点で固定しています。率・分解の数値は、NPB公式の生カウントから独自に算出したものです。月別打席・1番先発試合数は試合別ログの集計値です。

⚠ 免責: 本記事はNPB公式、横浜DeNAベイスターズ公式、ENEOS公式などの公式記録、NPB Basementの提供データ(同一系列)、新聞・専門メディアの報道値を、記載した基準時点の内容で整理・分析したものです。公式記録・NPB Basement提供データ・報道値は系列を分けて記載しており、NPB BasementのWAR・wRC+などはNPB公式の公認値ではありません。CSの打球速度・角度・飛距離は報道値です。打撃技術の変化と成績の関係など、公開情報だけでは確認できない点は断定していません。本記事は2027年以降の成績を予測・保証するものではありません。特定の選手、球団、ファンを誹謗中傷する目的はありません。