NPB / ドラフト分析 / 球団比較

NPB12球団、本当にドラフトが上手い球団はどこ?1203人のWARで徹底検証

検証対象
1203人
2008〜2023年のドラフト入団選手。主系列は2008〜2017年の固定5年WAR
2008〜17年5年総WAR1位
西武132.9
2位広島117.3、3位オリックス107.9を上回る歴代トップ
2018〜20年5年pWAR1位
阪神89.2
2位DeNA37.8の倍以上。下位指名の総量でも1位
30 SEC REVIEW

30秒で分かる、ドラフトが本当に上手い球団

  1. 01
    「西武1位」だけでは終わらなかった

    2008〜2017年の5年総WARなら西武132.9が1位。ただし物差しを変えるたび、上に来る球団が変わった。

  2. 02
    戦力化率はロッテ、下位は中日・阪神

    WAR>1・WAR>2の成功率はロッテがトップ。4位以下の総量は中日、総量と成功率のバランスでは阪神が上位に来る。

  3. 03
    西武はスターを消しても崩れない

    全球団から上位2人ずつ除外しても西武が1位のまま。10年連続でWAR>2選手を輩出したのも西武だけだった。

  4. 04
    近年(2018〜2020年)は阪神が突出

    5年pWAR89.2は2位DeNA37.8の倍以上。近本・佐藤を除いても42.3で、無傷のDeNAを上回る。

この記事の数字について

対象は2008〜2023年のNPBドラフト入団選手1203人(育成ドラフト指名選手は含まない)。主系列は2008〜2017年入団選手をNPB STATS系WARで、ドラフト翌年から固定5年間で比較したもの。2018〜2020年は別系列(ぼーのpWAR等)で、2021〜2023年は5年評価窓が未完成のため固定5年比較には含めない。計算方法の異なるWARは足したり同じランキングに混ぜたりしていない。WAR>1、WAR>2などは特に断りがない限り「入団後5年間の累積WAR」であり、年間WARではない。動画版では結論の全体像を最初から見られる。

「ドラフトが上手い球団」と聞いて、どこを思い浮かべるだろうか。広島は育成が上手い。西武は野手が育つ。ソフトバンクは育成から次々出てくる。そして近年の阪神はドラフトが大きく改善した。プロ野球ファンの間では、球団ごとにさまざまなイメージがある。

ただ、その評価は本当に数字でも同じなのか。今回は2008〜2023年の支配下ドラフト入団者1203人を対象に、指名後にどれだけNPB一軍戦力になったかをWARから徹底検証した。すると、「何を成功と呼ぶか」で1位の球団が次々と変わるという、面白い結果になった。

01まず総WARで比べると西武が1位

2008〜2017年入団選手の入団後固定5年総WARで比べると、西武132.9が1位。2位広島117.3、3位オリックス107.9、4位巨人107.2、5位ヤクルト92.3、6位ロッテ89.2と続く。ここだけ見れば「西武が最もドラフト成果を得た」という結論になる。

図1 | 2008〜2017年 5年総WARランキング(上位6球団)
0 40 80 120 132.9 117.3 107.9 107.2 92.3 89.2 西武 広島 オリックス 巨人 ヤクルト ロッテ

※2008〜2017年ドラフト入団選手、ドラフト翌年から固定5年間のNPB STATS系WAR。7位以下: DeNA83.4・阪神80.3・楽天78.7・ソフトバンク77.9・日本ハム74.3・中日73.8。

ただし総WARは指名人数の影響を受ける。西武は62人指名しているが、1人平均WARでも西武2.14で1位。「人数を多く取っただけ」ではない。一方、中央値では阪神0.30が12球団トップで、大スターの影響を受けにくい「少しプラスになる選手」は歴史期の阪神にも多かった。しかし、ここから物差しを変えていくと、話は単純ではなくなる。

02成功ラインを変えるとロッテが浮上

5年累積WARで成功ラインを変えると、1位の顔ぶれが変わる。WAR>0なら阪神66.7%が1位。WAR>1ならロッテ37.5%が1位。WAR>2でもロッテ26.8%が1位。WAR>5・WAR>10になると西武が17.7%・9.7%で1位に戻る。阪神は小さなプラスを出す選手が多く、ロッテは一定以上の一軍戦力になる選手が多く、西武は大きな当たりが多い。

COMPARE総量の西武、成功率のロッテ。どちらも「1位」
西武(2008〜17年)
132.95年総WAR(1位)
2.141人平均WAR(1位)
ロッテ(2008〜17年)
37.5%WAR>1成功率(1位)
26.8%WAR>2成功率(1位)

結論ロッテは総WARでは6位(89.2)にとどまるが、一人の超大物に依存せず複数選手を一定以上の戦力にしている。西武は総量、ロッテは成功率という別々の「1位」。

成功率は入団後5年間の累積WAR基準。12球団平均はWAR>1で26.9%、WAR>2で18.4%。

ロッテの対象56人のうち、5年累積WAR>2は15人。鈴木大地13.4・石川歩11.3・中村奨吾9.8・清田育宏7.1・荻野貴司6.8・益田直也6.8・二木康太5.7・伊志嶺翔大4.3・田村龍弘4.0・大谷智久3.6・種市篤暉3.3・安田尚憲3.3・藤岡裕大2.9・松永昂大2.3・井上晴哉2.2。「戦力化率が高い」とは、一人の超大物ではなく、複数人がまんべんなく一軍戦力になっているということだ。

03一軍に出した=成功ではない

成功ラインをさらに分解すると、「一軍に出す力」と「戦力化させる力」は別物だとわかる。歴史期の中日は5年以内一軍到達率93.8%と非常に高いが、5年累積WAR>2率は13.8%にとどまる。近年の西武は22人中、一軍到達率100%でありながらWAR>2率はわずか4.5%、総pWARは-3.1とマイナスだった。「一軍に出た」=「ドラフト成功」ではない。

04スターを消しても西武は崩れない

西武の132.9は、秋山翔吾や源田壮亮など一部スターのおかげではないのか。それを確かめるため、全球団から同条件でスター選手を除外した再ランキングを作った。

DECISION FLOW西武は「一度の神ドラフト」ではない
  1. 通常の5年総WARで見ると、西武132.9で1位2位広島117.3、3位オリックス107.9を上回る歴代トップ。
  2. 全球団から最大WAR選手を1人ずつ除外しても、西武109.3で1位のまま秋山翔吾や源田壮亮を除いても順位は変わらない。
  3. 全球団から上位2選手ずつ除外しても、西武89.4で1位のまま2位広島73.8、3位オリックス70.2、4位ロッテ64.5、5位DeNA62.7。
  4. 2008〜2017年の10回のドラフトすべてで、WAR>2選手を最低1人輩出(10/10)12球団で唯一。一度の神ドラフトではなく、継続的な成果だった。

西武の強さは、秋山翔吾や源田壮亮など一部スターの偏りでは説明できない。複数年・複数順位・複数選手から高い成果を継続的に得ていた。

指名位置効率(2位以下、本人5年WAR-後続12人平均WAR)でも西武+1.10で1位。1巡目は入札抽選のため対象外。

西武の3位指名を並べても、浅村栄斗(全体25番・5年WAR9.3)、秋山翔吾(27番・23.6)、源田壮亮(32番・19.9)、外崎修汰(33番・10.5)と、全員が違うドラフト年からの「3位」の大当たりだ。単なる一度の成功では説明がつかない。

05下位指名がうまいのは中日・阪神・ロッテ

4位以下の下位指名だけで見ても、答えは一つではない。4位以下の5年総WARは中日32.0が1位、阪神30.2が2位、ソフトバンク24.8とロッテ24.8が3位タイ。4位以下のWAR>2成功率ではロッテ18.5%が1位、阪神14.8%が2位。中日は大島洋平という巨大成功が大きく、ロッテは複数選手の戦力化、阪神は総量・成功率の両方で上位という中身の違いがある。

06ドラ1なら巨人、西武の「3位」は異常

ドラ1(1位指名)だけで見ると、歴史期は巨人が強い。10人のドラ1で5年WAR合計74.3、1人平均7.43。近年(2018〜2020年)のドラ1合計は阪神47.7、楽天29.7、広島21.9。ただし成功率では楽天・広島は3人中3人が5年WAR>2に到達しており、総量の阪神・3年連続成功の楽天と広島とで評価軸が分かれる。

投手型・野手型にも球団差がある。歴史期の投手平均WARトップは巨人1.97、野手平均WARトップは広島3.53(西武野手は3.25)。近年の阪神は投手平均2.21・野手平均6.71とどちらも高い。

075年評価では日本ハムを見誤る

2008〜2012年指名者を10年間追跡すると、日本ハムは5年評価8位から10年評価3位へ浮上する。高卒選手は10年間に生むWARのうち最初の5年では約32%しか出ておらず、約68%が6〜10年目に生まれる。高卒中心の長期育成型球団は、5年固定窓だけでは評価が低く出やすい。

成長曲線で見ても、西武は1年8.2→3年60.6→5年132.9、広島は1年7.3→3年46.2→5年117.3と、ドラフト直後より3〜5年で差を広げるタイプ。一方、歴史期の巨人は1年目から16.1WARと即戦力寄りだった。

08阪神はいつから変わったか

近年の阪神の好調は、2018年に突然始まったわけではない。2008〜2012年は1人平均WAR0.93・WAR>2率3.8%だったのに対し、2013〜2017年は1人平均WAR1.81・WAR>2率22.6%まで上昇。当たりドラフト年率も20%から80%へ跳ね上がっている。

COMPARE阪神は2013年から変わっていた
阪神 2008〜2012年
0.931人平均WAR
3.8%WAR>2成功率
阪神 2013〜2017年
1.811人平均WAR
22.6%WAR>2成功率

結論当たりドラフト年率も20%から80%へ上昇。阪神の改善は2018年に突然始まったのではなく、2013〜2017年の時点ですでに進んでいた。

歴史期阪神の4位以下は5年総WAR30.2・WAR>2率14.8%で12球団トップ級。弱かったのは特に上位・上位野手。

歴史期阪神の2〜3位は5年総WAR16.6・WAR>2率5%と苦戦していたが、4位以下は5年総WAR30.2・WAR>2率14.8%と12球団トップ級だった。「昔の阪神は全部弱かった」わけではなく、弱かったのは特に上位・上位野手だった。

09近年2018〜2020年は阪神が突出

2018〜2020年入団選手の5年pWARランキングでは、阪神89.2が2位DeNA37.8の倍以上で1位。3位楽天37.1、4位ロッテ35.7、5位日本ハム29.6と続く。

図2 | 2018〜2020年 5年pWARランキング(上位5球団)
0 25 50 75 100 89.2 37.8 37.1 35.7 29.6 阪神 DeNA 楽天 ロッテ 日本ハム

※2018〜2020年ドラフト入団選手、ドラフト翌年から固定5年間のpWAR。6位以下: オリックス29.4・広島28.3・中日23.0・巨人19.4・ヤクルト9.1・ソフトバンク8.3・西武-3.1。歴史期NPB STATS WARとは系列が異なるため直接比較しない。

WHY HANSHIN, WHY NOW

近年阪神の中身

近本・佐藤だけでは説明できない突出

89.25年pWAR(2018〜20年・1位)
42.3近本佐藤を除いても(2位DeNA37.8超)
29.64位以下総pWAR(1位)

近本光司25.0、佐藤輝明21.9の二人だけでも大きいが、あえて阪神だけこの2人を除いて再計算しても42.3。誰も除外していないDeNAの37.8を上回る。近年阪神の成功は近本・佐藤だけでは説明できない。

成功率も5年累積pWAR>2率35%・>5率30%・>10率15%といずれも高く、中野拓夢・村上頌樹・伊藤将司など複数の成功がある。4位以下総pWARも29.6で1位。

ただし2019年組はWAR>2選手ゼロ(1.3)。2018年組31.8・2020年組56.1と年ごとの振れ幅もあり、「毎年必ず当てる」と呼ぶのはまだ早い。

1年ずつ除外しても阪神の1位は崩れない。2018年組を除外→阪神1位、2019年組を除外→阪神1位、2020年組を除外→阪神33.1で1位。2020年ドラフトだけで作った1位ではない。時系列でも、入団1年目は楽天10.7がトップで阪神7.4だったが、3年で阪神45.5、5年で89.2と時間が経つほど差が広がった。「即戦力を大量に取っただけ」でも説明できない。

さらに深掘り:短縮シーズン・移籍・年ごとの振れ幅の影響は?

2020年短縮シーズンの影響は?

2020年はコロナ禍で143試合が120試合に短縮された。感度分析として2020年組のpWARを機械的に143/120倍しても、阪神1位は変わらない。近年阪神の突出は短縮シーズンだけでは説明できない。

移籍による歪みは?

指名球団でのWARだけに絞っても、歴史期上位の大枠はほぼ変わらない。他球団へ移ってからの活躍だけでランキングが作られたわけではない。

年ごとの振れ幅をどう見るか

2019年組がWAR>2選手ゼロだった事実は消えない。近年阪神を「毎年必ず当てる長期安定型」と呼ぶのは、西武の2008〜2017年10年連続とは性質が違う。今回言えるのは「2018〜2020年の3年間の合計・年別除外テストで崩れなかった」というところまでで、来年以降も同じ水準が続くかは今回のデータの範囲を超える。

1012球団、それぞれの勝ち方

ここまでの物差しを球団ごとに一言でまとめると、次のようになる。

DETAIL DATA12球団、それぞれのドラフトの勝ち方
球団プロファイル
西武長期総合王者。安定供給・大当たり・指名位置効率も高い
広島長期総合2番手。複数ルートから主力供給
ロッテ多数戦力化型。WAR>1・WAR>2率が12球団トップ
DeNA歴史期は分散型、近年は牧秀悟という大型ヒット
オリックス歴史期の総成果は上位
巨人ドラ1・投手型。即戦力寄り
阪神歴史期は下位型、2013〜17年に改善、近年は総合型
日本ハム5年評価では見えにくい。10年評価で大きく浮上
中日下位発掘型。一軍到達率も高い
楽天上位から大きな成功を出すタイプ
ソフトバンク支配下では長期・下位に強み(育成は対象外)
ヤクルト大きな当たりが効くハイリターン型

支配下ドラフト指名選手の成果比較であり「育成力ランキング」ではない。育成ドラフト指名選手は対象外。

11結論:ランキングは一つに決まらない

今回の分析でわかったのは、「ドラフトが上手い球団」は一つには決まらないということだ。戦力化率ならロッテ、下位総量なら中日、下位の総量・成功率バランスなら阪神、5年では見えにくい長期成長なら日本ハム、2018〜2020年の近年成果なら阪神、指名位置効率(2位以下)なら西武が、それぞれの物差しで1位に来る。

そのうえで、2008〜2017年の長期総合で、物差しを変えても最も崩れなかったのは西武だった。総WAR、1人平均、スター除外、年次安定、10年追跡、指名位置補正。どの角度から疑っても、西武は上位に残り続けた。

この分析は「育成力ランキング」ではない。支配下ドラフトで指名した選手が、その後どれだけNPB一軍成果を得たかという「ドラフト成果」の比較であり、素材を見る目・スカウティング・育成・一軍起用・選手層・移籍などが混ざっている。育成ドラフト指名選手も対象外のため、「西武=育成力日本一」「ソフトバンクはドラフトが下手」といった断定はしない。この阪神が今後も同じように成果を積み重ね、長期でも「新しい西武」のような存在になっていくのか。答えが出るのは、まだ何年も先だ。

12評価の限界

あえて逆から見ると

「西武が育成力日本一と証明された」── 違う。今回測っているのは支配下ドラフトで指名した選手のその後の成果であり、育成ドラフト指名選手は対象外。ソフトバンクの「育成から出てくる」強みは、この分析だけでは評価できない。

「ロッテが最強のドラフト球団」── 言いすぎ。ロッテが1位なのはWAR>1・WAR>2の成功率のみで、総WARでは6位。「成功」の定義次第で1位は変わる。

「阪神は近年ずっと当たり続けている」── 違う。2019年組はWAR>2選手ゼロだった。3年間の合計・年別除外テストで崩れなかった、というところまでしか言えない。

「昔の阪神はドラフト全部が下手だった」── 違う。歴史期でも4位以下は12球団トップ級。弱かったのは特に上位・上位野手。

「西武と阪神を直接比べれば西武が上」── 言えない。西武(NPB STATS WAR)と阪神(pWAR)は系列も対象期間も異なり、同一ランキングで比較していない。

13動画・次回予告・関連記事

今回の分析でいちばん伝えたかったのは、「1位〜12位を発表すること」自体ではない。総WARで西武、成功率でロッテ、下位で中日・阪神・ロッテ、長期で日本ハム、近年で阪神。物差しを変えるたび、球団の違う強みが見えてくることだ。そのうえで、何度疑っても2008〜2017年の西武だけは上位からほぼ落ちなかった。これが、今回1203人を追った分析の一番大きな結論になる。

14SOURCES / 参照データ

※異なるWAR系列は足したり同じランキングに混ぜたりしていません。2021〜2023年入団選手は5年評価窓が完成していないため、固定5年WAR比較には含めていません。育成ドラフト指名選手は母集団に含まれません。本記事の割合・平均は筆者が上記データをもとに集計したものです。

免責: 本記事は公開されているドラフト指名情報と、NPB STATS系WARおよびぼーのpWAR等の公開指標をもとに、筆者が独自に整理・集計・分析したものです。育成ドラフト指名選手は対象外であり、本記事は「育成力ランキング」ではありません。特定の球団の指名方針や特定の選手の評価を推奨・否定するものではありません。実際の指名は球団ごとの戦力構成・候補者の評価・ポジション事情で変わります。特定の選手、球団、ファンを誹謗中傷する目的はありません。