阪神と巨人、後半戦はどちらが上か|投手陣・故障者復帰・最終勝敗シナリオ
※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。
この記事は前編(チーム全体・野手比較)の続きで、投手陣・故障者の復帰・後半戦の勝敗予測を扱います。動画版は第2部です。
記事側では、動画で結論だけをお伝えした予測の計算式・係数・選手別のイニング配分、そしてモデルの限界まで開示しています。
投手陣にも、野手と同じ「スター型の阪神」対「層型の巨人」の構図が出ています。阪神は髙橋遥人(FIP-63)と才木浩人(SIERA-57)の上位2枚が突出。巨人は井上温大・ウィットリー・竹丸・小笠原・山﨑と崩れにくい枚数を持っています。投手WARの総量は巨人が8.5対6.8で上。
故障者復帰は「巨人だけの伸びしろ」ではありません。本人分の残りWARは阪神2.08に対して巨人0.80で、むしろ阪神の方が大きい。ただし巨人は主力級4人を欠いた状態で首位に並んでいます。
残りWARから試算した最終勝数は中央で阪神79.6勝、巨人77.4勝。差は約2.2勝ですが、レンジ(阪神74.6〜83.2/巨人72.6〜81.6)は大きく重なります。予測上もマッチレースです。
前編では、阪神が打撃WAR17.8で突き放し、巨人が守備3.1と投手8.5で食らいついているという構図を確認しました。この後編では、その投手8.5の中身と、後半戦に何がどれだけ上積みされるのかを見ていきます。
WAR・FIP-・xFIP-・SIERA-・K-BB%はNPB Basementの推計値で、公式記録ではありません。また後半の予測パートは選手別の残り出場機会とWARを積み上げたシナリオ試算であり、確定予言ではありません。係数は比較用の仮置きで、過去年度でのバックテストは行っていません。詳しくは§09〜§10で開示します。
01投手WARの現在値 ── 総量は巨人
前半戦終了時点の投手WARは、阪神6.8に対して巨人8.5。1.7の差で巨人が上です。
この差がどこから来ているかを役割別に見ると、先発で巨人が上回り、中継ぎでも巨人が上、抑え・高レバでも巨人が上、という構図になります。つまり投手に関しては、巨人がすべての役割で小幅に勝っている状態です。
今回参照した資料には、役割別(先発/中継ぎ/抑え・高レバ)の投手WARが2系統存在し、基準日と集計定義が異なります。たとえば阪神の中継ぎは-1.4と-0.5、巨人の抑え・高レバは2.7と1.6という具合に、最大1.1ほどの差がありました。
役割の切り分け方が変わると数値も変わるため、本記事では役割別WARの細かい数値を主役にせず、個々の投手の指標を見ていきます。「上位2枚の質は阪神、ローテとブルペンの枚数は巨人」という構図自体は、どちらの系統でも変わりません。
02先発陣 ── 上位の質の阪神、枚数の巨人
| 投手 | IP | WAR | K-BB% | FIP- | xFIP- | SIERA- | HR/FB% | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 髙橋 遥人 | 111.3 | 3.1 | 23.0 | 63 | 69 | 69 | 4.8 | 圧巻。開幕10連勝 |
| 才木 浩人 | 106.3 | 2.5 | 26.1 | 70 | 68 | 57 | 6.7 | 中身はエース級 |
| 村上 頌樹 | 124.3 | 1.1 | 16.6 | 93 | 93 | 94 | 7.3 | 平均より少し良い |
| 大竹 耕太郎 | 70.7 | 0.4 | 11.7 | 100 | 97 | 107 | 7.3 | 大崩れしにくい |
| 西 勇輝 | 30.0 | 0.0 | 7.3 | 130 | 131 | 136 | 5.9 | — |
| 伊原 陵人 | 26.7 | -0.2 | 11.8 | 126 | 124 | 110 | 7.9 | 一軍では苦戦 |
| 伊藤 将司 | 19.7 | 0.1 | 15.2 | 105 | 94 | 97 | 9.1 | 小標本 |
| 下村 海翔 | 17.0 | 0.1 | 17.1 | 102 | 86 | 85 | 11.1 | 上積み余地あり |
| E.ルーカス | 14.7 | 0.2 | 17.2 | 107 | 85 | 89 | 11.8 | 腰部疲労骨折明け |
| 茨木 秀俊 | 12.7 | -0.2 | 3.2 | 152 | 133 | 133 | 11.1 | — |
| 投手 | IP | WAR | K-BB% | FIP- | xFIP- | SIERA- | HR/FB% | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 井上 温大 | 94.0 | 2.1 | 20.1 | 77 | 76 | 79 | 6.5 | 巨人先発の安定軸 |
| F.ウィットリー | 81.7 | 1.3 | 18.8 | 91 | 91 | 83 | 5.8 | 新外国人の成功例 |
| 田中 将大 | 53.7 | 1.2 | 10.3 | 85 | 97 | 107 | 3.3 | 復活も支配的ではない |
| 戸郷 翔征 | 52.3 | 0.9 | 17.6 | 86 | 105 | 90 | 2.7 | 復調後に離脱 |
| 竹丸 和幸 | 91.0 | 0.7 | 17.6 | 97 | 91 | 89 | 8.0 | 安定したイニング供給 |
| B.マタ | 19.3 | 0.4 | 8.2 | 103 | 121 | 112 | 0.0 | 結果ほど内容は強くない |
| 西舘 勇陽 | 31.3 | 0.3 | 14.0 | 122 | 116 | 108 | 7.4 | 層の一枚 |
| 山﨑 伊織 | 11.3 | 0.2 | 10.4 | 114 | 108 | 115 | 6.7 | 右肩から復帰・IP小 |
| 小笠原 慎之介 | 13.0 | 0.2 | 25.0 | 72 | 73 | 57 | 0.0 | 2登板。内容良好 |
| S.ハワード | 9.3 | 0.1 | 16.3 | 61 | 93 | 83 | 0.0 | — |
| 則本 昂大 | 51.0 | -0.1 | 10.0 | 128 | 112 | 119 | 9.5 | FA加入 |
阪神の上位2枚は、指標で見ても本物です。髙橋遥人のFIP-63は「リーグ平均より37%失点を防いでいる」水準。才木浩人はK-BB%26.1、SIERA-57で、むしろ髙橋を上回る項目もあります。
村上頌樹は7月26日の巨人戦で9回無失点完封を記録し、124.3回・WAR1.1まで来ました。FIP-93、xFIP-93。「悪い」のではなく「上位2人ほど圧倒的ではない」という位置づけが正確です。
巨人は突出した1枚こそないものの、井上2.1・ウィットリー1.3・田中将1.2・戸郷0.9・竹丸0.7と1.0前後が5枚並びます。さらに山﨑伊織が右肩から復帰し、小笠原慎之介が2登板でK-BB%25.0・SIERA-57という好内容を出しています。
表を読むときに注意したいのが、FIP-とxFIP-/SIERA-が大きく乖離している投手です。
田中将大:FIP-85は良い数字ですが、xFIP-97・SIERA-107。被本塁打率HR/FB3.3%が低く出ている影響で、実力以上に良く見えている可能性があります。B.マタも同様で、FIP-103に対しxFIP-121・SIERA-112、HR/FBは0.0%。戸郷もHR/FB2.7%と低く、xFIP-105はFIP-86より明らかに悪い。
逆方向もあります。阪神の下村海翔はFIP-102ですがxFIP-86・SIERA-85で、内容は結果より良い。被本塁打の出方が平均へ戻れば、数字が改善する余地があるということです。
03ブルペン ── 赤字の実態と役割の形
ここは動画では触れきれなかった部分です。中継ぎ・低レバまで含めた全投手の指標を出します。
| 投手 | 役割 | IP | WAR | gmLI | K-BB% | FIP- | xFIP- | SIERA- | HR/FB% |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| R.ドリス | 抑え/高レバ | 34.3 | 1.0 | 1.8 | 22.5 | 58 | 68 | 69 | 3.0 |
| 工藤 泰成 | 高レバ候補 | 32.7 | 0.7 | 1.1 | 22.0 | 52 | 70 | 68 | 0.0 |
| 岩崎 優 | 抑え | 30.0 | 0.1 | 1.9 | 16.8 | 82 | 87 | 90 | 5.4 |
| 木下 里都 | 中レバ | 23.3 | 0.0 | 1.2 | 11.9 | 106 | 90 | 83 | 15.4 |
| 及川 雅貴 | 中継ぎ | 20.7 | -0.6 | 0.8 | 3.3 | 154 | 130 | 134 | 13.6 |
| 湯浅 京己 | 中低レバ | 19.3 | -0.1 | 0.8 | 13.9 | 92 | 97 | 99 | 5.9 |
| D.モレッタ | 中低レバ | 16.0 | -0.1 | 1.2 | 21.4 | 130 | 86 | 74 | 15.8 |
| 桐敷 拓馬 | 中低レバ | 15.3 | -0.2 | 1.4 | 5.4 | 138 | 122 | 115 | 10.5 |
| 門別 啓人 | 中低レバ | 14.0 | -0.1 | 0.5 | 6.8 | 138 | 117 | 130 | 9.1 |
| 早川 太貴 | 中低レバ | 11.7 | -0.2 | 1.1 | 13.0 | 166 | 110 | 104 | 18.8 |
| 畠 世周 | 中低レバ | 10.7 | -0.1 | 0.8 | 10.3 | 121 | 100 | 106 | 12.5 |
| 津田 淳哉 | 中低レバ | 8.3 | -0.1 | 0.4 | 5.7 | 132 | 120 | 131 | 9.1 |
| 今朝丸 裕喜 | 中低レバ | 8.0 | -0.1 | 0.5 | 2.8 | 148 | 146 | 146 | 7.7 |
| 椎葉 剛 | 中低レバ | 7.0 | -0.3 | 0.4 | -2.9 | 265 | 150 | 153 | 27.3 |
| A.セベリーノ | 低レバ | 4.0 | -0.1 | 0.7 | 5.9 | 190 | 128 | 126 | 25.0 |
| 石井 大智 | 高レバ復帰候補 | 0 | 0 | — | — | — | — | — | — |
| 投手 | 役割 | IP | WAR | gmLI | K-BB% | FIP- | xFIP- | SIERA- | HR/FB% |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| R.マルティネス | 抑え | 35.3 | 1.3 | 2.7 | 24.8 | 58 | 71 | 64 | 2.9 |
| 大勢 | セットアッパー | 29.3 | 0.7 | 1.8 | 24.5 | 73 | 73 | 65 | 6.7 |
| 田中 瑛斗 | 高レバ候補 | 33.0 | 0.4 | 1.7 | 6.7 | 86 | 111 | 115 | 0.0 |
| 中川 皓太 | 中/高レバ | 23.7 | 0.3 | 1.5 | 15.6 | 93 | 87 | 88 | 8.0 |
| 赤星 優志 | 中低レバ | 38.0 | 0.3 | 1.2 | 11.8 | 103 | 100 | 107 | 6.7 |
| 船迫 大雅 | 高レバ候補 | 20.0 | 0.0 | 1.9 | 7.5 | 111 | 116 | 122 | 4.0 |
| 田和 廉 | 中低レバ | 25.3 | 0.0 | 0.8 | 5.7 | 103 | 121 | 119 | 0.0 |
| 堀田 賢慎 | 中低レバ | 19.3 | 0.0 | 0.4 | 11.1 | 95 | 112 | 121 | 3.2 |
| 森田 駿哉 | 中低レバ | 18.7 | -0.1 | 0.9 | 5.7 | 150 | 120 | 135 | 10.3 |
| 高梨 雄平 | 中低レバ | 10.0 | -0.1 | 1.3 | 14.0 | 134 | 93 | 94 | 13.3 |
| E.ルシアーノ | 中低レバ | 12.0 | -0.3 | 1.0 | 5.9 | 155 | 128 | 131 | 11.8 |
| 石川 達也 | 中低レバ | 6.3 | -0.3 | 0.3 | 2.9 | 216 | 147 | 147 | 18.2 |
| 北浦 竜次 | 中低レバ | 9.7 | -0.4 | 1.0 | 7.0 | 194 | 104 | 120 | 27.3 |
阪神のブルペンは、上位はドリス(FIP-58)と工藤泰成(FIP-52)で形が見えています。ただしそれ以外は0前後からマイナスが並び、役割全体で見るとまだ赤字です。
特に及川雅貴のWAR-0.6は、前半戦の救援における最大のマイナス要因でした。K-BB%3.3、FIP-154。復調を確認しないまま高レバレッジで起用するのは危険な水準です。
D.モレッタはFIP-130と結果は悪いのですが、xFIP-86・SIERA-74・K-BB%21.4。被本塁打(HR/FB15.8%)が過剰に出ているだけで、内容自体は良いと読めます。木下里都も同様で、WAR0.0ながらxFIP-90・SIERA-83、HR/FBは15.4%。
この2人は、被本塁打の出方が平均へ戻れば後半戦に上積みが期待できる枠です。逆に椎葉剛(HR/FB27.3%)とセベリーノ(同25.0%)は、標本が7.0回・4.0回と小さすぎて判断材料になりません。
巨人のブルペンは人数がいます。中川・田中瑛・船迫・赤星と役割を持てる投手が並ぶ。ただし田中瑛斗(FIP-86に対しxFIP-111・SIERA-115)と船迫大雅(FIP-111・SIERA-122)は基礎指標が盤石ではありません。層の厚さと質は分けて評価する必要があります。
04抑え・高レバ ── 終盤力は巨人が小幅優位
接戦の終盤を任せられる投手の比較です。gmLI(登板場面の重要度)を併記します。
| 球団 | 投手 | IP | WAR | gmLI | K-BB% | FIP- | 状態 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 巨人 | R.マルティネス | 35.3 | 1.3 | 2.7 | 24.8 | 58 | 稼働中 |
| 阪神 | R.ドリス | 34.3 | 1.0 | 1.8 | 22.5 | 58 | 稼働中 |
| 巨人 | 大勢 | 29.3 | 0.7 | 1.8 | 24.5 | 73 | 離脱中(右肘の張り) |
| 阪神 | 工藤 泰成 | 32.7 | 0.7 | 1.1 | 22.0 | 52 | 稼働中 |
| 巨人 | 田中 瑛斗 | 33.0 | 0.4 | 1.7 | 6.7 | 86 | 稼働中 |
| 巨人 | 中川 皓太 | 23.7 | 0.3 | 1.5 | 15.6 | 93 | 稼働中 |
| 阪神 | 岩崎 優 | 30.0 | 0.1 | 1.9 | 16.8 | 82 | 稼働中 |
| 阪神 | 石井 大智 | 0 | 0 | — | — | — | 復帰途上(アキレス腱手術明け) |
マルティネスのgmLI2.7は、両軍を通じて最も重要な場面で投げていることを示します。FIP-58、K-BB%24.8で内容も伴っている。
阪神はドリスと岩崎の日替わりで回してきました。ドリスはFIP-58とマルティネスと同水準ですが、gmLIは1.8。岩崎はgmLI1.9で最も重い場面を任されつつ、FIP-82とやや見劣りします。
ここに両軍とも「復帰待ちの1枚」がいます。巨人は大勢、阪神は石井大智。この2人が戻ると、それぞれのブルペンの役割が1段ずつ楽になります。
05阪神の故障者・復帰
| 選手 | 状態 | 低位 | 中央 | 高位 | 中央の残りWAR | モデル上の意味 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 近本 光司 | 左手首骨折→7/11復帰済み | 200PA | 230PA | 235PA | 1.342 | 髙寺・福島を左翼/控えへ回せる。「未来の復帰」ではなく後半戦の稼働回収 |
| 前川 右京 | 右肩甲骨骨折(7/17)。8月上旬候補 | 40PA | 90PA | 130PA | 0.225 | 6番・左翼の打撃選択肢。髙寺のPA減を差し引くため純増は見た目より小さい |
| 石井 大智 | 左アキレス腱断裂・手術(2月)。7/22ライブBP | 0IP | 9月中心10IP | 8月下旬20IP | 0.200 | 本人WARより、ドリス・工藤・岩崎・木下を適正な役割へ戻す効果が大きい |
| E.ルーカス | 腰部疲労骨折(5/10発表)。7/22二軍実戦で1回無失点・最速152km | 救援10IP | 先発20+救援5IP | 先発30IP | 0.233 | 先発6番手とロングの両面。谷間先発・低レバのマイナスIPを減らせる |
| 畠 世周 | 右手中指違和感(6月中旬)。7/22二軍実戦 | 5IP | 10IP | 15IP | 0.030 | 中継ぎの枚数追加。過密日程時の保険 |
| 湯浅 京己 | 右足首捻挫(6月)。7/17ブルペン約20球 | 5IP | 10IP | 15IP | 0.050 | 復調すれば中レバの赤字を縮小 |
阪神で最も大きいのは近本光司です。ただし近本は既に復帰しています。したがってこれは「これから戻る戦力」ではなく、後半戦に本来の出場機会を回収できるかという話になります。
石井大智とE.ルーカスは、本人のWARよりも周囲の役割が整う効果が重要です。石井が戻れば、ドリス・工藤・岩崎・木下がそれぞれ1段軽い役割に下がれる。ルーカスが戻れば、谷間先発と低レバ救援のマイナスイニングを減らせます。
06巨人の故障者・復帰
| 選手 | 状態 | 低位 | 中央 | 高位 | 中央の残りWAR | モデル上の意味 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 吉川 尚輝 | 両股関節手術後に復帰→7/21左太腿裏肉離れで再離脱。全治未定 | 20PA | 80PA | 130PA | 0.400 | 二塁復帰で浦田を三塁へ、ダルベックを一塁へ戻せる |
| 岸田 行倫 | 右膝負傷(7/20・骨に異常なし)。最短7/31復帰目標 | 50PA | 80PA | 110PA | 0.293 | 大城の捕手負担を減らし、捕手2枚の高水準へ戻す |
| 戸郷 翔征 | 左太腿裏肉離れ(7/7)。終盤戦復帰目標 | 0IP | 終盤1〜2先発10IP | 25IP | 0.139 | ローテが既に厚く、代替との差は限定的 |
| 大勢 | 右肘の張り(7/12)。キャッチボール再開。2〜3週報道 | 8月下旬5IP | 8月中旬15IP | 8月上旬25IP | 0.400 | マルティネスとの二段構えに戻り、中川・田中瑛を適正役割へ |
巨人の4人は、いずれも本来レギュラーまたは勝ちパターンの選手です。吉川尚輝はWAR1.1、岸田行倫は1.2、戸郷翔征は0.9、大勢は0.7を既に積んでいます。
ただし重要なのは、この4人が前半戦に稼いだWARは、すでに現在の22.0に含まれているという点です。復帰によって新たに足せるのは「残り試合での本人の貢献」と「代替選手からの配置改善」だけになります。
「巨人は故障者が戻れば大幅に上積みされる」という言い方をよく見ますが、これは二重計上です。4人の前半戦WARは現在値に入っています。
実際に計算すると、中央シナリオでの本人分の追加は合計0.795。配置改善まで含めても、低位シナリオとの差は約0.8です。「主力を欠いて首位。戻れば配置と役割が整う追加余地がある」という表現が正確です。
特に戸郷は、ローテが既に厚いため本人が戻っても代替投手との差は小さい(中央で0.139)という結果になっています。
07復帰の非対称性 ── 伸びしろは巨人だけではない
| 指標 | 阪神 | 巨人 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 本人復帰WARの単純合計 | 2.080 | 0.795 | 本人分だけなら阪神の方が大きい |
| 低位シナリオとの差(中央-低位) | +1.179 | +0.795 | 配置改善を含む上積み |
| 高位シナリオの追加(高位-中央) | +0.654 | +0.856 | 早期復帰がそろえば巨人が上 |
| 対象人数 | 6人 | 4人 | — |
| 特徴 | 阪神は配置改善の比重が大きい/巨人は主力級が戻る | ||
ここは動画でも触れましたが、記事では数字で押さえておきます。本人分の残りWARは阪神2.08に対して巨人0.80。むしろ阪神の方が大きいのです。
理由は単純で、阪神の対象にはすでに復帰して稼働している近本(中央1.342)が含まれているからです。巨人の4人は復帰時期が未定または段階的で、稼働量を保守的に置いています。
ただし見落としてはいけないのが、巨人は主力級4人を欠いた状態で50勝40敗の首位に並んでいるという事実です。これは層の厚さが実際に機能している証拠であり、戻ってくれば配置が正常化します。
| 球団 | 期間 | 一塁 | 二塁 | 三塁 | 左翼 | 中堅 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 巨人 | 吉川復帰前 | 増田陸・リチャード・ティマの競争 | 浦田 | ダルベック | 佐々木・松本・キャベッジ | 佐々木・キャベッジ |
| 巨人 | 吉川復帰後 | ダルベック | 吉川 | 浦田 | 同左 | 同左 |
| 阪神 | 前川復帰前 | 大山 | 中野 | 佐藤 | 髙寺中心 | 近本 |
| 阪神 | 前川復帰後 | 大山 | 中野 | 佐藤 | 髙寺・前川・福島の配分 | 近本 |
巨人にとって吉川の復帰は、単に二塁が埋まるだけではありません。浦田を三塁へ、ダルベックを一塁へ動かせるので、現在マイナスを出している一塁候補(増田陸-0.3、リチャード-0.2、ティマ-0.5)の出場を減らせます。1人の復帰が3ポジションを同時に改善する構造です。
08雨天延期9試合という変数
阪神には、巨人にはない事情があります。雨天中止が多く、未消化試合を抱えていることです。
| 項目 | 数 | 備考 |
|---|---|---|
| 中止判断の回数 | 12 | 同一カードの再中止を含む |
| 延期対象の異なる試合 | 11 | — |
| 前半戦中に消化済み | 2 | 6/2→6/16、6/7→6/8→6/17 |
| 7/25時点の未消化 | 9 | 後半戦へ持ち越し |
| 振替確定 | 1 | 5/21→9/14 |
| 振替未定 | 8 | 4/15(巨人・甲子園)、4/23、6/20、6/24、6/25、6/26、7/1、7/4 |
これはプラスとマイナスの両面があります。
プラス:近本が不在だった時期の試合を、復帰後に戦える。石井・ルーカス・前川の復帰が進めば、延期試合で戦力を回収できる。前半戦の休養日が増え、上位先発の疲労を一時的に抑えられた。
マイナス:9〜10月の連戦・移動が増え、ブルペンと捕手の負荷が上がる。重要な直接対決や優勝争いの試合が終盤へ集中する可能性がある。
試算では、残り試合のPA・イニングにこの9試合は既に含まれています。したがって日程補正として追加で足すのは「復帰タイミングの効果」と「終盤過密のコスト」だけです。
阪神の日程補正WARは低位-0.3/中央-0.1/高位0。巨人は全シナリオで0です。つまり中央では、回収効果より過密のコストがわずかに上回るという置き方をしています。
09予測モデルの前提 ── 計算式と係数を開示する
ここからが記事の本題です。動画では結論だけをお伝えしましたが、その数字がどう出ているのかを全部開示します。
| 定数 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| 代替レベル勝率 | 0.294 | WAR=0のチームが残り試合で勝つ基準(143試合で約42勝相当) |
| WARモデルの重み | 0.55 | 個人の積み上げから算出する将来勝率 |
| 得失点モデルの重み | 0.30 | 前半戦のチーム内容を残す |
| 実勝率の重み | 0.15 | 接戦の勝ち切りと順位の現実を残す |
| 残り試合の引分率 | 0.02 | 両軍の今季実績をならした暫定値 |
| 項目 | 式 | 換算基準 |
|---|---|---|
| 野手の残りWAR | 残りPA × 予測WAR ÷ 600 | 600打席換算 |
| 先発の残りWAR | 残りIP × 予測WAR ÷ 180 | 180イニング換算 |
| 救援の残りWAR | 残りIP × 予測WAR ÷ 60 | 60イニング換算 |
| WAR将来勝率 | 0.294 + 残りWAR ÷ 残り試合 | 30%〜72%で上限下限を設定 |
| 最終の将来勝率 | WAR将来勝率×55% + ピタゴラス勝率×30% + 実勝率×15% | 一つの指標へ依存させない |
| 球団 | 低位PA | 中央PA | 高位PA | 残り投手IP |
|---|---|---|---|---|
| 阪神 | 1995 | 2030 | 2075 | 472 |
| 巨人 | 1955 | 1995 | 2035 | 463 |
ポイントは、現在のWAR率をそのまま使っていないことです。超高水準の選手は平均方向へ戻し(回帰させ)、故障者は出場機会を削り、小標本の新戦力は保守的に評価しています。
たとえば佐藤輝明は現在9.79 WAR/600ですが、中央シナリオでは6.5 WAR/600まで下げています。森下翔太も8.77→5.5。逆にマイナスの選手(小幡・木浪・熊谷)は、ゼロ方向へ戻しています。
10モデルの限界 ── 何ができて何ができないか
1. 係数は比較用の仮置きです。WAR 55%・得失点 30%・実勝率 15% という配分は、理論的な最適値として導かれたものではありません。
2. バックテストを行っていません。過去年度や他球団を使って、この係数が実際にどれくらい当たるのかを検証していません。したがって「このモデルの精度は◯%」と言うことはできません。
3. 優勝確率ではありません。算出しているのは勝敗のレンジであって、「阪神が優勝する確率は◯%」という数字ではありません。
4. 二強比較に限定しています。3位以下のチームが急浮上するケースは織り込んでいません。セ・リーグ全体のシミュレーションではありません。
5. 高位シナリオは上限に張り付いています。WAR将来勝率には30%〜72%の上限下限を設けており、阪神・巨人とも高位シナリオでは0.72の上限に達しています。つまりレンジの上端は「実力の上限」ではなく「モデルの天井」でもあります。
6. 直接対決の個別補正はしていません。残り8試合は残り試合数に含めていますが、「阪神が10勝7敗だから有利」といった補正は加えていません(理由は§14)。
それでもこの試算に意味があるとすれば、両軍の上振れ・下振れ要因を同じ物差しで並べられること、そして差がどれくらい小さいのかを可視化できることです。以下の数字は、その前提で読んでください。
11残りWARの選手別配分
中央シナリオで、誰にどれだけの出場機会とWAR率を置いているかを開示します。
| 選手 | 現在PA | 現在WAR/600 | 中央PA | 中央WAR/600 | 中央残りWAR | 回帰の考え方 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 佐藤 輝明 | 386 | 9.79 | 225 | 6.5 | 2.438 | 前半の超高速から減速したため回帰 |
| 森下 翔太 | 397 | 8.77 | 225 | 5.5 | 2.063 | 大きく回帰。ただし直近も高水準 |
| 近本 光司 | 172 | 4.53 | 230 | 3.5 | 1.342 | 手首の影響で回帰。高位は過去水準へ |
| 中野 拓夢 | 377 | 3.18 | 225 | 2.6 | 0.975 | 直近の上昇を中央へ一部反映 |
| 大山 悠輔 | 369 | 2.76 | 220 | 2.6 | 0.953 | 6/16以降に復調 |
| 髙寺 望夢 | 255 | 3.29 | 165 | 2.4 | 0.660 | 近本復帰後は左翼。控え扱いしない |
| 坂本 誠志郎 | 173 | 3.47 | 105 | 2.2 | 0.385 | 打撃低調で回帰、守備価値は残す |
| 前川 右京 | 117 | 1.03 | 90 | 1.5 | 0.225 | 8月中旬復帰を想定 |
| 福島 圭音 | 137 | 1.75 | 90 | 1.2 | 0.180 | — |
| 元山 飛優 | 29 | 2.07 | 70 | 0.5 | 0.058 | 25打席を強く外挿しない |
| D.ガルシア | 0 | 0 | 60 | 0.5 | 0.050 | 一軍実績なし。救世主扱いしない |
| 木浪/小幡/熊谷 | — | マイナス | 40/45/35 | -0.2/-0.3/-0.5 | -0.065 | マイナスをゼロ方向へ回帰 |
| 選手 | 現在PA | 現在WAR/600 | 中央PA | 中央WAR/600 | 中央残りWAR | 回帰の考え方 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 浦田 俊輔 | 307 | 5.67 | 210 | 3.5 | 1.225 | 守備・走塁の価値を残す |
| B.ダルベック | 362 | 3.65 | 215 | 3.4 | 1.218 | 長打を維持しつつ三振リスク |
| 大城 卓三 | 208 | 6.92 | 175 | 4.0 | 1.167 | 現状6.9を回帰、打撃の強さは残す |
| 泉口 友汰 | 304 | 4.93 | 215 | 3.2 | 1.147 | 守備値の反動を考慮 |
| 佐々木 俊輔 | 216 | 1.94 | 175 | 2.6 | 0.758 | 直近+0.8を一部反映 |
| 松本 剛 | 256 | 1.88 | 160 | 1.6 | 0.427 | — |
| 吉川 尚輝 | 144 | 4.58 | 80 | 3.0 | 0.400 | 8月下旬復帰・故障明けで回帰 |
| T.キャベッジ | 325 | 1.66 | 140 | 1.5 | 0.350 | — |
| 岸田 行倫 | 183 | 3.93 | 80 | 2.2 | 0.293 | 右膝から段階復帰 |
| 笹原 操希 | 64 | 3.75 | 85 | 1.8 | 0.255 | 小標本を回帰 |
| 増田陸/リチャード/ティマ | — | 大きくマイナス | 90/50/35 | -0.5/-1.0/-1.2 | -0.228 | 一塁の消去法。PAを減らせれば上振れ |
| 球団 | 投手 | 低位IP | 中央IP | 高位IP | WAR率(低/中/高) | 前提 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 阪神 | 髙橋 遥人 | 45 | 55 | 60 | 2.8/4.0/4.8 per180 | 初の開幕ローテで111.3回。7/23登録抹消。能力ではなく負荷の問題 |
| 阪神 | 才木 浩人 | 60 | 65 | 65 | 3.2/4.5/5.2 | ローテ上位を継続 |
| 阪神 | 村上 頌樹 | 45 | 50 | 55 | 1.3/2.6/3.2 | 7/26完封を反映し上方修正。1試合で完全復活とはしない |
| 阪神 | 大竹 耕太郎 | 35 | 40 | 45 | 0.5/1.3/2.0 | 左の4〜6番手 |
| 阪神 | E.ルーカス(先発) | 0 | 20 | 30 | 0/1.5/2.5 | 低位は救援専任 |
| 阪神 | ドリス | 18 | 22 | 24 | 0.8/1.4/1.8 per60 | 年齢・夏場で回帰 |
| 阪神 | 工藤 泰成 | 18 | 22 | 24 | 0.8/1.3/1.8 | 初の高負荷シーズン |
| 阪神 | 石井 大智 | 0 | 10 | 20 | 0/1.2/2.0 | 中央は9月中心 |
| 巨人 | 山﨑 伊織 | 30 | 55 | 65 | 1.5/3.8/5.0 | 低位は肩の再調整あり、中央はローテ完走、高位はエース水準 |
| 巨人 | 井上 温大 | 55 | 60 | 60 | 3.0/4.0/4.8 | ローテの中心 |
| 巨人 | ウィットリー | 50 | 55 | 60 | 2.0/3.0/4.0 | ローテ固定 |
| 巨人 | 竹丸 和幸 | 55 | 55 | 55 | 1.0/1.8/2.7 | 安定供給 |
| 巨人 | 小笠原 慎之介 | 35 | 45 | 50 | 1.5/3.2/4.0 | 上方修正。ただしまだ2登板 |
| 巨人 | 戸郷 翔征 | 0 | 10 | 25 | 0/2.5/3.5 | 中央でフル回転は置かない |
| 巨人 | マルティネス | 22 | 24 | 25 | 1.2/1.8/2.2 per60 | 抑え固定 |
| 巨人 | 大勢 | 5 | 15 | 25 | 0.8/1.6/2.0 | 右肘を最優先 |
| 球団 | 低位先発 | 中央先発 | 高位先発 | 低位救援 | 中央救援 | 高位救援 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 阪神 | 1.961 | 4.294 | 5.983 | -0.330 | 1.883 | 3.527 |
| 巨人 | 2.458 | 5.383 | 7.756 | 0.223 | 1.537 | 2.460 |
中央シナリオでは、先発で巨人が1.09上回り、救援で阪神が0.35上回る。差し引きで投手の残りWARは巨人が0.74多いという結果になります。
12シナリオ集計 ── 低位・中央・高位
| 球団 | シナリオ | 現在WAR | 野手残 | 投手残 | 日程補正 | 残りWAR計 | 最終WAR | WAR将来勝率 | ブレンド勝率 | 最終勝 | 最終敗 | 最終分 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 阪神 | 低位 | 24.5 | 4.773 | 1.631 | -0.3 | 6.104 | 30.604 | .4114 | .4823 | 74.580 | 66.380 | 2.04 |
| 阪神 | 中央 | 24.5 | 9.328 | 6.178 | -0.1 | 15.406 | 39.906 | .5903 | .5807 | 79.594 | 61.366 | 2.04 |
| 阪神 | 高位 | 24.5 | 13.452 | 9.510 | 0 | 22.962 | 47.462 | .7200 | .6521 | 83.230 | 57.730 | 2.04 |
| 巨人 | 低位 | 22.0 | 2.386 | 2.682 | 0 | 5.068 | 27.068 | .3934 | .4520 | 72.592 | 67.388 | 3.02 |
| 巨人 | 中央 | 22.0 | 7.108 | 6.920 | 0 | 14.028 | 36.028 | .5690 | .5486 | 77.421 | 62.559 | 3.02 |
| 巨人 | 高位 | 22.0 | 11.689 | 10.216 | 0 | 21.905 | 43.905 | .7200 | .6317 | 81.571 | 58.409 | 3.02 |
各シナリオの中身は次の通りです。
- 低位:主力の稼働が伸びず、復帰も遅れる。阪神は髙橋45IP・石井の復帰なし・ルーカス救援専任。巨人は山﨑30IP(肩の再調整)・戸郷登板なし・大勢8月下旬5IP・吉川20打席。
- 中央:阪神は髙橋55IP・村上50IP(完封を反映して上方修正)・石井9月中心10IP・ルーカス先発20+救援5IP。巨人は山﨑ローテ完走55IP・小笠原45IP(上方修正)・戸郷終盤10IP・大勢8月中旬15IP・吉川80打席。
- 高位:阪神は佐藤が前半型へ再加速(8.0 WAR/600)・森下7.0維持・前川130打席・石井20IP。巨人は山﨑エース水準65IP・戸郷25IP・大勢8月上旬25IP・吉川130打席・岸田110打席。
13最終勝敗予測と優勝ライン
| 球団 | 中央 最終勝 | 最終敗 | 最終分 | レンジ(低位〜高位) |
|---|---|---|---|---|
| 阪神 | 79.594 | 61.366 | 2.04 | 74.580 〜 83.230 |
| 巨人 | 77.421 | 62.559 | 3.02 | 72.592 〜 81.571 |
| 差 | 約2.2勝 | — | — | レンジは大部分が重なる |
中央シナリオでは阪神79.6勝、巨人77.4勝。丸めるなら「阪神79勝前後、巨人77〜78勝前後」です。
ただしレンジは阪神74.6〜83.2、巨人72.6〜81.6で大きく重なっています。復帰時期と主力の状態次第で、いくらでも入れ替わる幅です。
| 区分 | 勝数 | 意味 |
|---|---|---|
| 優勝争いに残る目安 | 77 | 終盤まで可能性を残す |
| 今回の中央目安 | 79 | 優勝争いの中心になる勝数 |
| 強い目安 | 81 | 多少の取りこぼしがあっても優位 |
| かなり安全側 | 83 | 今回の想定ではかなり安全 |
| 球団 | 目標勝数 | 現在勝 | 必要勝 | 残り試合 | 必要勝率 | 許容できる残り敗 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 阪神 | 77 | 50 | 27 | 52 | .5192 | 25 |
| 阪神 | 79 | 50 | 29 | 52 | .5577 | 23 |
| 阪神 | 81 | 50 | 31 | 52 | .5962 | 21 |
| 巨人 | 77 | 50 | 27 | 51 | .5294 | 24 |
| 巨人 | 79 | 50 | 29 | 51 | .5686 | 22 |
| 巨人 | 81 | 50 | 31 | 51 | .6078 | 20 |
ここに1つ、見落とされがちな要素があります。残り試合が1つ少ない巨人の方が、同じ勝数に到達するのに高い勝率を必要とします。79勝ラインなら阪神.5577に対して巨人.5686。
§08で見た阪神の未消化9試合は「終盤の過密」というマイナスと同時に、同じ勝数への到達がわずかに楽になるという側面も持っています。
79勝という数字は今回の阪神・巨人の二強比較から出した目安であって、セ・リーグ公式の確定ラインではありません。3位以下のチームが伸びれば、必要な勝数は変わります。
また「阪神が2.2勝上」という結果も、モデルの係数を変えれば動きます。差の大きさより、レンジが重なっているという事実の方が重要です。
14直接対決 ── 残り8試合が最大の争点
| 区分 | 試合 | 阪神勝 | 巨人勝 | 阪神得点 | 巨人得点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全体 | 17 | 10 | 7 | 71 | 50 |
| 東京ドーム | 9 | 7 | 2 | 48 | 23 |
| 甲子園 | 8 | 3 | 5 | 23 | 27 |
興味深いのは本拠地と敵地で結果が逆転していることです。阪神は東京ドームで7勝2敗(得失点+25)と圧倒しながら、本拠地の甲子園では3勝5敗(得失点-4)と負け越しています。
| 日付 | 球場 | 阪神 | 巨人 | 勝者 | 模様 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3/27 | 東京D | 1 | 3 | 巨人 | 開幕戦は巨人 |
| 3/28 | 東京D | 2 | 0 | 阪神 | 阪神が完封 |
| 3/29 | 東京D | 12 | 6 | 阪神 | 阪神打線が大量得点 |
| 4/14 | 甲子園 | 3 | 4 | 巨人 | 1点差 |
| 4/16 | 甲子園 | 3 | 4 | 巨人 | 1点差 |
| 5/1 | 甲子園 | 3 | 5 | 巨人 | 巨人勝利 |
| 5/2 | 甲子園 | 7 | 5 | 阪神 | 阪神が打ち勝つ |
| 5/3 | 甲子園 | 3 | 0 | 阪神 | 阪神完封 |
| 5/22 | 東京D | 7 | 4 | 阪神 | 阪神勝利 |
| 5/23 | 東京D | 3 | 0 | 阪神 | 村上が完封 |
| 5/24 | 東京D | 6 | 3 | 阪神 | 東京D3連勝 |
| 7/7 | 東京D | 3 | 4 | 巨人 | 戸郷が負傷した試合 |
| 7/8 | 東京D | 4 | 1 | 阪神 | 阪神勝利 |
| 7/9 | 東京D | 10 | 2 | 阪神 | 阪神大勝 |
| 7/24 | 甲子園 | 2 | 4 | 巨人 | 巨人逆転 |
| 7/25 | 甲子園 | 1 | 5 | 巨人 | 巨人連勝 |
| 7/26 | 甲子園 | 1 | 0 | 阪神 | 村上完封・小笠原7回1失点 |
| 日付 | 開始 | 球場 | 主催 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 8/11 | 14:00 | 東京ドーム | 巨人 | 3連戦1戦目 |
| 8/12 | 18:00 | 東京ドーム | 巨人 | 3連戦2戦目 |
| 8/13 | 18:00 | 東京ドーム | 巨人 | 3連戦3戦目 |
| 8/28 | 18:00 | 甲子園 | 阪神 | 3連戦1戦目 |
| 8/29 | 18:00 | 甲子園 | 阪神 | 3連戦2戦目 |
| 8/30 | 18:00 | 甲子園 | 阪神 | 3連戦3戦目 |
| 9/12 | 14:00 | 東京ドーム | 巨人 | 終盤の1試合 |
| 未定 | 未定 | 甲子園 | 阪神 | 4/15中止分・振替日程は未発表 |
内訳は東京ドーム4試合+甲子園4試合(甲子園のうち1試合は4/15中止分で日程未定)。
阪神が10勝7敗と勝ち越している以上、「阪神有利」と補正したくなります。しかし本記事の試算では直接対決の個別補正は0としています。理由は2つです。
1つは17試合という標本の小ささ。もう1つは、東京ドームと甲子園で結果が真逆になっており、単純な相性として扱えないことです。
ただし重要度は別問題です。直接対決は1試合でゲーム差が1動きます。自分が勝つだけでなく、相手に負けを付けられるからです。残り8試合は、単純な残り試合数以上の意味を持ちます。個別カードの勝敗予想は行いません。
15対戦別投手成績 ── 2026年と通算を分ける
直接対決に誰をぶつけられるか。ここは今季の成績と通算成績を必ず分けて見る必要があります。
| 投手 | 試 | 勝 | 敗 | 投球回 | 防御率 | WHIP | 被打率 | 奪三振 | 2026評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 才木 浩人 | 5 | 3 | 0 | 35.1 | 1.53 | 0.93 | .202 | 46 | 今年の巨人キラー。5先発で無敗 |
| 村上 頌樹 | 4 | 2 | 2 | 29.0 | 2.48 | 0.86 | .190 | 26 | 勝敗は五分でも内容は強い |
| 髙橋 遥人 | 3 | 2 | 1 | 22.1 | 3.22 | 0.99 | .214 | 17 | 好相性寄りだが3試合で防御率3点台 |
| 大竹 耕太郎 | 1 | 1 | 0 | 7.0 | 1.29 | 0.71 | .160 | 5 | 7回1失点。候補に置ける |
| E.ルーカス | 1 | 0 | 1 | 5.0 | 7.20 | 1.80 | .368 | 3 | 苦戦。復帰後は穴埋め優先 |
| 伊藤 将司 | 1 | 0 | 0 | 2.1 | 11.57 | 3.00 | .500 | 1 | 短い登板で苦戦。復調確認が先 |
| 投手 | 試 | 勝 | 敗 | 投球回 | 防御率 | WHIP | 被打率 | 奪三振 | 2026評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 山﨑 伊織 | 0 | 0 | 0 | 0.0 | — | — | — | — | 今季は阪神戦未登板 |
| 井上 温大 | 2 | 0 | 2 | 10.0 | 8.10 | 1.70 | .349 | 10 | 明確に苦戦。相性面は不安 |
| ウィットリー | 2 | 0 | 1 | 11.1 | 2.38 | 1.32 | .244 | 14 | 勝ちはないが内容良好 |
| 竹丸 和幸 | 3 | 2 | 1 | 18.0 | 3.00 | 1.06 | .238 | 15 | 今季2勝。安定した供給 |
| 小笠原 慎之介 | 1 | 0 | 1 | 7.0 | 1.29 | 1.29 | .296 | 8 | 7/26は好投。後半戦キーマン |
| 戸郷 翔征 | 1 | 0 | 0 | 5.0 | 0.00 | 0.40 | .000 | 3 | 5回無安打無失点。負傷前の復調 |
| 田中 将大 | 2 | 2 | 0 | 11.1 | 4.76 | 1.68 | .326 | 12 | 2勝も内容は盤石ではない |
| 西舘 勇陽 | 1 | 0 | 1 | 5.1 | 6.75 | 1.13 | .211 | 6 | 4失点。本命には置きにくい |
| B.マタ | 0 | 0 | 0 | 0.0 | — | — | — | — | 未登板。未知数 |
上の表はすべて2026年だけの数字です。通算や過去の実績は次の通りで、混ぜて語らないよう注意が必要です。
- 才木浩人:2026年開幕前の時点で対巨人通算13勝4敗・防御率2.03。今季も3勝0敗で、通算・今季とも好相性。
- 村上頌樹:2025年8月時点で対巨人通算6試合3勝0敗・防御率0.66(当時のスナップショット)。今季は2勝2敗・防御率2.48。
- 小笠原慎之介:7/26登板前の時点で対阪神通算28試合8勝14敗・防御率2.95。防御率は良いのに負けが先行しており、好投しても勝ちに恵まれにくい傾向があります。
- 山﨑伊織:過去の対阪神通算防御率は1.88と報道されています。ただし今季は未対戦で、右肩からの復帰直後です。
- 戸郷翔征:2024年5月24日、甲子園の阪神戦でノーヒットノーランを達成しています(通算数値ではなく代表的な実績)。
- ウィットリー・竹丸・マタ:NPBでの対阪神成績は事実上2026年分のみです(マタは未登板)。
| 順 | 阪神 | 巨人 |
|---|---|---|
| 1 | 髙橋 遥人 | 山﨑 伊織 |
| 2 | 才木 浩人 | 井上 温大 |
| 3 | 村上 頌樹 | F.ウィットリー |
| 4 | 大竹 耕太郎 | 竹丸 和幸 |
| 5 | E.ルーカス/伊藤 将司 | 小笠原 慎之介 |
| 6・保険 | 下村 海翔・伊原 陵人 | 田中 将大・戸郷(終盤) |
阪神は才木・髙橋・村上の3枚を直接対決へ寄せられるかが焦点です。才木は対巨人5先発で3勝0敗・防御率1.53と明確な好相性。村上も7/26の完封で今季2度目の巨人戦完封を記録しました。
ただし髙橋遥人は7月23日に登録抹消されており、疲労管理が前提です。3枚を狙った通りにぶつけられるかは、ローテの巡りと体調次第になります。
巨人は候補の数では上回ります。しかし全員が阪神に強いわけではありません。井上温大は防御率8.10、西舘勇陽は6.75。一方で小笠原1.29、ウィットリー2.38、戸郷0.00と好内容の投手もいる。「層の厚さ」と「相性」は分けて評価する必要があります。
16反対意見・別の見方
「係数を変えれば結論も変わるのでは」:その通りです。WAR 55%・得失点 30%・実勝率 15% という配分に理論的な裏付けはありません。実勝率の比重を上げれば、接戦を勝ち切ってきた巨人の評価が上がります。だからこそ「約2勝差」という数字より「レンジが重なる」という事実を重視すべきだと考えます。
「阪神の得失点差+52は運が悪いだけでは」:ピタゴラス勝率で見れば阪神.5758・巨人.5078なので、その解釈は成り立ちます。ただし逆に「巨人は接戦を勝ち切る力がある」とも読めます。どちらが正しいかを判定する材料は現時点でありません。
「直接対決10勝7敗を無視するのはおかしい」:17試合という標本と、東京ドーム7勝2敗/甲子園3勝5敗という真逆の結果を踏まえると、単純な相性補正は危険だと判断しました。ただし重要度が高いことは否定していません。
「巨人は主力4人が戻れば一気に伸びる」:前半戦に稼いだWARは既に現在値へ含まれているため、単純な上乗せにはなりません。中央シナリオでの純増は約0.8です。ただし配置が正常化する効果はWARで完全には測れないため、実際にはもう少し大きい可能性はあります。
「髙橋遥人の55イニングは少なすぎる」:能力から言えばもっと投げられます。ただし初の開幕ローテで既に111.3イニングを消化し、7月23日に登録抹消されています。能力ではなく負荷の問題として抑えた配分です。高位シナリオでは60イニングを置いています。
17まとめ ── 最後は直接対決と健康状態
投手陣と後半戦予測を見てきました。
投手WARの総量は巨人8.5、阪神6.8で巨人が上。ただし中身は違います。阪神は髙橋遥人(FIP-63)と才木浩人(SIERA-57)の上位2枚が突出し、巨人は井上・ウィットリー・竹丸・小笠原・山﨑と崩れにくい枚数を持っています。ブルペンは阪神がドリス・工藤で上位の形を作りつつ全体ではまだ赤字、巨人はマルティネス(gmLI2.7)を軸に人数がいるものの基礎指標に不安のある投手も混ざります。
故障者復帰は「巨人だけの伸びしろ」ではありません。本人分の残りWARは阪神2.08に対して巨人0.80。ただし巨人は主力級4人を欠いた状態で首位に並んでおり、戻れば配置が正常化します。特に吉川尚輝の復帰は、浦田を三塁へ・ダルベックを一塁へと動かし、3ポジションを同時に改善します。
残りWARから試算した最終勝数は中央で阪神79.6勝、巨人77.4勝。差は約2.2勝ですが、レンジ(阪神74.6〜83.2/巨人72.6〜81.6)は大きく重なります。係数は比較用の仮置きで、バックテストも行っていません。確定予言ではありません。
そして最後に残るのが残り8試合の直接対決です。1試合でゲーム差が1動く。阪神は才木・髙橋・村上の3枚をぶつけられるか、巨人は候補の中から誰を選ぶか。数字の上でも、ストーリーの上でも、簡単には決着しない後半戦になります。
18動画・前編へ
野手・チーム全体の比較から読みたい方は、前編もあわせてどうぞ。
- 🎥 第2部(この記事の動画版): 阪神vs巨人 第2部:投手比較・後半戦予測(YouTube)
- 🎥 第1部: 阪神vs巨人 第1部:チーム全体・野手比較(YouTube)
- 📄 前編記事: 阪神と巨人はどこが違うのか|同率首位で前半戦終了、チームWARとポジション別で見る野手比較
- 📄 前半戦最終戦: 【阪神1-0巨人】村上頌樹が117球完封!佐藤輝明の一発を守り抜き同率首位で前半戦終了