NPB / ドラフト分析 / 投手 vs 野手

ドラ1は野手が正解?NPB1203人のWARで検証したら「同評価なら投手先」が見えた

検証対象
1203人
2008〜2023年のドラフト入団選手。主系列は2008〜2017年の固定5年WAR
ドラ1の平均5年WAR
投手3.46・野手4.96
平均と大当たり率は野手が上。ただし分布全体の差は明確ではない
2位終了後にWAR10+野手が残った年
10年中8年
3位以降で5年WAR10以上は投手2/280人、野手9/236人
30 SEC REVIEW

30秒で分かる、ドラ1は野手か投手か

  1. 01
    「投手は後ろでも取れる」は言いすぎ

    上位1〜3位と4位以下で平均5年WARは投手も野手も大きく落ちる。下位の成功例だけで一般化できない。

  2. 02
    ドラ1野手は「圧勝」ではない

    平均と大当たり率は野手が上。ただしプラスWARになる割合はほぼ同じで、分布全体の差は明確ではない。

  3. 03
    投手は早さ、野手は大当たり

    1年目にWARプラスは投手寄り、5年WAR10以上は野手寄り。成功の定義で答えが変わる。

  4. 04
    本当に面白かったのは2位・3位

    2位終了後にも後のWAR10以上野手が残った年は10年中8年。9人全員が大学・社会人ルートだった。

この記事の数字について

対象は2008〜2023年のNPBドラフト入団選手1203人。主系列は2008〜2017年入団選手をNPB STATS系WARで、ドラフト翌年から固定5年間で比較したもの。2018〜2020年は別系列(ぼーのpWAR等)で方向だけを確認し、計算方法の異なるWARは足したり同じランキングに混ぜたりしていない。2021〜2023年は5年評価窓が完成していないため、固定5年比較には含めない。投手/野手はドラフト時点の区分で扱う。動画版では「最終採点」を20:38から見られる。

阪神のドラ1野手を並べてみる。近本光司、大山悠輔、佐藤輝明、森下翔太、立石正広。これを見ると、「やっぱりドラ1は野手でしょ?」と思いたくなる。よくあるドラフト論もそれを後押しする。野手は素材が重要。いい野手はドラ1で消える。投手は中位や下位からでも出てくる。だから上位は野手に使うべき。

では、本当にそうなのか。そこで2008〜2023年のNPBドラフト入団選手1203人を整理し、WARを使って検証した。調べてみると、「ドラ1は野手」という一言では片付かない構造が見えてきた。最初の単純な仮説が少しずつ精密化されていく、その順番どおりに追っていく。

01「投手は後ろでも取れる」は本当か

まず、上位論の土台になっている「投手は中位・下位からでも出てくる」を確かめる。上位1〜3位と4位以下を固定5年WARで比べると、投手は平均2.21から0.63へ、野手は2.97から0.46へ落ちる。投手も野手も、後ろの順位になるほど平均WARは大きく低下する。

COMPARE投手も野手も、4位以下で平均WARは大きく落ちる
上位1〜3位
2.21投手 平均5年WAR
2.97野手 平均5年WAR
4位以下
0.63投手 平均5年WAR
0.46野手 平均5年WAR

結論順位とのスピアマン順位相関は投手ρ=-0.267、野手ρ=-0.229でともに弱い負の関係。下位からスター投手が出ることはあるが、成功例だけを見て「投手は後ろで十分」と一般化するのは危険。

2008〜2017年ドラフト入団選手、ドラフト翌年から固定5年間のNPB STATS系WAR。

順位との相関を見ても、投手ρ=-0.267、野手ρ=-0.229と、どちらも弱い負の関係で、投手だけが例外というわけではない。下位からスター投手が出ることはある。しかし成功例だけを見て「投手は後ろで十分」と一般化するのは危険だ。投手も上位で取る価値がある。ここが今回の出発点になる。

02ドラ1だけなら野手が得なのか

次に、ドラ1だけを切り出す。2008〜2017年のドラ1で固定5年WARを比べると、平均は投手3.46、野手4.96。中央値は投手1.10、野手1.40。WAR10以上に到達した割合は投手10.7%、野手20.0%。WAR15以上なら投手2.4%、野手11.4%。ここだけ見れば、たしかに野手が上に見える。

COMPAREドラ1だけなら野手が上。ただし「圧勝」ではない
ドラ1 投手
3.46平均5年WAR
1.10中央値
10.7%WAR10以上
ドラ1 野手
4.96平均5年WAR
1.40中央値
20.0%WAR10以上

結論5年WARがプラスになる割合は投手72.6%、野手71.4%でほぼ同じ。分布全体の差はp値0.683で明確に確認できず、「ドラ1は野手」と固定する根拠にはならなかった。

WAR15以上は投手2.4%、野手11.4%。2008〜2017年のドラ1、固定5年WAR。

ところが、5年WARがプラスになった割合は投手72.6%、野手71.4%でほぼ同じ。分布全体の差を検定するとp値は0.683で、明確な差は確認できない。平均と大当たり率は野手が上。ただし「ドラ1野手が圧勝」とまでは言えない。今回のデータでは、「ドラ1は野手」と固定する根拠にはならなかった。

03投手と野手の違いは「早さ」と「大当たり」

では、投手と野手の違いはどこにあるのか。上位1〜3位で、評価する期間と成功ラインを動かしてみる。1年目にWARがプラスだった割合は投手38.9%、野手20.4%。3年累積でプラスは投手56.6%、野手43.1%。ここまでは投手が高い。ところが3年でWAR5以上は投手10.0%、野手9.5%でほぼ並び、5年でWAR10以上になると投手5.4%、野手13.1%と逆転する。WAR15以上では投手1.4%、野手7.3%。

図1 | 時間 × 成功ライン(上位1〜3位、投手 vs 野手)
0 20 40 60 38.9 20.4 56.6 43.1 10.0 9.5 5.4 13.1 1.4 7.3 1年 WAR>0 3年 WAR>0 3年 WAR5以上 5年 WAR10以上 5年 WAR15以上
投手 野手 単位:%(到達した選手の割合)

※2008〜2017年ドラフト上位1〜3位、NPB STATS系WAR。「1年」「3年」「5年」はドラフト翌年からの累積期間。

「来年なら投手、5年後なら野手」だけでは不十分だ。時間だけでなく、「どこまで働けば成功と呼ぶのか」でも答えが変わる。一言でまとめるなら、早い戦力化は投手寄り、大当たりは野手寄り。ドラ1の時間軸でも同じで、1年平均WARは投手0.63、野手0.29、3年累積は投手1.99、野手1.74と投手が先行し、5年累積で投手3.46、野手4.96と野手が上回る。来年から勝ちたい球団が即戦力投手を上位で取ることには合理性がある。ただし、それを「常に投手が正解」と一般化しない。

04野手の大当たりはどこから来るのか

野手の平均が高い理由を分解する。上位1〜3位で5年WARがプラスになった選手だけを比べると、投手の平均3.61に対して野手は6.00。比にして約1.66倍だ。ただし、これは「野手全体が投手の1.66倍」という意味ではない。あくまでプラスになった選手だけの平均である。

WHERE THE UPSIDE COMES FROM

野手の大当たり

平均を押し上げているのは、一部の大当たり野手

6.00プラスWAR者の平均5年WAR(投手3.61)
60.8%WAR総量に占める上位10%(投手55.4%)
11.7%5年内に単年WAR5以上(投手1.4%)

上位1〜3位で5年WARがプラスになった選手だけを比べると、野手の平均は投手の約1.66倍。ただし各グループの上位10%を除くと投手1.09、野手1.29まで差は縮む。「平均的な野手が全部強い」のではなく、一部の大当たり野手が全体平均を強く押し上げている。

単年WAR5以上に到達した野手は16/137人、投手は3/221人。5年累積プラス選手のベストシーズンWAR平均も野手3.00、投手1.58で、野手の大きな5年WARは「5年間積み上げたから」だけでは説明できない。

大当たり野手は出場量も多く、機会当たりの貢献も高い方向だった。出場量が原因なのか、高い能力ゆえに出場量を得たのかという因果までは決めない。

通常の平均WARは投手2.21、野手2.97。ここから各グループの上位10%を除外すると投手1.09、野手1.29まで差が縮む。WAR総量のうち上位10%が占める割合は投手55.4%、野手60.8%。「平均的な野手が全部強い」というより、一部の大当たり野手が全体平均を強く押し上げている。

しかも「5年間積み上げたから大きい」だけではなかった。最初の5年間のうちに単年WAR5以上へ到達した割合は投手1.4%(3/221人)、野手11.7%(16/137人)。5年累積がプラスだった選手のベストシーズンWAR平均も投手1.58、野手3.00。単年でも大きなWARを出した野手が多かった。追加確認では、大当たり野手は出場量も多く、機会当たりの貢献も高い方向だった。ただし、出場量が原因なのか、高い能力ゆえに出場量を得たのか、因果までは決めない。

05本当に面白かったのは2位・3位

ドラ1を見ているうちに、気になり始めたのが2位・3位だった。2〜3位の累積WAR平均は、1年目で投手0.25、野手0.02。3年で投手0.89、野手0.85とほぼ並び、5年で投手1.44、野手2.29と野手が上回る。3年累積でプラスになった割合は投手51.1%、野手36.3%で投手側が高い。ここまではドラ1と同じ構造で、投手は価値を前倒しで出しやすい。

DECISION FLOW2位・3位で、投手と野手はどう違うのか
  1. 2〜3位全体を低い成功ラインで見ると、投手寄り5年WARプラスは投手57.7%、野手48.0%。3年累積プラスも投手51.1%、野手36.3%で投手側が高い。
  2. 成功ラインを上げると、WAR10以上は投手2.2%、野手10.8%WAR5以上でも投手8.8%対野手15.7%、WAR15以上でも投手0.7%対野手5.9%と野手側が上回る。
  3. ドラ3だけに絞ると、WAR10以上は投手0/57人、野手6/63人秋山翔吾・鈴木大地・田中広輔・外崎修汰・茂木栄五郎・源田壮亮の6人。
  4. 2〜3位の大学・社会人に限ると、WAR10以上は投手3.4%、野手17.2%3/88人と10/58人、オッズ比5.90。2008〜2017年を1年ずつ除いた再計算でも10回すべて野手側で、9回で有意。

「即戦力投手が欲しい」という理由だけで、2〜3位の大学・社会人野手を候補から外すのは危ない可能性がある。ただし「最もお得な指名層」のような固定ルールにはできない。

2018〜2020年のぼーのpWARでも同じ方向は確認したが、pWAR adv.など別の指標では差の大きさ・確かさは弱まった。完全再現とは言わない。

違いが出るのは成功ラインを上げたときだ。2〜3位全体で5年WARプラスは投手57.7%、野手48.0%と投手寄り。ところがWAR5以上は投手8.8%、野手15.7%。WAR10以上は投手2.2%、野手10.8%。WAR15以上は投手0.7%、野手5.9%。ドラ3だけに絞るとさらに印象的で、5年WAR10以上は投手0/57人に対して野手6/63人。秋山翔吾、鈴木大地、田中広輔、外崎修汰、茂木栄五郎、源田壮亮の6人だ。

そして2〜3位の大学・社会人に限ると、5年WAR10以上は投手3/88人(3.4%)、野手10/58人(17.2%)。オッズ比は5.90。3年以内に一度でも単年WARプラスになった割合は投手70.5%、野手62.1%で明確な差はないのに、大当たりの割合だけが大きく違う。「即戦力投手が欲しい」という理由だけで、2〜3位の大学・社会人野手を候補から外すのは危ない可能性がある。これは動画でも大きな発見の一つだった。

ただし投手側にも補足がある。2018〜2020年の上位投手で役割を確認すると、先発として大きく働く成功ルートと、救援として戦力になる成功ルートの両方があった。投手は野手より役割の種類が多い。だからといって「先発で失敗しても救援へ回せば必ず回収できる」とまでは言えず、それだけで「外しにくい」と因果まで断定しない。

062位終了後にも大当たり野手は残っていた

ここで、今回の最終結論を強めた追加分析に入る。同じ巡目内の順番は推測せず、2位終了時点で確実に未指名だった「3位以降」だけを見る。3位以降で5年WAR10以上に到達したのは、投手2/280人、野手9/236人。そして2008〜2017年の10ドラフトのうち、2位終了後にも後のWAR10以上野手が残っていた年は8年あった。

DETAIL DATA2位終了後にも残っていた、後の5年WAR10以上野手
ドラフト年選手指名順位
2009大島洋平5位
2010秋山翔吾3位
2011鈴木大地3位
2013田中広輔3位
2014外崎修汰3位
2015茂木栄五郎3位
2016源田壮亮3位
2016糸原健斗5位
2017塩見泰隆4位

同じ巡目内の順番は推測せず、2位終了時点で確実に未指名だった3位以降だけを対象にした。3位以降で5年WAR10以上に到達したのは投手2/280人、野手9/236人。2008〜2017年の10ドラフト中8年で野手が残っていた。9人中6人がドラ3、9人全員が大学・社会人ルート。

9人中6人がドラ3、9人全員が大学・社会人ルート。ここで言い方に注意したい。「野手は待てる」ではない。正確には「大当たり野手はドラ1で全部売り切れるわけではなかった。2位終了後にも残っていた年が多かった」だ。佐藤輝明級の明確なドラ1級野手は当然ドラ1で消える。全ての年、全ての野手が待てるわけではない。

一方で、3位終了後の4位以降まで同じ野手優位が続くとは確認できなかった。「ドラ1で野手は全部売り切れ」でもない。「野手は下位でいい」でもない。今回もっとも気になったのは、2位〜3位付近だった。

07高卒野手は本当に「素材買い」なのか

上位論のもう一つの柱、「野手は高卒の素材を上位で」も確かめる。上位1〜3位野手を固定5年で見ると、平均WARは高卒1.70、大学・社会人4.05。WAR10以上は高卒6.6%、大学・社会人18.7%。分布差のp値は約0.052で境界にあり、「明確に差あり」とまでは言わない。それでも固定5年では大学・社会人側が上に見える。

図2 | 高卒 vs 大学・社会人(上位1〜3位野手、平均WAR)
0 2 4 6 8 1.70 4.05 6.89 3.40 固定5年(ドラフト翌年から) 27歳になる年まで
高卒 大学・社会人 単位:平均WAR

※2008〜2017年ドラフト上位1〜3位野手、NPB STATS系WAR。固定5年の分布差はp≈0.052(境界)、27歳までの分布差はp≈0.728(明確な差なし)。

ただし、高卒は5年後でもまだ23歳前後。同じ5年比較には年齢差がある。そこで評価期間を「27歳になる年まで」に揃えると、平均WARは高卒6.89、大学・社会人3.40。WAR10以上は高卒19.4%、大学・社会人11.8%。分布全体のp値は約0.728で、明確な差はない。固定5年だけ見て「高卒野手は弱い」とするのは言いすぎだ。評価期間を変えると見え方が大きく変わる。

27歳までのWARで高卒野手の上位を並べると、山田哲人47.7、鈴木誠也44.8、西川遥輝30.3、筒香嘉智28.1、浅村栄斗24.7。高卒野手は、早くプロに入れる「時間」と、巨大な上振れを狙う指名でもある。ここも「高卒が大学・社会人より優れている」とは言わない。物差しが違えば答えが変わる、という話だ。

08守備位置や指名順序まで固定できるのか

「2〜3位で野手なら、どのポジションか」も見た。2008〜2017年の2〜3位野手で平均5年WARは外野手3.23、内野手2.71、捕手0.38。ただし別年代では順位が入れ替わる。「2〜3位なら内野」「外野が正解」「捕手は避ける」のような固定ルールまでは作れない。

指名順序の固定も同じだ。歴代平均の単純合計で「1位野手+3位投手」は5.90、「1位投手+3位野手」は5.76。差は0.14でほぼ同じ。しかも同じ年の候補層を揃えた戦略比較ではない。「必ず1位野手から」の根拠にはならない。上位3枠に野手を2〜3人入れた場合の合計WAR平均は8.64で、野手0〜1人の7.06より高く、WAR10以上を1人以上持てた割合も17.8%から36.7%へ上がる方向だった。ただし合計WAR平均には明確な差を確認できず、「上位3枠は野手2枚」と固定するところまでは行かない。

さらに深掘り:この結果はどこまで頑健なのか(回帰分析・年代・指標の違い)

特定の豊作年だけで作られた結果ではない

2〜3位・大学社会人野手の大当たりが、特定の1年だけで説明されていないかを確かめるため、2008〜2017年を1年ずつ除いて10回再計算した。結果は10回すべてで野手側、9回で有意。特定の1年だけで全部説明される結果ではなかった。

回帰分析でもWAR5以上は野手側の方向が残る

上位1〜3位で5年WAR5以上を目的変数にした探索的ロジット分析では、基本モデルのオッズ比2.04、年度を加えて2.28、球団を加えて2.20、最終モデルで2.44。通常モデルのp値は約0.009、95%信頼区間は1.25〜4.80。ただし年度内の共通性を厳しめに見るとp値は約0.10まで弱まり、球団単位では約0.03。これは因果効果ではない。「野手だからWAR5以上になる」と証明したものではない。

近年組・別指標では差の強さが変わる

2018〜2020年をぼーのpWARで別系列として確認すると、2〜3位の大学・社会人野手側に大きな結果が出る傾向は残った。ただしpWAR adv.など別の合理的な評価方法を使うと、差の大きさ・確かさは弱まる。だから「完全再現」とは言わない。正確には「別年代・別指標でも同じ方向は確認したが、指標によって差の強さは変わった」。

09最終採点

ここまでの検証で、冒頭に並べた「よくあるドラフト論」を採点する。

  • ×「投手は後ろで十分」:上位平均2.21に対し、4位以下0.63。下位の成功例だけで「後ろでOK」とは言えない。
  • △「ドラ1は野手が得」:平均と大当たり率は野手が上。ただしドラ1全体で野手優位と決着したわけではない。
  • ×「主力野手はドラ1で消える」:2位終了後でも、10年中8年で後にWAR10以上になる野手が残っていた。
  • △「高卒素材野手を上位で」:固定5年平均では大学・社会人側が上。27歳まで揃えると明確な差なし。
  • ○「投手は早く価値を出す」:1年WARプラスは投手38.9%、野手20.4%。
  • ○「野手は大当たりが大きい」:5年WAR10以上は投手5.4%、野手13.1%。
  • 注目「2〜3位の大学・社会人野手」:WAR10以上は投手3.4%、野手17.2%。

10結論:一般論ならどう指名する?

ここは、分析結果と「提案」を分けて書く。数字から直接分かったことは4つ。大当たり投手は後ろの順位でかなり少ない。大当たり野手は2位終了後にも残る年が多い。投手は早い戦力化で優位。野手は大当たりで優位。

そこから考える一般論は、「同じくらいの評価なら、上位では投手を先に考える。一方、野手は2位・3位まで主力候補を探し続ける」。今回の数字には、この戦略が最も整合的だった。

ただし、これは「投手なら何でも野手より先」という意味ではない。佐藤輝明級の明らかなドラ1級野手は当然ドラ1で消える。また実際の指名は、遊撃が弱い、捕手がいない、中軸候補がいない、ローテが足りない、左腕が不足している、といった球団ごとの戦力構成で変わる。

最後に、冒頭の阪神ドラ1野手5人に戻る。今回の分析は、近本、大山、佐藤、森下、立石の成功を否定するものではない。むしろ「阪神のドラ1野手が成功している」ことと「NPB全体でドラ1を野手固定にする」ことは別問題だ。佐藤のような明確なドラ1級野手はドラ1で消える。一方で、後に大きなWARを残した大学・社会人野手が2位・3位にも残っていた年も多かった。阪神の5人を見て立てた仮説は、半分正しく、半分一般化しすぎだった。

11評価の限界

あえて逆から見ると

「ドラ1は投手が正解と証明された」── 違う。同程度の評価なら上位で投手を先に考える、という一般論であり、ドラ1全体で投手優位と決着したわけではない。

「野手は3位まで待てばいい」── 違う。2位終了後にも大当たり野手が残る年が多かっただけで、全ての年・全ての野手が待てるわけではない。佐藤輝明級の野手は待てない。

「2〜3位の大学・社会人野手がNPBで最もお得な指名層」── 言いすぎ。今回の大当たり率では投手より高く見落とせない層だったが、固定ルールにはできない。別指標では差の強さも変わった。

「投手は先発で失敗しても救援で必ず回収できる」── 言えない。先発と救援の2つの成功ルートがあるという整理までで、因果は断定していない。

「高卒野手は大学・社会人より優れている」── 言えない。固定5年では大学・社会人が上、27歳まで揃えると明確な差なし。物差しで答えが変わる。

「球団の穴を見れば最適戦略が決まる」── 決まらない。戦力構成は優先度を変える要因の一つで、今回の分析は投手/野手の供給構造を見たものにすぎない。

12動画・次回予告・関連記事

今回1203人を調べて分かったのは、「野手か投手か」を一言で決めること自体が難しい、ということだった。投手は早く戦力になりやすい。そして大当たり投手は、後ろの順位になるとかなり少ない。一方、野手は大当たり時のWARが大きい。しかも、後に大きなWARを残した野手が2位終了後にも残っていた年は10年中8年あった。

では、佐藤輝明級のドラ1野手がいて、既存選手とポジションが重複していても取りに行くべきなのか。そこは今回まだ答えていない。これは投手/野手の供給構造とは別の問いだ。次は「重複覚悟の野手特攻は正しいのか?」を改めて数字で検証したい。

13SOURCES / 参照データ

※異なるWAR系列は足したり同じランキングに混ぜたりしていません。2021〜2023年入団選手は5年評価窓が完成していないため、固定5年WAR比較には含めていません。本記事の割合・平均・検定値は筆者が上記データをもとに集計したものです。

免責: 本記事は公開されているドラフト指名情報と、NPB STATS系WARおよびぼーのpWAR等の公開指標をもとに、筆者が独自に整理・集計・分析したものです。回帰分析・検定値・オッズ比は探索的な分析であり、因果効果を示すものではありません。「同程度の評価なら上位で投手を先に考える」という記述は今回のデータから導いた一般論であり、特定の球団の指名方針や特定の選手の評価を推奨・否定するものではありません。実際の指名は球団ごとの戦力構成・候補者の評価・ポジション事情で変わります。特定の選手、球団、ファンを誹謗中傷する目的はありません。